M&A成約事例・実績
ご成約者インタビュー 
それぞれの選択

M&Aご成約者事例
#82

倉林 柳澤
倉林 柳澤

世界一「うむさん」チームへ!
J1、J2昇格を目指すプロサッカークラブのM&A

琉球フットボールクラブ株式会社は、沖縄県で初めてのJリーグ加盟プロサッカークラブ「FC琉球OKINAWA」を運営している。大型のスポンサーに頼れない状況下にもかかわらず、着実な経営基盤の強化を実行してきた。今後、地域でさらに愛されるクラブとなり、上位を目指すための策として、2024年3月、面白法人カヤックへの株式譲渡を実施。面白法人カヤックは第三者割当による増資を行い、筆頭株主となった。譲渡側の琉球フットボールクラブ株式会社 代表取締役会長(前代表取締役社長)倉林 啓士郎 様と譲受側の面白法人カヤック 代表取締役CEO(琉球フットボールクラブ株式会社 現代表取締役社長)柳澤 大輔 様に、M&Aに至るまでの経緯と、共に目指す将来像について伺った。

  • 譲渡企業

    会社名
    琉球フットボールクラブ株式会社
    所在地
    沖縄県沖縄市
    事業内容
    日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)加盟
    プロサッカークラブ
    「FC琉球OKINAWA」の運営
    M&Aの検討理由
    経営力の向上と、クラブの成長発展のため

  • 譲受企業

    会社名
    面白法人カヤック(株式会社カヤック)
    所在地
    神奈川県鎌倉市
    事業内容
    広告やゲームなどのデジタルコンテンツ領域を軸に、eスポーツや地方創生などのコミュニティ関連領域他、多角的に事業を展開。グループ会社16社。
    M&Aの検討理由
    既存事業の成長やスポーツ事業など新規領域の獲得のため

地域の財産であるプロスポーツクラブを受け継ぎ発展させたい

まずFC琉球ならびに、運営元である琉球フットボールクラブ株式会社の沿革をお聞かせください。

倉林
琉球フットボールクラブ株式会社 代表取締役会長 (前代表取締役社長)倉林 啓士郎様(以下、倉林)

琉球フットボールクラブは、2003年に設立され、現在は「FC琉球OKINAWA」という名前のプロサッカークラブを運営する企業です。沖縄市を中心に沖縄県全域をホームタウンとし、県内唯一のJリーグ加盟クラブとして、地域に根差した活動を行っています。

プロであるトップチームの運営のほか、若手選手を育成するサッカースクール、グッズ販売やスポンサー収入などが売り上げの柱です。トップチームは沖縄県の社会人リーグ、九州リーグ、さらにJリーグのすぐ下にあるJFL(全国リーグ)へと昇格して、Jリーグへの加盟を果たしました。現在は3部リーグにあたるJ3に所属していますが、一時はJ2リーグに昇格した経験もあります。将来はJ2への復帰はもちろん、日本の最高峰であるJ1への昇格を目指しています。

 

倉林様のご経歴とFC琉球に関わるまでの経緯を教えていただけますか。

倉林
倉林

私は幼少期からサッカーをしており、学生時代には、サッカーボールを製造する株式会社イミオを創業しました。当時サッカーボールといえば、昔ながらの白黒2色だけのデザインしかなかった頃です。単身でパキスタンに渡って、工場と話をつけて自社オリジナルのボールを作り始めたのが最初でした。今でこそ、デザイン性の豊かなボールは世界的なメーカーでも作られていますが、当社が先駆けだったと思います。

地道な営業や開発を続けたかいもあって、フットサルのプロリーグであるFリーグ公式の認定ボールに選ばれたり、FIFA(国際サッカー連盟)が主催する国際大会でも採用されたりするようになっていきました。その後は自社ブランド「SFIDA」を立ち上げて、シューズやバッグ、ユニフォームといったスポーツアパレルも広く手がけるようになりました。

