不動産(仲介・賃貸)
業界別M&A動向

不動産(仲介・賃貸)業界のM&A動向

更新日

監修者プロフィール

  • 企業情報部 部長 竹内 謙太

    企業情報部部長竹内 謙太

    会計系コンサルティング会社を経て、独立系M&AブティックでM&Aアドバイザリー業務に従事。
    2018年当社参画以降は、不動産開発・売買・仲介・賃貸・管理、ホテル事業等、不動産に関連する企業のM&A成約実績を有する。

業界の定義

土地や家屋、ビルなどの不動産について、売買、交換、賃貸、管理および、売買・交換・賃貸の代理、もしくは仲介を行う業種を不動産業という。そのうち、「開発」「分譲」を行うものを”不動産デベロッパー”と呼ぶ。
不動産デベロッパーは、大規模な宅地造成やリゾート開発、都市などの再開発事業、オフィスビルの建設やマンション分譲まで幅広く手がける企業が多い。
最近はタワーマンションの開発が盛んである。通常、不動産は、不動産仲介会社を通じて売買や賃貸借が行われる。賃貸借の管理は、管理会社が一手に引き受けるのが一般的とされる。

業界の特色

奈良時代以前、不動産は国家の所有物だった。奈良時代に入り、農地増加を図るために荘園を開始したことが不動産(土地)の個人所有の始まりとされる。 その後、鎌倉時代から戦国時代を通して、土地の所有者の再編が多く行われる。江戸時代には貸家経営が始まり、当時の貸家や貸地の所有者は商人や大地主であった。本格的に現代につながる法整備がされたのは、明治時代である。

明治時代にフランスの民法を翻訳した際に「動産」と「不動産」があった。明治時代は不動産の開発を三菱などの財閥が積極的に行い、不動産業界が徐々に盛んになっていった。特に鉄道会社と組んで、都心部と郊外を結ぶ鉄道を敷き、その郊外の沿線駅周辺に商業施設と住宅地をつくることが、戦前から戦後を通して多く取られる不動産開発のスタンダードな方法となった。
戦後、都心部を中心に道路と不動産の開発が進んだため、戦前のような道の狭い都市は減少した。近年では沿線での開発が進んだこともあり、都心部でタワーマンションの開発が多くなっている。また、リニア新幹線開通の決定により、新駅周辺の不動産開発も進められている。

不動産業は、扱うものが高額であるがゆえ、景気に大きく左右される業界といえる。景気が良いときは、戸建てやマンションの売れ行きが好調になり、販売価格や家賃も上向きに変動する。首都圏の一等地などのオフィスビルや賃貸物件も人気が上がり、それらの賃料も上昇傾向となる。
今後は、東京オリンピック後に予想される不動産需要の変化や、人口減少による新築一戸建てへの需要減少などが見込まれ、不動産各社は対策を講じる必要がある。


業界の市場規模

不動産業界の業界規模は2011年から2018年までは継続的な成長を続けていたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、2019年の新設住宅の着工戸数は88.3万戸、前年比-7.2%と大きく減少した。

  • 2012年:政権交代 一時民主党が第一政党になっていた自民党によるあらたな施策が影響していると考えられている。民主党から自民党へと政権交代した期待感から、不動産価格の上昇が見られた。この流れは翌年の2013年にも続いた。

  • 2013年:消費増税 消費税増税前の駆け込み需要などがあったことから、個人向け物件も売れ行きも好調となった。「金融政策」「財政政策」「民間投資の喚起」の3つを軸とするアベノミクスや、デフレ脱却を目指した金融緩和策「黒田バズーカ」の影響もあり、不動産価格は大きく上昇した。

  • 2015年-2018年: 成長傾向にあった2018年の業界規模は13兆9,200億円、前年比+6.8%と好調だった。2018年までの業界成長の背景には、次のような様々な要因があると推測される。

  • 東京都心部のオフィスビル賃貸の好調が起因し、業績はさらに拡大。特にオリンピックを前にしていたこともあり、各社不動産大手企業は、東京都心部のオフィスビル需要の増加に答えるように丸の内、港区、八重洲、渋谷、虎ノ門などで不動産開発が盛んに進んだ。

  • 2019年以降: 市場の変化においては、東京オリンピック後の需要の変化よりも、新型コロナウイルス感染症による影響が大きい。



オリンピック開催による市場の変化

今後は、新型コロナウイルス感染症の影響や生活様式の変化による不動産需要の変化や、人口減少による新築一戸建てへの需要減少などが見込まれ、不動産各社は対策を講じる必要に迫られると考えられる。

日本では「オリンピック後には不動産価格が下落する」という、歴史的事実に基づく見方があった。1964年の東京オリンピック後に日本は不況に陥ったが、これはオリンピックの影響でもたらされた好景気による証券ブームに対し、金融引き締めが行われたためである。事実、そのような事情のなかった2020年の東京オリンピック後は、不動産価格が下落することはなかった。

ただ、不動産業界における新型コロナウイルスの影響は大きい。マンション市場はコロナ禍にあっても堅実に伸びており、倉庫関係はEC需要の増加により、むしろコロナ禍が追い風となっている。一方、不要不急の外出自粛やEC需要の増加を受け、ホテルや商業用ビルは悪影響を受けた。オフィス用ビルもリモートワークの普及により打撃を受けている。

戸建ての一般住宅に関しては、ウッドショックの影響が大きい。 (ウッドショックとは、主に欧米で発生した住宅の新築・改築ニーズの増加により、建材が輸入しづらくなること)これにより木造を主な建材とする日本の戸建て住宅市場では、建材の不足や納期ズレが起こり、工期が延びる事態が急増した。



