簿外債務とは? 概要と発生原因、簿外債務の種類や回避方法について詳しく説明します

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日本の企業間におけるM&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)の動きは、近年増加しています。M&Aを実施していく過程において、簿外債務(ぼがいさいむ)が発見されたというケースがあります。今回は、簿外債務の概要、簿外債務が発生する原因、簿外債務の種類、簿外債務に伴うリスクの回避方法、簿外債務が発見された場合の対応について、詳しく説明します。
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1. 簿外債務とは?

簿外債務とは、財務諸表の1つである貸借対照表に計上されていない債務のことをいいます。
貸借対照表だけを見ても把握することができず、M&A時のバリュエーションにも影響を及ぼす事項といえます。
簿外債務を有する企業を買収した場合、その簿外債務は売り手ではなく買い手が将来的に負担することになります。
また、簿外債務の金額が投資金額に比べて多額な場合、買収金額に加えて簿外債務の金額分も投資回収する必要があり、投資回収できないリスクが高まります。
さらに簿外債務の金額によっては、買収後すぐに破綻してしまうリスクも考えられます。

2. 簿外債務が発生する原因

簿外債務が発生する主な原因は、中小企業と上場会社の会計基準が異なっている点です。
中小企業の財務諸表は税務会計の基準に基づき作成されていることが一般的です。
税務会計の基準では、支払額が定まっていない将来の費用については費用化されていないことが多く、その結果、簿外債務が発生することがあります。
また、偶発債務や債務保証など貸借対照表にそもそも計上されない偶発債務も、M&Aを実施する際には簿外債務として認識しておく必要があります。

3. 簿外債務の種類

次に簿外債務の種類について紹介します。主なものは以下のとおりです。

3-1. 賞与引当金

賞与引当金とは、将来支払うべき賞与・ボーナスのために計上する金額のことです。
会社に賞与を支払う旨の規程があり、賞与引当金が計上されていない場合は、予想される支払賞与額を簿外債務として認識する必要があります。

3-2. 未払残業代

中小企業の場合、適切な労働時間の管理など労務管理が厳密でないケースが多く見られます。
従業員が残業しているにも関わらず、残業代を支払っていない場合には未払残業代が簿外債務として存在することになります。
過去の未払残業代を含めると、未払残業代の金額が膨大になる可能性もあるため、デューデリジェンスの中で未払残業代の有無を確認する必要があります。

3-3. 未払社会保険料

会社は従業員負担分も合わせて期日までに社会保険料を支払う必要があります。
例えば、厚生年金保険料であれば納付対象月の翌月末が納付期限となります。
社会保険料が未払いになっている場合には、簿外債務として認識しなければなりません。

3-4. 債務保証

第三者の貸付金を買収の対象会社が債務保証している場合など、簿外債務として認識する必要があります。
発生可能性や金額の重要性を鑑み、M&Aを実施する前に債務保証を外してもらうなど、売り手企業に対応してもらう必要があります。

3-5. 訴訟リスク

買収の対象会社が第三者から訴訟を受ける可能性がある場合、訴訟リスクとして簿外債務を認識します。
例えば、対象会社が他社の特許を侵害している場合などが該当します。
法務デューデリジェンスの中で訴訟リスクについて調査する必要があります。

4. 簿外債務に伴うリスクの回避方法

簿外債務に伴うリスクは、できる限り回避することが望まれます。主な対応策は以下のとおりです。

4-1. デューデリジェンスを徹底する

簿外債務の存在を把握するため、デューデリジェンスを徹底的に実施することが重要です。
会計、税務、法務および人事などにおいて、簿外債務の有無の調査をデューデリジェンスのスコープに含める必要があります。
簿外債務のリスクが高い対象会社の場合、買い手はデューデリジェンス実施前に、デューデリジェンスを担当する弁護士、公認会計士、税理士などと打ち合わせを行い、簿外債務の観点で詳細に調査をしてもらうよう依頼します。
資料の確認だけでは簿外債務を見つけることが難しいため、専門家は経営者に対してインタビューを実施し、簿外債務があるかどうかを確認します。

4-2. 表明保証を設定する

簿外債務の有無を最終契約書の中で売り手企業の経営者に表明保証してもらいます。
具体的にはM&A後に簿外債務があることが判明した場合に、表明保証違反となるように設計し、損害賠償請求ができるようにしておきます。簿外債務の分、売り手企業から損害賠償を受けることで、簿外債務が実現した際のリスクを低減させることができます。

5. 簿外債務の存在が発覚した場合の対応

次に、簿外債務の存在が発覚した場合の対応を紹介します。主な対応策は次のとおりです。

5-1. M&Aを行わない

多額の簿外債務があることが発覚した場合、M&Aを行わないという選択肢も考えられます。
費用をかけてデューデリジェンスを行った結果、M&Aを行わない選択肢を取ることは難しい経営判断になりますが、簿外債務のリスクが大きすぎる場合は撤退することもあり得ます。

5-2. 買収価格を減額する

簿外債務の金額分、買収価格を減額することも考えられます。
例えば、買収価格が10億円、簿外債務が1億円の場合、買収価格を9億円に調整してM&Aを実施します。
買い手と売り手が簿外債務の存在と金額を明らかにし、お互いが納得した買収価格となるように交渉することが重要です。

5-3. M&A後に簿外債務の存在が発覚した場合、表明保証の内容を実行する

M&A後に簿外債務の存在が発覚した場合、最終契約書の表明保証条項、損害賠償条項などに従い対応します。
例えば、1億円の簿外債務があり、買い手に1億円の損害を与えたのであれば、損害額の100%を売り手が賠償することがあります。買い手は最終契約書の内容をよく確認し、相応の対応を売り手に求める必要があります。

6. まとめ

今回は、簿外債務の概要、簿外債務が発生する原因、簿外債務の種類、簿外債務に伴うリスクの回避方法、簿外債務が発見された場合の対応について説明しました。
経営者であれば、簿外債務について理解し、M&Aを実施する際は、M&A、会計、税務および法律の専門家に相談・依頼して進めることが望ましいです。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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