FC琉球と関わるようになったのは2014年からです。きっかけは、スポンサーとしてユニフォームなどの提供を始めたことでした。数あるスポンサー企業のうちの1社として応援する側の立場だったわけです。当時、J3リーグに参入したばかりの小さなクラブでしたので、資金繰りが安定していないとは聞いてはいました。

増資を相談されたとき、このままでは2カ月先の選手たちの給与を支払えないほどの経営危機に陥っていたことを、初めて知りました。実際に試算すると、1億2,000万円もの資金が必要な状況でした。沖縄県の特徴として、単独でビッグスポンサーとなるような大企業は多くありません。ただ、サッカーが好き、沖縄が好きという経営者仲間は多くいました。こうした方々に相談してどうにか資金を集め、結果的に筆頭株主になりました。

クラブを存続させるために、あえて代表を引き受けたということですね。

倉林
倉林

県内でのチームの知名度も低く、赤字体質だったので、社長の成り手がいなかったのが正確なところかもしれません。本来は沖縄にゆかりのある企業や人物が望ましいと思っていました。ただ、もう私が引き受ける以外に選択肢がなく、ここで自分がなんとかしなければ、沖縄からJリーグクラブが消滅してしまうのではないかと考えました。周囲からは「沖縄でJリーグは厳しい」「やめたほうが良い」という反対の声も多かったのですが、私自身もサッカーに育てられてきましたし、会社としてもサッカーのおかげで成長させていただきました。だからこそ、これは「やるしかない」という気持ちになりました。

そこから東京と沖縄の二拠点生活が始まります。株式会社イミオの経営は同社の幹部に大部分を任せて、私は月の半分以上を沖縄で過ごして経営改善に取り組みました。特に喫緊の課題だったのは、認知度の低さです。当時は10~15%程度の県民にしか認知されていなかったため、専任の広報スタッフを採用して情報発信に力を入れました。せっかくスポーツに取り組んでいるのだから、明るいイメージを持ってもらおうとジンベエザメのマスコットを作ったり、ユニフォームのデザインに沖縄のファッションデザイナーを起用したりしたのもこのときです。また営業を強化して、メディアのスポンサーを増やしました。現在では地元の新聞、テレビ、ラジオの全メディアが株主にもなってくださっています。

Jリーグではチームの成績に加えて、クラブライセンス制度というものがあり、人事体制や部門別担当者の配置、法務や財務の基準をクリアしなければ上位リーグへの昇格が認められません。2018年シーズンにはJ3の初優勝を果たすとともに、会社組織としての経営改善が認められてJ2に昇格できました。その後は、コロナ禍による観客減の影響や再びのJ3降格を経験することになりましたが、組織としての基盤はなんとか整えることができたと思っています。

上を目指すには、クラブ経営に関心があり信頼できるパートナー探しが必要

経営環境の改善には倉林様の経営手腕が大きかったように感じます。そのなかでM&Aを模索し始めたのはなぜでしょうか。

倉林
倉林

目の前の経営課題を一つずつ解決しながらも、どこかでふさわしい人にバトンタッチしたいという思いはずっと持っていました。将来的には沖縄の方、もしくは沖縄にゆかりのある方に引き継ぐのが良いだろう、と。

営業努力の影響もあって、県内企業のスポンサーも増えていましたが、J2リーグに昇格したことで、これまで接点の少なかった在京の大規模の企業様も応援してくださるようになりました。その後、新型コロナウイルスの流行やJ3降格など経営的にもインパクトが大きい経験を重ねるうちに上場企業レベルの安定した企業にパートナーとして加わっていただいて、経営にも関わっていただきたいという思いが芽生えてきました。

