保育園・保育
業界別M&A動向

保育園・保育業界のM&A動向

更新日

本記事では、保育園・保育業界におけるM&Aの動向と事例、そのメリット、成功のポイント、そして今後の課題と展望について詳しく解説します。

2021年度の保育・幼児教育市場は前年度比1.02%増の4兆6,833億円となり、保育園市場は堅調な推移を見せています。しかし、保育士不足や待機児童問題など、解決すべき課題があることも事実です。これらの課題を克服し、より良い保育環境を提供するために、M&Aがどのように活用できるのか、具体的な事例を交えて紹介しましょう。

M&Aの前に押さえておきたい保育園・保育業界の基本情報

保育園・保育業界の定義

保育業界は保育所、幼稚園、認定こども園に大別されます。保育所は「認可保育所」と「認可外保育所」が存在します。

「認可保育所」とは、施設の広さや保育士等の職員数など、国が定めた認可基準を満たし、各都道府県知事に認可された保育所のことです。「認可外保育所」とは、国が定めた基準を満たしておらず、各都道府県知事に認可されていない保育所のことを指します。ベビーホテルや企業内保育所など、さまざまな保育ニーズに応える施設が多く、人気の高い認可外保育所も存在します。

保育園・保育業界の特色

保育所設置の際は、児童の安全確保や保育水準を保つために、さまざまな基準、制約を守ることが求められます。

認可保育所の設置には都道府県知事の許可が必要であり、厚生労働省令として定められている「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」や都道府県等が条例で規定した基準を満たさなければなりません。一方の認可外保育所の設置の際にも、都道府県知事への届出が必要かつ、厚生労働省が定めた「認可外保育施設指導監督基準」を満たすことが必須です。

保育サービス事業は、2000年に民間企業による認可保育所の運営が認められましたが、撤退時の規制が無いことなどから、当初は自治体からの信頼が得られないことが多く、2015年時点での民間企業が運営する認可保育所は全体の3.9%ほどにすぎませんでした。しかし、近年の保育需要の高まりや、国をあげての子育て支援施策から、民間企業の参入が増加しています。

保育園・保育業界のM&A動向・市場規模

2021年度の保育・幼児教育市場は、前年度比1.02%増の4兆6,833億円となりました。保育園市場は堅調な推移に支えられ、拡大を維持しています。保育ニーズの高まりによる利用者の増加と施設数の拡大が市場成長の主な要因です。また、待機児童問題の解消に向けて、行政からの手厚い補助や施策も講じられています。

保育所の多くは社会福祉法人が運営していますが、現状、民間企業が運営する認可保育所はまだ少ないのが実情です。しかし、多くの事業者が売上を伸ばしており、業界内のM&Aが増加しています。学習塾業界や鉄道業界など、他業界からのM&Aによる参入も目立っています。

保育・幼児教育市場の市場規模推移

参照:矢野経済研究所 保育・幼児教育市場に関する調査を実施(2022年)

保育園・保育のM&A事例

保育園・保育業界では、多くのM&A事例が見られます。以下に、その一部を紹介します。

SHIFTとインフィニック

株式会社SHIFTは、保育園運営と保育業務のコンサルティングを手がけるインフィニック株式会社の全株式(持分比率100%)を取得しました。

SHIFTは、IT未経験者でも活躍できる仕組みを構築し、雇用創出の推進、人材採用と事業成長を継続してきた企業です。M&Aを実施した背景には、既存の人材を採用するだけでなく、自ら育てていく仕組みづくりをしていきたいという考えがありました。インフィニックは、首都圏内に4つの企業主導型保育園・認可小規模保育園・認可保育園を運営。そのノウハウを活かした保育園の立ち上げ・運営のコンサルティングサービスを提供しています。

SHIFTは、インフィニックのノウハウをグループ内に取り込むことで、真の人材を育てる仕組みづくりが可能になり、SHIFTグループの成長になると考え、M&Aを実施しました。

ソラストとなないろ

株式会社ソラストは、東京都を中心に認可保育所等を運営する株式会社なないろの株式を取得し、子会社化するための株式譲渡契約を締結しました。

ソラストは「すべてはそこに暮らす子どもたちのために」を理念に掲げ、東京都を中心に認可保育所等を47ヶ所運営しています。一方、なないろは「いまと未来の“笑顔”を創造する」という保育理念を掲げ、東京都を中心に認可保育所等を19ヶ所運営しています。

ソラストは、なないろがグループに加わることで、東京都を中心に認可保育所等のシェアが拡大し、保育事業の成長に資すると判断し、M&Aの実施に踏み切りました。ソラストは、長年培ってきた保育所運営力に加えて、新たに加わるなないろの持つ保育に関する知見を融合することで、選ばれる園となることを目標としています。

日本保育サービスとアメニティライフ

株式会社JPホールディングスは、連結子会社である株式会社日本保育サービスと、同じく連結子会社である株式会社アメニティライフを、2022年4月1日付で合併しました。

