バイオ
業界別M&A動向

バイオ業界のM&A動向

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バイオ・医薬品製造業界は、市場規模が急速に拡大している将来有望な市場ですが、国際的な競争は激しく、新規参入者も後を絶ちません。そのため、バイオ・医薬品製造業界では、世界規模でM&Aが非常に活発に行われています。

そこで本記事では、バイオ・医薬品製造業界の特色や市場規模、M&Aの動向などを整理したうえで、具体的な事例を紹介し、最後にM&Aを活用するメリットや注意すべき点について解説します。

M&Aの前に押さえておきたいバイオ・医薬品製造業界の情報

バイオ・医薬品製造業界におけるM&Aの状況について解説する前に、業界の基本情報を確認していきましょう。

バイオ・医薬品製造業界の定義

バイオ企業は、バイオテクノロジーを利用して、さまざまな分野の産業の発展に寄与する事業を主力事業としている事業者です。

バイオテクノロジーとは、バイオロジー(生物学)とテクノロジーを組み合わせた言葉であり、生物の持っている合成・分解などの能力や性質を利用し、あらゆる分野・産業、そして人々の生活に役立てる技術のことを指します。

バイオ・医薬品製造業界の特色

バイオテクノロジーは今後も大きな成長が期待できる分野ですが、それだけ国際競争が厳しい側面もあります。

国内バイオ企業の強みは、豊富な微生物菌株や発酵最適化といった、伝統的なバイオ技術です。今後より激化する国際競争に勝ち抜くには、これらの伝統的なバイオ技術に、AIなどのIT技術や、ゲノム編集技術などの最新バイオテクノロジーを組み合わせ、より強力な技術競争力を持つ必要があるでしょう。

また、環境の変化の速さも業界の大きな特徴として挙げられます。経済産業省商務情報政策局が発表した「バイオテクノロジーが生み出す新たな潮流~生物機能を用いた新産業創出に向けて~」によると、2015年の国内のバイオ産業市場のうち、健康・医療分野が56%を占めているのに対して、工業分野は11%と約1割程度に留まっていました。しかし、2030年には工業分野が39%を占め、健康・医療分野が25%減少すると予測されています。

バイオ・医薬品製造業界のM&A動向・市場規模

続いて、バイオ・医薬品製造業界におけるM&Aの動向や市場規模について見ていきましょう。下図をご覧ください。

経済産業省が令和5年5月にまとめた「バイオ政策の進展と今後の課題について」によると、バイオ・医薬品製造業界では、日本国内だけでなく、世界規模で大幅な市場拡大が見込まれていると述べられています。

また大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーは、バイオエコノミーの世界市場は2030年から2040年には200兆円から400兆円に達すると試算しました。海外では米中を中心に兆円単位の投資が行われていることから、このような投資を自国内に誘導する目的で産業政策の競争が活発化しています。

バイオエコノミーの成長予測

参照:バイオ政策の進展と今後の課題について

一方、国内のバイオ関連のものづくりは、脱炭素に貢献する潜在能力が高く、GX実現のために官民投資が必要な分野として位置付けられており、今後も巨額の投資が実施されるでしょう。

こうした動向を踏まえ、医薬品開発を主力とするベンチャー企業を指す「創薬ベンチャー」の領域では、世界と比較した際の日本の脆弱性を補完するために、M&A促進に向けたIFRSの任意適用拡大が実施されています。

このような国の後押しもあり、バイオ領域は全体として、M&Aが非常に活発化している状態です。

バイオ・医薬品製造業界のM&A事例

ではここで、バイオ・医薬品製造業界における具体的なM&A事例を、以下に5例紹介します。

サイトリ細胞研究所とサムティホテルマネジメント

2024年3月、株式会社サイトリ細胞研究所は、同社の連結子会社である株式会社ホテル金沢の株式を、株式会社サムティホテルマネジメントへ譲渡しました。

サイトリグループは、不動産事業やホテル事業などのリアルアセット事業から細胞治療サービスの提供などを行うメディカル事業への業務転換を進めている最中であり、今回の株式譲渡もその一環として実施されたものです。

なお、今回のM&Aの結果、ホテル金沢はサイトリグループの連結子会社から外れることとなりました。

藤森工業とセルジェンテック

2023年10月、藤森工業株式会社は、セルジェンテック株式会社の第三者割当増資を引き受け、1億円の出資を実施しました。

藤森工業は、国内で唯一のバイオ医薬品製造用「バイファス®」などを製造している企業です。一方のセルジェンテックはバイオベンチャーであり、脂肪細胞を用いて遺伝子治療用細胞の作製を独自技術で行っています。

今回の出資は、セルジェンテック社の独自技術を活用し、細胞培養受託事業を拡大していくことを目的としたものです。

ラクオリア創薬とファイメクス

2024年3月、創薬系バイオベンチャーのラクオリア創薬株式会社は、ファイメクス株式会社の株式を株式譲渡により取得し、子会社化しました。

ファイメクスは、タンパク質の分解を作用機序とする医薬品の研究開発を進めている創薬ベンチャー企業です。

今回の子会社化の目的は、ラクオリアの持つ標的タンパク質分解誘導剤を活用して、これまで創薬不可能であった疾患領域を創薬の対象とし、創薬バリューチェーンの確立による成長性と競争力を向上させることです。