会社設立から20年のタイミングでただちに経営が行き詰まることはないとしても、次の20年を見据えて、組織やクラブの発展を本気で考えた結果です。

パートナーを探す一環としてM&Aキャピタルパートナーズにもお声をかけていただいたということですね。

倉林

そうですね。もちろん自社でもアンテナを張ってはいましたが、県内に大きな金額で支えてくださる企業の候補は多くありません。M&Aキャピタルパートナーズに関しては十亀 洋三(M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 取締役)さんとプライベートでも食事を共にする間柄でしたので、そこで株式の引受先の相談をさせていただいたのがきっかけです。一部の株主から株を売却したいというご相談を受けていたため、適切な引き取り手があれば紹介していただきたいと考えたのです。結果としてこれほど大きなM&Aの話になるとは予想していませんでした。

というのも「サッカークラブを譲り受けたい」というご相談そのものは少なくないのですが、十分な資金力をお持ちであることに加えて、沖縄にゆかりや思い入れがある企業が良いと思っていたためです。こうした条件に当てはまる企業が、そう簡単に見つかるとは思っていませんでしたので、引き合わせてくださったM&Aキャピタルパートナーズの武富さんにはとても感謝しています。ただし最初は半信半疑でした。

ここからはM&Aキャピタルパートナーズ 担当アドバイザーの武富さんにもお話を伺います。どのような経緯で、武富さんが支援することになったのでしょう。

武富
M&Aキャピタルパートナーズ 企業情報部 次長 武富 尚紀(以下、武富)

倉林様のご相談内容を十亀から聞いた際、すぐ「ぜひ担当させていただきたい」と申し出ました。FC琉球のことも存じ上げていましたし、サッカーチームを通じて地域活性の支援もできるという挑戦は、大変魅力的だと思っていました。私の経験が活かせるのではないかと胸が高鳴ったのを覚えています。

というのも、私自身もサッカー経験があり、中学生と高校生の頃は、プロサッカーチーム浦和レッズの下部組織である、浦和レッズジュニアユース、浦和レッズユースに所属していました。学生時代に現在のFC琉球の選手と対戦したこともあります。ですから、いつかサッカー業界に恩返しをしたい、という思いがありました。

鹿島アントラーズとメルカリ、FC町田ゼルビアとサイバーエージェントのように、Jリーグチームに関連するM&Aの事例は知られています。FC琉球に対しても成長、規模拡大の機会を提供したいと思い、早速候補企業のリストアップを開始しました。実はその中に、今回のお相手先であるカヤックのお名前も既にあったのです。

倉林

武富さんは、最初からものすごく張り切っておられましたね。私としてもM&Aの相手としては当然ながら、規模が大きくて経営状況の安定した企業が良いとは思っていました。カヤックのほかにも、リスト上で魅力的な社名を多数お見かけしたのは事実です。ただし武富さんに、「ぜひ一度、試合を見たいとおっしゃっている方がいるのですがお引き合わせして良いですか」とカヤックに関して言われたときも、ここまでの話が早々に実現するとはまったく予想していませんでした。

地域を「面白く」活性化したい

ここから譲受企業である面白法人カヤックの代表取締役 CEOである 柳澤 大輔 様にもお話をお伺いします。カヤックの事業内容と今回のM&Aに至る経緯をお話しいただけますか。

柳澤
面白法人カヤック 代表取締役CEO(琉球フットボールクラブ株式会社 現代表取締役社長) 柳澤 大輔様(以下、柳澤)

面白法人カヤックは、モバイルゲームや企業向けの広告、Webサービスなど「面白いコンテンツ」を作るクリエイター集団です。看板に「面白法人」を掲げて、社会をもっと面白くするために、まずは自分たちが面白く働こうというコンセプトで25年以上、事業を継続してきました。提供しているサービスは、イベントの企画開発やSNS・Webプロモーション企画開発を行う「面白プロデュース事業」、ゲーム開発などを行う「ゲーム・エンタメ関連事業」、ちいき資本主義(まちづくり)事業などです。私たちが得意な、面白いアイデアを出す力で、ありふれたコンテンツやありきたりのモチーフに新しい価値を生み出しています。

