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M&Aご成約者事例
#70

有限会社瑞穂食品工業 代表取締役 知見 芳典
中小革新基盤株式会社 代表取締役 橘  芳樹
有限会社瑞穂食品工業
代表取締役
知見 芳典

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中小革新基盤株式会社
代表取締役
橘 芳樹

倒産寸前だった会社をV字回復させた3代目は
なぜM&Aを5年前倒しにしたのか

京都府京都市の郊外で製麺業を営む有限会社瑞穂食品工業(屋号:麺屋 棣鄂)は、ラーメン業界では誰もが知る存在だ。多くの有名店向けに製麺を手がけ、全国に麺を卸している。好調な経営を続ける中、同社は2023年9月、中小革新基盤株式会社へM&Aによる譲渡を決断した。なぜM&Aを考え、スピード成約に至ったのか。有限会社瑞穂食品工業 代表取締役の知見芳典様と、中小革新基盤株式会社 代表取締役の橘芳樹様、本件の担当者であるシニアアソシエイトの郡辰樹様に、決断に至るまでの経緯と今回のM&Aの特色について伺った。

  • 譲渡企業

    会社名
    有限会社瑞穂食品工業(屋号:麺屋 棣鄂)
    所在地
    京都府京都市
    事業内容
    業務用生中華麺の製造卸売業
    資本金
    300万円
    M&Aの検討理由
    更なる成長発展、株式承継問題の解消
  • 譲受企業

    会社名
    中小革新基盤株式会社
    所在地
    東京都港区
    事業内容
    中小企業に対する出資・株式譲受
    出資先の経営の支援
    資本金
    M&Aの検討理由

起死回生の一手は自家製麺“代行”

まず有限会社瑞穂食品工業の沿革と事業内容を教えてください。

知見
有限会社瑞穂食品工業 知見芳典様(以下、知見)

有限会社瑞穂食品工業(以下、棣鄂)は、私の祖父が1931年10月に創業した京都で初めて中華麺を手がけた製麺所で、私は3代目になります。事業内容は中華麺の製造卸しです。当初はそばやうどんも卸していましたが、現在は中華麺に特化し、クライアントであるラーメン屋さんのスープにぴったり合うオーダーメイド麺を製造、販売しています。
私は長男ですが、子どもの頃は事業を継ぐ気はまったくありませんでした。2代目だった父からは、幼稚園の頃から、「製麺業はもう先細りだ。お前が継ぐ必要はない。お前はお前の好きなことをしろ。」と言われていたので、社会人になってからは全く別の業界の会社で働いていました。しかし、1996年、病に倒れた父から呼び出され、「従業員を路頭に迷わせるわけにはいかない。ちょっと帰って来てくれないか。」と言われました。てっきり会社をたたむ業務を手伝ってほしいと言われるのかと思っていたので驚きました。ですが、ちょうど勤めていた会社で働く中で、未来を描けずやるせなさを感じていた頃でしたので、「棣鄂でなら、一国一城の主になれる」と家業を継ぐことを決意しました。2003年からは代表取締役を務めています。

承継後、会社の経営はいかがでしたか。事業は順調に推移したのでしょうか。

知見
知見

当時の棣鄂の年商は7000万円前後。工場の設備は老朽化が進んでいて苦しい状況でした。私は麺のことが全くわからず、うどんと中華麺を間違って配達して、怒られたこともありました。
当初はラーメンの命はスープで、麺は大量生産で安く作るというのが一般的だったのですが、ちょうどその頃、(「支那そばや」創業者で、“ラーメンの鬼”と異名を取っていた)佐野実さんが、ラーメン業界に「自家製麺」という言葉をセンセーショナルに投げかけたのです。自分がラーメン店の店主だったら、やはり「自家製麺」で勝負してみたいですよね。でも、「自家製麺」をするには製麺機が必要で、非常にコストがかかります。そこで考えたのが自家製麺の製造代行でした。子どもの頃から味覚が鋭敏で寡黙な弟を、「お前は日本一の麺博士になれ。麺は俺が売ってやる!」と言って会社に誘いました。そこから兄弟で経営を立て直し、自家製麺代行という新しい取り組みを進め、現在では全国のラーメン店に棣鄂の麺を卸しています。