日本保育サービスは、全国で297の子育て支援施設を運営し、アメニティライフは横浜市で5園の保育所を運営しています。両社は、株式会社JPホールディングスの完全子会社です。

合併の目的は、経営資源の効率化と子育て支援サービスの質的向上です。各種子育て支援プログラムを強化・拡充し、競争優位性と事業規模拡大を目指します。

センコーグループHDとプロケア

センコーグループホールディングス株式会社は、保育所や学童クラブなどを運営する株式会社プロケアの全株式を取得しました。

「人々の生活を支援する」を企業理念に掲げ、ライフサポート事業のなかで介護サービス事業を運営しています。一方、プロケアは、東京都を中心に全国54カ所で保育所や学童クラブなどを運営し、待機児童の解消や子育て世代の女性の社会進出を支援する企業です。

センコーグループは、プロケアの加入により子育て事業に参入しました。これにより、子どもから高齢者まで幅広い世代への支援を行い、企業理念の実現に一歩近づく見込みです。

ミアヘルサと東昇商事

ミアヘルサ株式会社は、認可保育園を運営する株式会社東昇商事の全株式を取得し、子会社化しました。

ミアヘルサは、保育園の運営や、医薬、介護などの事業を展開する企業です。一方、東昇商事は、神奈川県および東京都内エリアを中心に認可保育園6園を運営してきました。

この契約締結により、ミアヘルサグループが運営する保育園は32施設となりました。両社の事業エリアは近接しており、地理上の重複は小さいため、効率的な運営が可能であり、展開エリアの拡充が期待されます。

保育園・保育でM&Aを活用するメリット

保育園・保育業界でM&Aを活用することには、以下のような多くのメリットがあります。

人手不足の解消が期待できる

保育園では、保育士一人あたりが見られる子どもの人数が規定 されています。そのため、受け入れ人数を増やして事業の拡大を図るうえでは、人手不足が課題になりがちです。M&Aにより、こうした人手不足の問題を解消できる可能性があります。

教育内容の充実化を図ることができる

M&Aにより、他の保育園の優れた教育内容を取り入れることが可能です。これにより、教育品質が向上し、保護者の満足度も高まることが期待できます。

設備投資を効率化できる

M&Aを通じて、設備投資(施設の展開)を効率的に行えます。これにより、教育環境の向上やコスト削減につながることが期待できるでしょう。

ブランド力の強化・保護者からの信頼度向上が期待できる

ほかの保育園のブランド力(知名度や評判)を活用できます。これにより、保護者からの信頼度向上や社会的評価の向上に役立つことが望まれるでしょう。

保育園・保育におけるM&A成功のポイント

保育園・保育業界でM&Aを成功させるためのポイントをいくつか紹介します。

M&Aの目的を明確にする

まずは、なぜM&Aを行いたいか、という目的を明確にすることが大切です。通ってくれる生徒や保護者のため、保育士たちの雇用を守るため、地域への貢献のためなどさまざまな目的があります。目的を明らかにすれば、重視する条件や相手の選び方などがおのずと明らかになり、M&A実施後のミスマッチや後悔を回避しやすくなるでしょう。

保育士への丁寧な説明を行う

保育現場では、ニーズの高まりに対する働き手不足の問題があります。M&Aに際して保育士への対応を蔑ろにしてしまうと、保育士の離職につながるリスクがあります。M&Aを実施する理由や、実施後の保育士の待遇等を丁寧に説明し、保育士へ配慮した対応を行うことが大切です。

速やかに保護者説明会を行う

M&Aの実施後は速やかに保護者への説明会を行うことが重要です。保護者にとって、大切な子どもを預ける保育園の状況が変わることは不安につながります。M&Aの相手が信頼できる企業であること、子どもを大切に預かる姿勢は変わらないということをしっかりと伝え、不安を払拭できるように努めることが大切です。

早めの準備を行う

保育園の運営元は、社会福祉法人であることが多いでしょう。社会福祉法人のM&Aは多くの手間とプロセスを要するため、早めの準備を行うことが大切です。また、行政と連携しながらこまやかに相談を行うことも重要です。

保育園・保育における今後のM&Aの課題と展望

保育園・保育業界におけるM&Aの課題と展望は、以下のとおりです。

保育士不足の解消

保育園・保育業界では、保育士の人材不足が慢性的な課題となっています。その原因としては、長時間労働や低賃金、ストレスなどの労働環境の問題が挙げられます。

同時に、保育士不足を解消するためには、保育士の労働環境の改善が必要です。労働環境を改善することで、既存の保育士の離職を防げるほか、保育士免許を持っていながら現在は保育士として働いていない「潜在保育士」の採用にもつながるでしょう。

待機児童問題の解消

女性の社会進出や保育士不足により、待機児童が増加しています。特に都市部では、人口増加により児童も集中的に増加傾向です。保育所を設置できる土地も限られていますが、保育所の新設や既存施設の拡充が求められている状況でもあります。

新着案件情報
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    概算売上 非公開
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  • 詳細業種 美容室
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