たのしいミュージアム
乳飲料パッケージ

カヤックが手掛けたコンテンツ

事業やコンテンツのさまざまなアイデアを「誰が発案するのか」という質問をよくいただきますが、「それは全員です」というのが回答です。弊社には、全方位的なブレーンストーミング(1950年頃に誕生した会議手法で、複数のメンバーが自由に意見を出し合うことで、新たな発想を生み出したり、アイデアを昇華させたりすることを目的としており、日本では略して「ブレスト」と呼ばれる)によって多彩なアイデアを出すという文化があります。まずは自分たちが面白がって徹底的にアイデアを出し、周囲から面白いと言われるものを形にしていく。そして最終的には関わった誰かの人生も面白くしていこう、という理念を繰り返してきました。

現在、グループ会社は連結対象と持分法適用会社を合わせて16社ありますが、このうち3分の2はM&Aを通じてグループ化したものです。弊社は中期的な成長方針としてグループでの成長を目指し「仲間を増やす」こと重点テーマとして取り組んでいます。単なるM&Aではなく、仲間になるのですから経営陣同士で対話を深めて、合流できる組織かを確認しながら進めてきました。互いの組織や従業員を尊重できる関係であることが、両者の発展には不可欠だと思います。

特徴的でユニークな経営理念をお持ちですね。なぜ今回のM&Aを検討されることになったのでしょう。

武富

私から柳澤様にメールを差し上げました。連絡先を存じ上げていたので単刀直入に「お引き合わせしたい方がいる」と依頼したのです。柳澤様にすぐ関心を持っていただいて、カヤックの従業員の方たちともチャットグループを作っていただき話を進めさせていただきました。柳澤様から「直近で沖縄出張の機会がある」というご連絡をいただき、たまたま出張期間中にFC琉球のホームゲームが開催されることがわかりましたので、ぜひお引き合わせしたいと感じました。多いときでも1カ月に3試合しかないホームゲームのタイミングと柳澤様の沖縄出張がちょうど重なったというのは、非常に幸運だったと思います。

柳澤
柳澤

これまでのM&Aでは、仲介業者に支援していただく機会は多くなく、直接交渉をすることがほとんどでした。仲介会社の方がどれほど熱心で人柄が素晴らしくても、M&Aを実行するかどうかはマッチングするお相手先企業の相性やさまざまな条件に左右されます。しかし、武富さんは熱心だったのはもちろんのこと、タイミングも素晴らしく、また試合を視察するための準備もスムーズに行っていただきました。

もともとカヤックの本拠地である鎌倉を中心に、まちづくりの支援を行ってきました。スポーツビジネスに直接関わった経験はありませんでしたが、弊社の掲げる「面白」の対象としては魅力的だと感じました。

また、沖縄は、カヤックにとって縁が深い地域です。カヤックの創業者の3人は、学生時代の同級生であり、大学1年のときに沖縄の石垣島に旅行に行った時カヤックの創業を決意しました。また創業者の1人が沖縄出身でもあります。

このように沖縄が私たちにとって特別な場所であることも、可能性を感じました。ただ、これまでも苦労されていたように、サッカークラブをビジネスとして成立させるのは非常に困難だという認識は持っていました。社内に反対意見があったのも事実です。

しかし、スポーツビジネスに関する参考図書を何十冊と購入し、読破すればするほどに、挑戦したいという気持ちが増していきました。

初めての顔合わせの際の第一印象はいかがでしたか。

武富 倉林 柳澤
倉林

場所はホームゲームが行われるスタジアムでしたね。11月で小雨の降るシーズン終盤の試合で、観客数は2,000人程度。そこまで多いわけではありませんでした。チームは下位に低迷していましたが、上位チームを相手に、年間でも最高レベルの試合を見せてくれて、大いに盛り上がった試合でした。

柳澤

正直にいって、都会にあるJ1の人気クラブに比べると観客数が少ないのは明らかでしたので、J3リーグを初めて生で観戦して、沖縄全体で盛り上げていくことの大変さを感じたのは事実です。しかし、スタジアムや試合そのものより魅力的に映ったものは、倉林さんが率いるこの組織のポテンシャルです。きっと面白いことができるだろう、という予感を感じ始めていました。