見事にV字回復を果たし、事業が好調のなか、M&Aを意識されるようになったのでしょう。

知見

私は独身で子どもがいません。後継者がいなかったため、55歳になったらM&Aを視野に入れようと漠然と考えていました。そして2022年11月、50歳になったタイミングで、「私が55歳になったときに、社長を任せられるような人が育っていなかった場合、M&Aも含めた、事業承継のカードを切る覚悟がある。」と従業員には伝えていました。いつ引退するか、どんなエンディングが最善なのか、改めて考えるきっかけになりました。3代目ではありますが、ゼロから今の棣鄂を作り上げてきた自負があります。この財産をより良い形で、4代目に移行するにはどうすれば良いのか悩みました。ただ、いかんせんM&Aに関する知識がありませんでしたので、「どんなものかな?」と、M&Aキャピタルパートナーズに相談してみることにしたのです。

ここからはM&Aキャピタルパートナーズ担当アドバイザーの林さんにも参加してもらいましょう。林さん、知見様の印象はいかがでしたか。

林
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 主任 林 聡一郎(以下、林)

温厚で話しやすく、非常に誠実なお人柄だなという印象を受けました。初めてお会いしたときから既に会社の現状の課題や事業成長戦略を明確にお持ちで、なんとかお役に立ちたいなと思っていました。

知見

林さんは隙がない人だなという印象を抱きました。電話をかけるといつでもすぐに出て対応してくださります。知識がない私にも丁寧に、わかりやすく解説してくださる信頼のおける方だなと感じました。正直、最初は非常に軽い気持ちでお会いしたのですが、林さんにお会いして進めてみようと感じました。

最高の形で4代目に襷を繋ぎたいという知見社長のご希望に添えるよう、関係者の皆様にとって最良のパートナーをご提案したいとの想いから、入り口は幅広くお相手候補先からの意向を確認していただくことを提案しました。固定観念に縛られず、フラットな視点で比較検討していただくことが最良のご決断につながると思ったからです。ですが、М&Aは経営戦略の選択肢のひとつにすぎません。仲介者として、М&Aありきの提案にはならないよう知見社長の想いに寄り添うことを常に心掛けながらサポートさせていただきました。結果的には提案した中から、6社とトップ面談をしていただくことになりました。

100周年を見据えた、事業成長М&A

決断に至った最大の要因はなんだったのでしょうか。

林 知見
知見

最大と言われると難しいのですが、今回のお相手先である中小革新基盤と出会えたことですかね。それまでの「55歳になったらM&Aを考える」という考えは一変し、今M&Aを進めるべきだと、5年前倒しの決断となりました。今回、12社が手を挙げてくれて、6社とお会いしたのですが、トップ面談の際、中小革新基盤だけが棣鄂の麺を食べてから来社されました。しっかり我々のことを理解してくれようとする姿が嬉しかったです。

ここからは、譲受企業である中小革新基盤株式会社の橘さん、郡さんにもお話を聞かせていただければと思います。まずは事業紹介とM&Aに対する基本的なお考えからお聞かせください。

橘
中小革新基盤株式会社 代表取締役 橘 芳樹様(以下、橘)

中小革新基盤という社名のとおり、中小企業に特化した支援を行う会社です。日本の優れた中小企業に成長をもたらし、 日本経済・地域経済の発展に貢献したいという想いで支援を行っています。中小企業に投資する会社は少なくありませんが、そこに成長をもたらそうという会社はあまり無いように感じています。基盤という言葉には、我々が前に出るのではなく、あくまで主役は事業であり、私たちは裏方として支援していくという思いが込められています。また、中小革新基盤は投資ファンドではありません。自分たちの資金で中小企業に出資しています。換金する必要がないので、基本的には永続的なお付き合いができるのも特色だと思います。

どのような点に魅力を感じ支援を検討され、具体的にどんな提案をされたのですか?