その他、プラットフォーム型ビジネスによる収益の増加やガン領域のさらなる強化と拡充を目指します。

アステラス製薬とDelpharm社メッペル工場

2023年5月、アステラス製薬株式会社は、子会社であるアステラスB.VおよびアステラスファーマヨーロッパB.V.が保有しているメッペル工場を、 Delpharm社(本社フランス)に事業譲渡する合意書を締結しました。

今回の事業譲渡は、持続的な成長の実現を目指し、経営資源の配分の最適化を行うアステラス製薬がDelpharm社とアライアンスを組み、高品質な医薬品の安定供給が可能な生産体制を確立させることが狙いです。

なお、現在メッペル工場で製造しているアステラス製薬の製品は、Delpharm社が引き続きメッペル工場で製造して、アステラスグループに納入されます。

ロート製薬とユーヤンサン

2024年4月、ロート製薬株式会社は、三井物産株式会社らと共同で、シンガポール漢方薬製造販売企業のユーヤンサン社が発行する普通株式の約86%を、Righteous Crane Holding Pte. Ltd.から取得しました。

ユーヤンサンは1879 年に創業され、東南アジアを中心に170以上の店舗と30の漢方薬クリニックを運営している東南アジアで最大の漢方薬製造販売会社です。

今回の株式譲渡は、ロート製薬と三井物産が共同出資するシンガポールの特別目的会社を介して行われ、株式取得が成立次第、ユーヤンサン社の株式の残り14%に対して強制的公開買付けが実施されます。

このM&Aにより、ロート製薬は一般用医薬品・スキンケア・食品事業の拡大強化を、三井物産は医療・予防・健康に通じる食の提供を通して多様化する消費者のライフスタイルの質向上への貢献を、それぞれ目指します。

バイオ・医薬品製造業界でM&Aを活用するメリット

バイオ・医薬品製造業界でM&Aを活用する主なメリットとしては、有能な人材を確保できることや、設備を入手できることが挙げられます。それぞれ見ていきましょう。

有能な人材を確保できる

1つ目のメリットは、有能な人材が確保できる点です。バイオ・医薬品製造領域では、高度な技術や専門知識が必要です。少子化による人材不足から、こうした優秀な研究員やスタッフを自社だけで確保し続けるのは難しく、また研究員の教育には莫大な時間とコストがかかります。

M&Aを行えば、売り手企業が抱えている優秀な研究員の獲得が可能です。また、自社には無い分野の技術力や最新の知識などを取り入れられる可能性も高まり、事業の拡大や競争力の向上も期待できるでしょう。

設備を手に入れられる

2つ目のメリットは、設備を手に入れられる点です。新しい医薬品を開発するためには、新たな設備投資が必要です。こうした設備には多額な初期投資が必要であり、維持にもコストがかかります。

M&Aによって、良質な設備を抱える企業を買収できれば、必要な設備投資にかかる時間とコストを削減できます。また、設備の多様化によりバリューチェーンを横断した製造プロセスが実現できるため、新たな価値の創出も可能です。

バイオ・医薬品製造業界におけるM&A成功のポイント

バイオ・医薬品製造業界でM&Aを成功させるためのポイントは、効果的にシナジー効果を創出し、多角的経営を目指すことです。

医薬品業界では、競合他社との衝突を回避するために、分野ごとの細分化が進んでいます。したがって、バイオ・医薬品製造業界で市場競争を生き残るためには、1つの分野に特化するのではなく、多角化経営を行う必要があります。

多角化経営を行うためには、対象企業が専門とする分野や保有する技術力、設備、研究力をあらかじめ入念にリサーチしたうえで、自社事業をさらに強化できる相手を選ぶことが大切です。

同時に、自社が持っているリソースと他業種が持っているリソースをうまく組み合わせて、シナジー効果の創出を狙うことが重要なポイントとなります。

バイオ・医薬品製造業界における今後のM&Aの課題と展望

バイオ・医薬品製造業は、日本国内でも活発な業界ではありますが、世界規模で見ると、残念ながらまだまだ成長が遅れていると言わざるを得ません。特に、医薬品市場ではバイオ医薬品の参入が多いものの、その大部分は国内生産ではなく海外からの輸入に依存しています。

こうした状況を踏まえたうえで、日本のバイオ・医薬品の存在力を高めるためには、製薬メーカーのバイオ領域への積極的な参入強化が必要です。

また、世界に打ち勝つ新技術の創出を行うために、バイオ・医薬品製造業界内だけでなく、異業種からの参入によりさまざまなスキルやノウハウの融合、製造から保管、輸送までの各プロセスを刷新する新たな価値創出を進める必要があります。

弊社のM&Aご成約実績

  • 成約年数
    2022年2月
    対象会社(譲渡会社)
    医療機器関連輸入商社
    地域:関東
    譲受会社
    専門商社
    地域:関東
    取引スキーム/問題点・概要
    株式譲渡
    譲渡企業は、関東圏で医療機器関連輸入商社を展開。外部環境の追い風もあり、業績は倍々で進捗。譲受企業は、関連業種の大手企業。親会...
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