倉林

お会いする前から、カヤックが素敵な会社だということは認識していましたが、柳澤さんから、目指している地域資本主義やコミュニティ通貨の取り組みを詳しくお聞きして、まちづくりやスポーツを通じた地域貢献という強固なコンセプトを持っていることを知りました。また「面白さ」も、スポーツビジネスのようなエンターテインメントの分野にとっては親和性の高い重要なキーワードだと感じ、私たちに足りないものをお持ちの企業に巡り合えたという感覚がありました。

武富

琉球フットボールクラブの社内には、倉林様の他にもチームの運営や組織づくりの面で重要なスタッフの方がいらっしゃいましたので、その方たちとのミーティングを設定したのも良い影響があったと思います。

柳澤

過去の体験では、M&A後に新たな経営陣をカヤックから送り込むケースもありましたし、出資のサポートのみを行った事例もあります。今回は、お会いしたメンバーの方々が非常に優秀で情熱を持って仕事に当たられていることもよくわかりましたので、経営や人事面の改革をするのではなく、「面白さ」を上乗せしてよりエキサイティングなサービスを生み出すことがシナジーになるだろう、と考えていました。

武富

当初はカヤックが過半数を超える株式取得も視野に入れて検討を進めていただきましたが、既存株主の意向もあり、調整の結果、株式取得と第三者割当増資によってカヤックには(カヤック3代表の取得分を含めて)39.19%の株式を取得していただき、筆頭株主となることが決まりました。これでFC琉球が面白法人グループに加わることとなったのです。

 

成約に向けてM&Aキャピタルパートナーズの支援はどのように役立ったとお感じでしょうか?

倉林
倉林

今回デューデリジェンス(企業監査)にかかった期間が2週間と、相当なスピードで実施できたのは、武富さんとM&Aキャピタルパートナーズの尽力によるところが大きかったと思います。

柳澤

M&Aにおいては、必ずしもスピードが絶対とは思っていません。時間をかけたほうがうまくいくケースもありますし、基本的な方針では合意しても機が熟すまで何年か待つという場合もあります。しかし今回は、2024年度の新シーズンが開始する時点で発表したい、というプロスポーツビジネスならではの特殊な事情がありました。

武富

初めてお引き合わせしてから、基本合意、デューデリジェンスを経て成約、そして報道発表まで約3カ月という短期間でした。資料の用意など倉林様にかかるご負担、また献身的な姿勢がなければ成り立たなかったと思います。

倉林

武富さんのサッカーに対する知識、造詣が深かったことも大きかったと思います。ご自身もサッカー経験があったということのほかにも、スポーツビジネスの構造をよく理解しておられました。もし、単に株式の売買を成立させたいという思惑だけだったら、武富さんの思いが私やスタッフに伝わることもなかったでしょう。彼らも利益や自分の待遇もさることながら、強い使命感を持ってサッカーチームの運営に当たっていますので、武富さんの情熱が伝播するのはひしひしと感じていました。

日々さまざまな条件が変わるなかでも粘り強く交渉して、クロージングしていただいたおかげです。タイミングも含めてあらゆる条件がうまく重なったのだと思います。

柳澤

成約した後も、武富さんとは一緒に試合観戦しているのですが、この姿勢にも感銘を受けました。仲介会社としての役割を終えたら、次の支援に向かうのが普通なのではないでしょうか。これは個人というより企業の方針なのかもしれませんが、その後のビジネスが円滑に行われているのかまで気にかけてくれています。顧客の立場としては当然、信頼関係が一層強固になります。

武富

サッカーも好きですし、ご縁をいただいた両社のお役に立ちたい、という思いも持っております。またFC琉球を中心にして、沖縄県内でのM&Aを活性化するという共通の思いの実現に向けて、私たちが再びお役に立てる場面もあると確信しています。