棣鄂は200種類以上のオーダー麺の製造ノウハウ、レシピを有されており高品質なオーダー麺を提供されています。有名ラーメン店からの発注も多く、業界からの評価も非常に高いです。我々もトップ面談の前に棣鄂の麺を使ったラーメンをいただきましたが、素材、触感、香りなど細部までとてもこだわりの詰まった麺を提供されていると実感し、一緒になって棣鄂のよりいっそうの成長をサポートしたいと感じました。

郡
中小革新基盤株式会社 シニアアソシエイト 郡 辰樹様(以下、郡)

これまで知見社長や従業員の皆様が築かれてきたブランドやネットワーク、製造ノウハウ、商品提案力といったさまざまな強みを活かして、継続的により成長できるよう、我々は黒子という立場でサポートしていきたいとお伝えしました。面談では、従業員の皆様が正しく努力できる環境の整備など管理体制や生産量を増やしてより多くの方に棣鄂の麺を提供できる体制を構築する計画など成長戦略の具体的な支援についてお話ししました。

実際に知見社長とお会いし、会社のことを知れば知るほど、本当に良い会社だなと感じました。何より知見社長は、決断力があり、しっかりとした経営理念を持っている経営者です。いろいろな方面からお話を伺いましたが、話を聞けば聞くほど信頼できる方であり、素晴らしい会社だなと思いました。また、社員の方が生き生きと働いていることも魅力的でした。

もともと非常に顔の広いお方と伺っていましたが、実際にお会いしてみると属人化を排除する工夫をしておられて、素晴らしい経営者だなと感じました。システム導入等、現場がしっかりと回る仕組みを作っていらっしゃることにも感銘し、よりサポートしたいという思いが強まりました。

知見

6社と面談する中で、中小革新基盤の皆さんは棣鄂の麺を食べてからお越しいただいた姿勢などがとても嬉しく良い印象を抱きました。橘代表からの「全社員、非常に興奮しています」という言葉も印象に残っています。何より、私が大切にしているキーワードをきちんと拾ってくださり提案してくださったことが印象に残っています。

具体的にどのようなキーワード、ご提案だったのでしょう。

知見

棣鄂の名前が残ること、そして事業成長としての手段ということです。2031年に創業100周年を迎える私たちにとって、棣鄂の名前が残ることはとても大きなことです。中小革新基盤のお二人は、「棣鄂という名前は絶対に守りましょう!」と言ってくださりました。また具体的な成長への支援策を提案いただき、これからのイメージが湧きました。このような自分の想いを達成できるM&Aがあるということも今回初めて知りました。知識がなく、M&Aは右から左に流れるだけのものだと思っていたので、中小革新基盤のご提案はとても魅力を感じました。お相手先の中小革新基盤の皆さんに出会えたということが、このタイミングでM&Aを決断する大きな理由になったと感じます。

棣鄂はとても評判の良い会社です。数多くの投資ファンドが手を挙げていると林さんから伺っていました。前述のように、私たちは一般的な投資ファンドとは違いますが、優れた中小企業に成長をもたらすという私たちのコンセプトをしっかりお伝えし、共感いただくことを心掛けました。候補先の中から選んでいただき光栄です。

知見社長は提携後も代表取締役を継続し、また、営業・製造等についてもこれまでの体制を維持するかたちを希望されていました。中小革新基盤の永久的な支援という、投資ファンドとは異なる譲り受け後のスタンスも知見社長のお考えと合っていたと感じます。条件面もありますが、中小革新基盤の皆様の知見社長に対する誠実な姿勢があり、良いご縁組につながったと感じます。

パレットの中に新しい色が加わったことで新たな未来が描ける

今回のパートナーシップによって生まれた変化などをお聞かせください。

知見
知見

まだパートナーシップを組んだばかり。結婚にたとえると、同居が始まったばかりで、「この人はどんなタイミングでお風呂に入るのかな?」という、わくわくと不安が同居している段階です(笑)。ただ中小革新基盤という力強いパートナーを得て、新しい未来を描くことができるのは本当に心強いですね。パレットの中に新しい色が加わったことで、もっと遠くに行くことができると思うと興奮してしまいます。
橘代表は、いろいろな企業を渡り歩いて、さまざまな知識をお持ちです。幹部育成にも力を入れておられ、とても心強い方です。私は野球で言うと長嶋茂雄タイプ。経営学を学んだわけではないですし、性格的にも言葉で具体的に指示をするのが苦手です。中小革新基盤の力を借りずに、今後5年で4代目を育てられる自信が全くありません。橘代表からは、「理論的に数値化され、従業員が正しく努力できる環境」を作っていきたいという提案もいただきました。このご提案も決断に至る大きな後押しとなりました。私の感覚と、橘代表率いる中小革新基盤の理論が一体化したことで、今後の事業は厚みを増すはずです。伸び代しかないと感じています。

