TOBの手続きの流れとは? 既存株主側の対応についても解説

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TOBは、株式を公開市場で買い付けることにより、企業の経営権を取得する方法です。しかしながら、その手続きは複雑で、法律により厳格に規定されています。
本記事では、企業の経営権を取得するための手段である、公開買付け(TOB)の手続きの流れについてわかりやすく解説します。既存株主側の対応についても紹介しますので、手続きを時系列で理解したい方や、留意点を把握しておきたい方は、ぜひご参照ください。

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1. TOBの手続きの流れ

公開買付け(TOB)は、企業の経営権を取得する手段の一つです。その手続きは非常に複雑で、法律により厳格な規定が設けられています。具体的な手続きの流れは、下記に挙げる5つのステップに区分できます。

1-1. 公開買付開始公告を行う

公開買付けを開始する際、買い手は金融商品取引法第27条で定められている事項を公告します。これには、以下の内容が含まれます。

  • 社名
  • 代表者の氏名
  • 会社所在地(住所)
  • 公開買付けにより株券等の買付けを行う旨
  • 買付けの目的
  • 買付価格
  • 買付予定の株式の数
  • 買付期間 など

公告は、日刊新聞紙や電子公告(EDINET)により行われることが一般的です。

1-2. 公開買付届出書の提出

公開買付開始公告を行った日から10営業日以内に、内閣総理大臣へ「公開買付届出書」を提出します。届出書には、公開買付者の概要や買付目的のほか、買付資金の裏付け等の記載が必要です。
届出書が受理されると、TOBが開始されます。なお、公開買付期間は20~60営業日です。

1-3. 意見表明報告書の提出

対象会社は、公開買付届出書の提出後10営業日以内に、内閣総理大臣に対して「意見表明報告書」を提出します。報告書には、TOBに賛同するか否か、その理由などを記載しなければなりません。対象会社の株主は、それらの内容を踏まえてTOBへの応募を判断します。

1-4. 対質問回答報告書の提出

公開買付者は、対象会社や株主から質問を受けた場合、内閣総理大臣へ「対質問回答報告書」を提出します。報告書には、寄せられた質問とそれに対する回答の記載が必要です。質問への回答によっては、TOBの条件が変更される場合もあります。
また、公開買付者は、公開買付けの開始と同時に「公開買付説明書」を対象会社の株主に交付します。説明書には、買付けに関する詳細な条件や手続き、その背景や目的などの記載が不可欠です。株主が十分な情報を得て、公開買付けへの応募を検討できるように配慮されています。

1-5. 公開買付報告書の提出

公開買付期間が終了したあと、公開買付者は遅滞無く、内閣総理大臣に対して「公開買付報告書」を提出します。報告書には、応募株券等の数や取得結果などの記載が欠かせません。TOBの結果、公開買付者が対象会社の株券等保有割合5%超の株主となる場合は、「大量保有報告書」の提出義務が生じます。
なお、公開買付けの撤回は、特定の条件下で可能です。撤回する場合、公開買付者は「公開買付撤回届出書」を内閣総理大臣に提出します。届出書には、公開買付けの撤回理由や、撤回の詳細な手続き等を記載します。

2. 既存株主のTOBへの対応・手続き

TOBが発表された際の既存株主の対応として、次の3つが挙げられます。

2-1. TOBへの応募

TOBに応募する場合、所定の方法による応募手続きが必要です。具体的には、買付け条件を満たす株式を、所定の期間内に買付け代理人へ提供します。その株式は、TOBの条件にしたがって買付者に売却されます。
TOBへの応募は、原則として撤回できません。ただし特例として、公開買付けの条件が変更された場合や、重要な事実が発覚した場合などは、撤回が可能になっています。
TOBに応募する場合の主な判断基準は、下表のとおりです。

株主の権利 応募の判断基準 内容
TOBの価格

TOB価格が株主にとって適切かどうか

TOB価格は、買付けを行う者が提示する株式価値に相当。この価格が市場価格よりも高い、あるいは株主が将来的な価値上昇を見込んでいない場合は、TOBへの応募の検討が合理的

株主が保有する株式の市場価格が2,000円、TOB価格が2,200円の場合、株主は検討が必要

買付期間

株主が応募を決定するための時間

買付期間は、株主がTOBに応募するために設けられた一定の時間。この期間が長ければ、株主は市場の動向を見てから応募の要否を判断できる

買付期間が上限の60営業日に設定された場合、株主はその間に市場の動向を見てから応募を決定できる

買付条件

TOBの条件が株主にとって適切かどうか

買付条件には、買付けを行う者が提供する株式の種類や数量、買付方法などが含まれる。これらの条件が、株主の投資目標やリスク許容度に合致していると、TOBへの応募の検討が合理的

買付条件が応募のあった分の「全部の買付け」で、株主がすべての株式を売却したい場合

応募撤回

応募を撤回できる条件とその手続き

一度TOBに応募したあとでも、特定の条件下で撤回が可能。公開買付けの条件変更や、重要な事実が発覚した場合などが該当する

公開買付けの条件が変更された場合、株主は応募を撤回できる

2-2. TOBに応募せず、そのまま株式保有

TOBに応募せず、引き続き株式を保有することも可能です。ただし、TOB後に株式の流動性が低下したり、上場廃止となったりする恐れがあります。また、その後の企業における方針変更などにより、株主価値が毀損(きそん)するリスクも生じます。
特に、買付者が支配株主となった場合は企業の経営方針が大きく変わる可能性があり、TOBに応募せずに株式を保有し続けるには、それらのリスクを理解したうえでの判断が必要です。
もっとも、買付者がTOBの結果、一定の株数を取得した場合には、特別支配株主の株式等売渡請求等の手段によりスクイーズアウトされてしまう可能性が高くなります。

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2-3. TOBに応募せず、市場で売却

TOBに応募せず、証券会社などを通じて市場で株式を売却することも可能です。例えばTOBに反対する大株主がいる場合には市場がTOB価格の引き上げを期待するため、TOB価格よりも高値で売却できる場合もありますが、流動性が低下していると売却が困難なケースもあります。
市場売却により、TOBの完了に先だって任意のタイミングで株式を手放すことが可能です。ただし、市場価格は常に変動するため、最適な時機を見極める必要があります。

3. まとめ

TOBの実施は、一連のプロセスに則って進める必要があり、各ステップで提出する書類や手続きに誤りが無いように注意が必要です。特に、TOBへの応募や他の選択肢については、株主自身が適切な判断を下すため、情報収集が欠かせないでしょう。
このような複雑なプロセスを進める際には、専門家の協力を得ることが重要です。M&Aキャピタルパートナーズでは、豊富な経験と専門知識を活かして、TOBの手続きをスムーズに進めるサポートを行っています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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