サッカーは究極のエンターテインメント。

成約後、どのような変化が起きていると感じますか。

成約後、スタジアム内で撮影

(成約後、スタジアム内で撮影)

柳澤

正式な成約の前から、カヤックとFC琉球の広報担当者が合同でプロジェクトを設置して、記者会見に向けて入念な準備を行っていました。

サポーター参加型のイベント実施や、選手との交流会で利用できるコミュニティ通貨の導入なども、この記者会見の場で発表しました。選手の人気投票で選んだ漫画風の字体があしらわれた新デザインのユニフォームも取り上げていただき、面白さの一端を感じていただけたのではないかと思います。

カヤックのキャッチフレーズである「面白法人」を「うむさん法人」と看板をかけ替えて、ユニフォームの胸の部分に広告を出すこととなりました。「うむさん」とは、沖縄の言葉で「面白い」という意味です。

シナジー効果の一例
倉林

まず新たに強力なスポンサー、株主が応援者として加わってくださった事実は、スタッフや選手たちを勇気づけたと思います。これまで以上に、会社全体へ明るい雰囲気が広がっていることは、既に感じています。先日はJ1のガンバ大阪とホームで対戦する機会がありました。これまではJ1クラブしか出場できなかった大会にJ2・J3も参加できるようになったことで、はじめてJ1クラブとの試合が実現したのです。カヤックの仕掛けもあり、平日夜の開催にもかかわらず、5,400名を超える来場者をお招きできました。対戦相手であるガンバ大阪の選手肖像を使用させてもらうなど、短期間で独創的なポスターを何種類も用意したことは大きな話題となりました。カヤックの「面白」の力を実感しました。

JリーグYBCルヴァンカップポスター

「JリーグYBCルヴァンカップ」2024年4月24日開催 ガンバ大阪戦告知ポスター

倉林

また今後、カヤックに期待しているのは内部の組織作りです。チームビルディングや合宿など独自の人材育成や、理念浸透の知識をいくつもお持ちなので、組織力を向上させる面でもどのような効果が生まれるのかはとても楽しみに思っています。

「組織力の強化」という具体的な期待があがりましたが柳澤様は、今後の展望をどのようにお考えですか。

柳澤
柳澤

組織の文化は、よりポジティブに変えていきたいですし、そうできると思っています。例えば、新たなアイデアを思いついたら、失敗しても良いのでとにかくやる、という考えを浸透させること。組織づくりの過程では、さまざまな失敗や衝突も起こるものですが、「それでも、やらないよりはやる方が良い」という文化を作っていくことは、うむさん法人としての原点だと思っています。
恵まれた環境だと感じるのは、やはり多くのファン・サポーターがいてくださることです。しかも多くの方がSNSを日常的に利用されているので、私たちが行った施策の反応がダイレクトに返ってきます。喜んでいただける内容も、支持が得られないものも瞬時に判断でき、非常に効果を検証しやすいのです。またクラブの内部に入ってみて感じたことは、ホームでの試合開催という非日常的な空間が、毎週、毎月のようにやってくるという特殊性です。

フロントも含めた全スタッフが一人で何役も務めて、興行を成立させるために貢献しています。得点や勝利の喜びは全員でハイタッチして共有できるわけです。このような特殊な仕組みがあるのは、組織のまとまりを生み出すうえでは非常に有利ですね。ただし、この熱量を沖縄県全域に広げていくのは簡単ではありません。究極的にはチームの勝敗を超えた、うむさん、面白さを提供していくことが重要なのではないかと考えています。

倉林

スポーツの面白さには、試合の勝敗もさることながら、現場の熱狂や一体感を共有できる体験というのも大きな要因だと思います。招待した経営者同士による小さな異業種交流会の場を、スタジアムが果たすこともあります。これまでの人脈を活かしつつ、多くの企業がつながる経済活性のきっかけにもなれたら良いですね。そして、チームとしてはJ2に復帰し、J1昇格を目指し、その先には専用スタジアムの建設といった計画を定めています。これまでのFC琉球のリソースだけでは実現できなかった部分を、カヤックの力や知識を提供していただくことで実現に近づけていきたいです。