市場環境の変化

不動産流通推進センターの調査によると、不動産業界の市場規模としては、この10年で右肩上がりの傾向にある。平成19年は不動産業界全体の売上は約37.1兆円だが、平成30年には約46.5兆円となっている。また、不動産の法人数は、平成19年の293,330社から平成30年には337,934社と増加が見られる。特に資本金が1,000万円以下の規模の企業では、この10年での売上高の上昇は著しい。

不動産事業者における、主な取引物件の割合としては、オフィス・住宅・商業・物流が取引額の80%を占める状況が続いている。最近の市場変化としては、急激なEC需要の増加により倉庫関連のニーズ拡大が、リモートワークの定着や生活様式の変化によるオフィス関連のニーズ減少が挙げられる。 一般消費者の動向としては、ここ数年は持ち家よりも賃貸物件への転居が増えている傾向がある。日本全体で見ると空室率の向上が継続しており、今後も賃料は下がる傾向が続くと予想される。

課題と展望

他の業界と並んで不動産業界においても人材不足が深刻化している。その対策として、物件検索のサポートをチャットボットが対応するなど、AIによる業務改善の動きが加速している。不動産売買や賃貸借における、価格の算定の面でも同様にAIが注目を集めている。価格算定には、非常に多くの情報が必要であり、不動産価値だけでなく、周辺情報、公示地価などを基に価格決定がされる。これまでは価格算定を担当者に任せることが多く、人依存の体制だった。過去の販売価格や販売数、賃貸不動産における家賃など、多くの不動産情報を含むビッグデータを使い、AIによって価格を算出することで、人材不足解消に取り組む動きも見られている。

不動産業界のM&A動向

不動産業界のM&Aは、2018年に208件を記録しており、2000年以降では過去最高の件数となった。その理由として、不動産業界も他の業界と同じように、後継者問題の深刻化していることにある。後継者問題の解決にM&Aを実施検討する企業は、全体として増加傾向にある。また、2015年までは大企業による異業種間のM&A事例が多かったが、2018年以降は、業界全体が縮小しているためか、同業種間のM&Aが増加している傾向にある。

―主な事例―

  • -2022年2月、総合建設会社の東洋建設株式会社は、建築事業とストックビジネスの強化を目的に、連結子会社である東建サービス株式会社、とうけん不動産株式会社、東建テクノ株式会社との合併契約を発表した。これにより、存続会社である東建サービスの商号をテクオス株式会社に変更し、同社をグループにおけるストックビジネスの中核会社とした。

  • -2020年5月、Webマーケティングを特色とした戸建て住宅の企画・施工・販売を行う株式会社LibWorkは、関東圏への営業エリア拡大を目的に、神奈川県を中心に建売販売事業を主力事業とするタクエーホーム株式会社の全株式を取得、子会社化した。このM&Aにより神奈川エリアでの不動産仕入れ~販売の回転率を高めること、規模のメリットを活かしたグループ全体の原価コスト削減が可能となった。

  • -2020年5月、Webマーケティングを特色とした戸建て住宅の企画・施工・販売を行う株式会社LibWorkは、関東圏への営業エリア拡大を目的に、神奈川県を中心に建売販売事業を主力事業とするタクエーホーム株式会社の全株式を取得、子会社化した。このM&Aにより神奈川エリアでの不動産仕入れ~販売の回転率を高めること、規模のメリットを活かしたグループ全体の原価コスト削減が可能となった。

  • -2017年9月、建設大手の大林組は、将来的な市場縮小や公共投資への減少や、人手不足対策のため、もともと連結子会社だった大林道路株式会社を完全子会社とした。グループ全体の事業効率を上げ、グループ各社の収益力の向上を図ることが狙いと見られる。

  • -2015年11月、大手住宅メーカー・株式会社積水ハウスでは、鳳ホールディングス株式会社を持分法適用関連会社として、親会社となる鴻池組との業務提携を行うことを発表。施工費用などコスト削減による、利益率を向上が狙いと見られる。

  • -2015年4月、株式会社長谷工コーポレーションは、株式会社総合地所を子会社化した。不動産分譲事業、不動産ソリューション事業、マンション管理事業を展開する会社だ。長谷工グループの施工実績と総合地所のデベロッパーとして顧客に関わってきた経験ノウハウが融合させることが狙いと見られる。

弊社のM&Aご成約実績

  • 成約年数
    2022年9月
    対象会社(譲渡会社)
    宅地開発
    地域:関東
    譲受会社
    土木工事
    地域:関東
    取引スキーム/問題点・概要
    55歳以上,株式譲渡
    譲渡企業は、北関東で宅地開発業を展開。地元密着で知名度が高く、業績は順調であったが、株式の承継先に不安を感じていた。譲受企業は...
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  • 成約年数
    2022年9月
    対象会社(譲渡会社)
    木材加工(製材・プレカット)
    地域:中部
    譲受会社
    不動産・太陽光発電・介護・木材卸
    地域:近畿
    取引スキーム/問題点・概要
    55歳以上,株式譲渡
    譲渡企業は北越地域の木材加工業。譲受企業は木材輸入商社。社内にご子息がいたが、業界の先行きを懸念していた。また、同県の土地柄、...
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新着案件情報
  • 詳細業種 伝統商品商社
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    概算売上 5億円~10億円
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  • 詳細業種 旅館
    所在地 中部・北陸
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  • 詳細業種 ソフトウェア受託開発業
    所在地 関西
    概算売上 1億円~2.5億円
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  • 詳細業種 土木工事業
    所在地 東北
    概算売上 10億円~30億円
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  • 詳細業種 スマホ・タブレット用画面フィルムのEC販売
    所在地 関西
    概算売上 2.5億円~5億円
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  • 詳細業種 不動産販売業・工事業
    所在地 関東
    概算売上 10億円~30億円
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