組織再編税制とは? 組織再編税制の意味と仕組み、対象となるスキームの種類などについて解説します。

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日本経済は、長らく安定した経済成長を遂げてきました。しかし、変動が激しい国際経済や厳しい競争環境の中で、経営戦略の見直しが迫られているという企業は少なくないのではないでしょうか。
経営資源の有効活用や事業強化のため、組織再編を検討する企業が増加しています。
組織再編において、譲渡対価は、基本的には金銭で支払いますが、合併や株式交換等の場合は対価を買い手企業などの株式とするケースもあります。
通常、組織再編はその実行により、株主や売り手企業に所得税や法人税が課税されます。
しかし、対価を買い手企業等の株式とする場合には、税制適格要件を満たすと税金が課税されないケースがあります。
今回は、M&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)における組織再編税制について詳しく説明します。
組織再編税制とは

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1. 組織再編税制の概要

1-1. 組織再編税制とは?

組織再編税制とは、組織再編行為に関わる課税について包括的に定めた税制度のことをいい、2001年度(平成13年度)に導入されました。
一般に、資産を移転する際には、移転資産の譲渡損益に課税するのが原則です。
そのため、組織再編においても、原則として移転する資産・負債は時価評価され、課税されることとなります。しかし、合併や会社分割などを含むすべての組織再編において時価評価に伴う課税がなされた場合、多額の税金が発生することとなり、それがネックとなって適切な組織再編行為が阻害される恐れがあります。
このような問題に対応するために組織再編税制が設けられ、税制適格要件を満たす組織再編については、資産・負債を簿価で引き継ぎ、課税が生じないような措置が取られています。
この措置は、組織再編により資産を移転する前後で経済実態に実質的な変更がないこと、つまり「移転資産に対する支配が再編成後も継続している」と認められる場合は、移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べるできあるとの考え方に基づいています。

2. 適格組織再編と非適格組織再編

適格組織再編と非適格組織再編

組織再編税制では、税制適格要件を満たすかどうかで、課税関係が大きく異なります。
税制適格要件を満たす組織再編(適格組織再編)では、資産・負債を帳簿価額で引き継ぐことができるため、課税が発生しないことになります。
その一方、税制適格要件を満たさない組織再編(非適格組織再編)では、資産・負債を時価で引き継ぐことになるため、譲渡損益が発生し、課税が発生することになります。

3. 組織再編税制の対象スキーム

組織再編税制の対象となるスキームには、主に以下のようなものがあります。

3-1.  合併

合併とは、複数の会社を1つの会社に統合する組織再編行為であり、吸収合併と新設合併があります。
合併は、他の会社を完全に取得するために行われるほか、グループ企業における組織再編や、業績不振の会社に対する救済のため、あるいは、税務上のメリット(繰越欠損金の引継ぎなど)を受けるためなど、あらゆる目的で利用されます。

3-2.  会社分割

株式会社や合同会社など権利義務の一部または全部を別の会社に承継することを会社分割といいます。この会社分割には大別して吸収分割と新設分割があります。
会社分割では、分割後の会社が消滅しない点がその特徴となっています。

3-3.  株式交換

株式交換とは、売り手企業のすべての株式と買い手企業の株式などを交換することによって完全親会社・子会社の関係を作り出す組織再編です。
また、買い手企業の親会社の株式を利用する三角株式交換という手法もあります。

3-4.  株式移転

株式移転とは、既存の株式会社の発行済み株式の全部を新たに設立する会社に取得させることにより完全親会社・子会社の関係を作り出す組織再編行為をいいます。

3-5.  現物出資

現物出資は、会社間において、金銭以外の出資を行い、その対価として株式を交付することをいいます。現物出資は会社法においては、組織再編の手法として規定されていません。しかし、現物出資によって合併や会社分割と同様に資産の移転効果を得られるため、税法では組織再編税制の対象になっています。

3-6.  現物分配

現物分配は、株主への配当などにより、株主に金銭以外の資産を交付することをいいます。

3-7.  キャッシュ・アウト

組織再編におけるキャッシュ・アウト(スクイーズ・アウトともいいます)とは少数株主に現金を対価として、その有する株式を買い取り、少数株主を退出させ 100%子会社化する組織再編の手法をいいます。意思決定の迅速化、株主管理コストの削減や意思決定の迅速化、LBO 案件による必要性などから、実務上はしばしば行われています。

4. 組織再編税制における繰越欠損金の扱い

繰越欠損金とは、青色申告法人がある事業年度において生じた欠損金を、翌事業年度以降の所得の計算上、損金に算入できる制度です。
例えば、適格合併による組織再編では、被合併法人の繰越欠損金を合併法人が承継でき、これにより適格合併には、一定の節税効果が期待できます。

5. まとめ

今回は組織再編税制について詳しく説明しました。
組織再編税制は複雑な規定が多く、わずかな再編手順の違いで税務上の取扱いが大きく異なるケースがあります。加えて、頻繁に税制改正がなされる分野であることにも留意が必要です。
適格・非適格の判定結果は、移転する資産・負債の評価方法と、それに伴う課税関係に影響を及ぼすことになりますが、それ以外にも、繰越欠損金の引継制限・使用制限といった、実務上、非常に重要な論点へも影響することに注意が必要です。
様々な法律が複雑に関係する組織再編ですが、税務的視点はスキームを考えるうえで、極めて重要な部分です。
経営者であれば、組織再編税制について理解し、必要に応じて税務の専門家である税理士に相談することが望まれます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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