M&Aを検討している皆さまに、メッセージをお願いいたします。

倉林
倉林

以前からM&Aを考えるうえでは、表面上の譲渡金額や利益の重要性は二の次ではないかと考えていました。企業と企業の合併といっても、まずは人と人です。社内のメンバーも、新たに加わる方々の文化や方向性が一致していることが重要です。おかげさまで、今回、非常にスムーズな融合ができているのは、人同士のマッチングが奏功したからだと思います。金額に目を奪われるのではなく、人を観察し自社との相性を見極めることの方が重要度は高いと感じました。

柳澤

それには、譲渡企業と譲受企業の動機をどう一致させるかという会話の工程も大事だと思います。カヤックでは、企業が地域に貢献しながら事業を成長させていくことで世界をより良くしていく「地域資本主義」という考えを提唱し、鎌倉で実践してきました。さらに他の地域にも広げいきたいと考えている中で、地元密着のスポーツチームとこの考えは非常に相性が良いと思いました。また、スポーツに面白コンテンツを掛け合わせて、スポーツエンターテインメントとして事業を展開することも魅力的な挑戦だと思いました。またサッカービジネスで儲けるというより、スポーツにおける面白い存在を新たに作り出すことで、展開している他のビジネスに良い循環をつなげたい、という思惑がありました。

 

その実現のためには、クリエイティブの部分を自由に実行できる権利や、組織作りも含め、自分たちが培ってきたノウハウを投入できる環境が必要だと考えました。こうした計画を提示した際に、譲渡側が容認できるか、どのような条件が必要か、といった点を、リスペクトを持ちながらしっかりと対話できたことが、今回の成約の要因だと感じています。

動機のずれや誤解が起こらないような入念な確認とすり合わせが必要だということは、強調しておきたいと思います。

武富

沖縄でサッカーの熱狂を生み出す企業と、日本で一番面白さを追求する企業という、唯一無二といっても良い魅力的なマッチングに携われたことを、大変光栄に思っています。地域への貢献という点からも非常に意義があり、また今後の地域経済への影響を考えると、今回の成約に限らずより広範囲な企業同士の出会いを促進し、その際にM&Aを含めた最善な選択肢を提案することが、M&Aキャピタルパートナーズの使命であると考えております。


(左から)倉林様、弊社 武富、柳澤様(2024年2月19日記者会見時に撮影)

写真:ナカンダカリマリ 取材日:2024/4/25

担当者プロフィール

  • 企業情報部 次長 武富 尚紀

    企業情報部次長武富 尚紀

    大手都市銀行にて上場・未上場企業への融資業務及び事業承継関連業務を中心に従事。
    当社入社後は、主に設備工事業界、スポーツ関連業界、ITソフトウェア業界の他に上場企業グループのカーブアウト案件に関しても複数の成約実績を重ねている。

ご納得いただくまで費用はいただきません。
まずはお気軽にご相談ください。

秘密厳守にてご対応いたします。

お電話でお問い合わせ
TEL.0120-810-000

まずはお気軽にご相談ください

※秘密厳守にてご対応いたします。

お電話でお問い合わせ 0120-810-000
WEBで無料相談

M&Aキャピタル
パートナーズが

選ばれる理由

私たちには、オーナー経営者様の
決心にこたえられる理由があります

納得の料金体系

着手金や月額報酬を
いただくことなく、
お相手企業と基本合意にいたるまで、無料で支援いたします。

安心の専任担当制

検討初期から成約まで
オーナー経営者様専任の
アドバイザーが
寄り添います。

信頼の東証プライム上場

東証プライム上場の信頼性と、独自のデータ基盤の活用により、ベストなマッチングをご提供。