知見社長が開発されたオーダー麺というスタイルは、まだまだ伸び代があります。そもそもラーメンはこれからも伸びていくジャンルです。この事業をこれから大きく成長させていく支援をするのが私たちの仕事です。そして、知見社長の跡を継ぐ第2、第3の社長を育てて、棣鄂の永久的な成長をお手伝いしたいと考えています。

今回、M&Aキャピタルパートナーズはどのようにお役に立てましたか。

知見 橘 郡 林

事業柄、いろいろな仲介業者の方とお付き合いがありますが、林さんには、特に双方の懸念点をうまくまとめてくださる方だと感じました。また、常に中立な立場を貫かれている姿勢にはとても信頼が持てました。林さんの双方に寄り添った提案力、調整力こそが、今回の成約がスムーズにいった最大のポイントだと思います。

知見

悩んだり感情的になったりするタイミングもありましたが、林さんは約1年間、丁寧に寄り添い続けてくださりました。棣鄂の未来を考えたさまざまな提案、サポートをしていただき、感謝しています。

両社だからこそ成約に至った良縁です。今回のパートナーシップに携わらせていただいて、とても嬉しく思っています。ありがとうございました。

ありがとうございます。では、最後に、成約後の現在の思い、そして、これからM&Aを検討する経営者の方々にメッセージをお願いできますでしょうか。

中小企業にフォーカスし、かつ成長させていこうという会社は、そうあるものではありません。棣鄂は現在進行形で伸びている会社です。我々が同志として、関わっていくことで、中小企業の新たな可能性が開くことができるという、中小革新基盤の存在意義を改めて実感しました。これからもさまざまな中小企業の支援ができればと思います。

知見

今回良い出会いがあったことで、「善は急げ」と、55歳で決断しようとしていた計画が5年早まりました。早期に検討を始めていて本当に良かったと思います。早まった5年間を猶予期間として、私が社長として残って並走することで、4代目が苦労したり少しうまくいかなかったりしてもサポートしていけるのではないかと感じています。また中小革新基盤の皆さんが、これから私が想像しえないような新しい取り組みを提案してくれる、そんな場にも立ち会えることも楽しみにしています。
林さんからM&Aの話を聞いて、これまで考えつかなかった経営の選択肢の存在を知れたことは、とても意味があったと感じています。実際、中小革新基盤とのパートナーシップを結んだ後、多くの同業者や経営者から「今度じっくり話を聞かせてほしい」と声をかけられています。早めに会社の将来を考えることは大切であると感じています。

事業成長M&Aを象徴する、素敵なご縁組みに立ち会うことができとても嬉しく思っています。これからさらに「麵屋棣鄂」というブランド価値が向上していく未来を心から楽しみにしています。
M&Aはあくまでも経営戦略の選択肢の一つではありますが、なかなか具体的な情報が表舞台に出てこないという側面がありますので、M&Aに対して少しでもご関心をお持ちの場合は、最良の選択をご決断いただくための検討材料として、より一歩踏み込んだ情報収集をしていただければ幸いです。


(左から)弊社 林、知見様、橘様、郡様

文:長谷川 あや  写真:上野 貢希 取材日:2023/10/12

担当者プロフィール

  • 企業情報部 主任 林聡一郎

    企業情報部主任林聡一郎

    大学卒業後、大手製薬会社にて医薬品情報提供業務に従事。複数回の社内表彰を経て、外資系IT企業に転職し、食品・製薬会社へのコンサルティング業務に従事。親族が経営する会社の事業承継問題をきっかけに当社に参画。当社入社後は一貫してM&Aアドバイザー業務に従事し、食品製造、調剤薬局、病院、クリニック、介護、フィットネスジム、アパレル・雑貨、建設・設備工事、IT業界等の幅広い分野において経験と実績を有する。

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