パックマン・ディフェンスとは? 概要、メリット、デメリットについて詳しく説明します

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日本の企業間におけるM&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)の動きは、近年増加しています。M&Aは企業の成長戦略の一環として行われる一方、敵対的な買収として進められる場合もあります。企業が敵対的な買収から身を守るための数々の手段の中のひとつとして認識されているのが「パックマン・ディフェンス」です。今回は、パックマン・ディフェンスの概要、メリット、デメリットについて、詳しく説明します。

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1. パックマン・ディフェンスとは?

パックマン・ディフェンスとは、別名「デットマンズトリガー」とも呼ばれ、相手企業が敵対的買収行為を実施した際、これに反撃する形で用いる買収防衛策のひとつです。
相手が、企業買収できる一定数(過半数)の株を買い集める前に、逆に相手の株を集めることで、自社の買収を防ぐという「目には目を、歯には歯を」ということわざのやり方です。
パックマン・ディフェンスという名前の由来は明確ではありませんが、日本由来のネーミングである点は明らかです。
1980年代、日本のゲームメーカーであるナムコ社(現:バンダイナムコエンターテインメント)の開発したアーケードゲームである「パックマン」が日米で大流行しました。このゲームは、プレイヤーの操るキャラクター「パックマン」が、敵に追われて迷路をひたすら逃げます。
ここでは、特定のアイテムを手に入れると、一定時間敵を食べることができる無敵状態となり、逆襲できるというゲームルールがあります。
このように、ゲームの主人公であるパックマンが敵に追われて食べられそうなところを逆転して敵を食べる様子が、現実のM&Aに重ね合わされて、この買収防衛策が「パックマン・ディフェンス」と呼ばれるようになったとされています。

2. パックマン・ディフェンスのメリット

パックマン・ディフェンスは日本国内では事例がなく、リスクが高いといわれていますが、主なメリットは以下のとおりです。

2-1. 敵対的買収を未然に防ぐことができる

パックマン・ディフェンスが実行されると、敵対的買収側でも何らかの防衛策を講じる必要性に迫られます。ここでは、パックマン・ディフェンスへの対処で手一杯となり、敵対的買収の継続が困難となるケースが多いです。
買収する相手企業がパックマン・ディフェンスを用いる可能性があるとわかれば、それだけで買収する意欲を減退させることが期待できます。
そのため、敵対的買収側にパックマン・ディフェンスの実行を示唆すれば、相手の意欲を削ぐ効果が期待できる点がメリットといえます。

2-2. 相手の株式の25%を取得すれば防衛が成立する

日本の会社法の定めによると、株式を相互保有している状況下において敵対的買収相手の株式の25%を取得すれば、相手がどれほどの数の株式を保有していようと、自社に関する議決権は失われて行使できません。
そのため、敵対的買収をするには通常、議決権の過半数の株を取得しなければなりませんが、相手の株式の25%を取得すれば防衛が成立するという点が日本特有のメリットになります。

3. パックマン・ディフェンスのデメリット

次にパックマン・ディフェンスの主なデメリットは以下のとおりです。

3-1. 敵対的買収の阻止に莫大な金額を必要とする

日本国内で実施するパックマン・ディフェンスであれば、敵対的買収相手の25%の株式取得で敵対的買収を阻止できます。しかし、上場企業の時価総額を考えると莫大な金額が必要となります。仮に実行できたとしてもその後の資金繰りが悪化するおそれがあります。この点がパックマン・ディフェンスにある最大のデメリットであり、実行事例が少ない要因のひとつといえます。

3-2. 株主等の関係者から賛同を得られないおそれがある

M&Aは、事業規模の拡大などの目的で実施されるのが一般的です。しかし、パックマン・ディフェンスの実施には経営上の目的が伴いません。つまり、仮に敵対的買収を防止できたとしても、これによって収益が上がるわけではありません。そのため、会社の大切な事業資金を収益性がないパックマン・ディフェンスに使用することについて、株主や取引先の金融機関などの関係者から賛同を得られないおそれがあります。

3-3. 非上場会社からの敵対的買収は阻止できない

非上場会社の株式は株式市場に流通しておらず、株式を買収できないため、敵対的買収相手が非上場会社の場合、パックマン・ディフェンスを採用できずに敵対的買収を阻止できない点もデメリットといえます。

4. まとめ

敵対的買収への防衛策のひとつであるパックマン・ディフェンスは大胆かつ派手でわかりやすい手法ですが、難易度やデメリットの観点から近年では実行された事例が見られません。しかし、威嚇としての意義が大きい買収防衛策であるといえます。
敵対的買収の阻止は企業の継続的な経営や文化を保つ上で重要な要素となる場合もありますが、その手段によって企業価値を自ら損なう行動は、長期的な視点での経営の健全性や株主の利益をどう捉えるかという観点からも慎重な判断が求められると考えられます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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