M&A成約事例・実績
ご成約者インタビュー 
それぞれの選択

M&Aご成約者事例
#84

廣 小澤
廣 小澤

「世界中にラーメンを届けたい!」
コロナ禍を乗り越えて3年越しのM&A。ねらいは海外事業の強化

宝産業株式会社は、中華麺の製造にはじまり、スープや調味料の製造、その後は開店支援を手がけるなど、ラーメン店を支える黒子的存在として成長を遂げてきた。順調に成長を続けるも、成長戦略の柱として据える海外事業がコロナ禍の影響から険しくなるなかで、株式会社吉野家ホールディングスへの全株式の譲渡を決断。2024年4月に株式譲渡契約を締結した。譲渡側の宝産業株式会社 元会長 井上 廣 様、元代表取締役社長(現取締役副社長)井上 光昌 様と譲受側の株式会社吉野家ホールディングス 常務取締役 小澤 典裕 様に、M&Aが行われるまでの経緯と、今後目指す姿について伺った。

  • 譲渡企業

    会社名
    宝産業株式会社
    所在地
    京都府京都市
    事業内容
    ラーメン店向けの麺、スープ、タレなどの
    商材の開発、製造、販売
    資本金
    1,000万
    従業員数
    150名
    M&Aの検討理由
    海外事業の強化など更なる成長発展のため
  • 譲受企業

    会社名
    株式会社吉野家ホールディングス
    所在地
    東京都中央区
    事業内容
    「吉野家」「はなまるうどん」の運営、
    海外事業など
    資本金
    102億65百万円
    従業員数
    16,409人
    M&Aの検討理由
    ラーメン業界への本格進出、
    製造業への初進出のため

自家製麺から始まり外販、開店支援。
ラーメン産業を支えるプロフェッショナルへ

まずは宝産業株式会社の沿革をお聞かせください。

廣
宝産業株式会社 元会長 井上 廣様(以下、井上(廣))

宝産業は1970年に私が創業した会社です。もともと板前だった私が、北海道で食べた札幌ラーメンに衝撃を受けまして。昔ながらの薄い醬油味の「中華そば」しか知らなかったので、もちもちした熟成麺に味噌と魚介だし、豚骨のスープは新鮮で、衝撃的でした。
これをラーメン専門店のない京都に持ち帰って商売がしたいと考えたのですが、肝心の生麺の入手が難しかったため、製麺にチャレンジすることを決意したのです。製麺会社に頼み込んで、工場見学もさせてもらいました。まだ自分の店で麺を作る「自家製麺」という概念がなかった頃ですが、麺が安定的に供給できるようになり、店舗を増やしていきました。さらに大型の製麺機を購入したことをきっかけに、麺の外販もスタートさせました。製麺機を減価償却する必要があったために始めたのですが、これが飛躍の大きなきっかけとなりました。

ラーメン店開業支援にもビジネスの範囲を広げていかれましたね。

光昌
宝産業株式会社 取締役副社長 井上 光昌様(以下、井上(光))

私がまだ20歳前後の頃、京都でとても有名なラーメン店の手伝いをしていた時期があります。そのラーメン店のスープ製造を宝産業が行っていました。私が、そのラーメン店のフランチャイズという形で新規店舗をさまざまな場所で出店することとなり、開店、経営に携わり各地で人気店に育てていきました。

さらに、ラーメン店に関する詳細なマニュアルを作成しました。接客からオペレーションまで事細かに記した分厚いマニュアルを取りまとめるのには苦労しましたが、新規開業するラーメン店のオーナーには大変重宝されました。このように宝産業に店舗運営の知識や技術が蓄積されていたので、開業支援ビジネスへ挑戦するのは自然な流れだったと思います。

海外への進出はいつ頃からスタートされたのでしょうか。

廣
井上(廣)

海外進出は、カナダに住んでいた知人からの誘いがきっかけでスタートしました。バンクーバーに出店した店舗は国内での成功ノウハウと、開店、店舗運営に携わった息子の努力もあって、現地で評判の人気店になったのです。国内と変わらない品質を届けられたことが、海外のお客様からもご支持をいただけた理由の一つだと思っています。

井上(光)

バンクーバーで成功してから、アメリカにも出店して5店舗まで増やしました。続けて製麺工場も海外進出して、現在ではロサンゼルスのほか、ジャカルタやバンコク、マニラに加えてフランス工場もパリ近郊で稼働しています。

2015年に光昌様に代表取締役を引き継ぎ、廣様は会長になられました。

光昌
井上(光)

子どもの頃から、母には「(父の後を)継げ、継げ」と口酸っぱく言われていましたが、父にはなかなか認めてもらえない悔しさのようなものはありました。これだけの規模にまで育ててきた創業者の後を継ぐのはもちろん覚悟も必要でした。意見の対立も少なくありませんでしたし、「辞めてしまえ」と言われたこともあります。

ただ私なりに長年経験を積み重ね、多くのお客様との出会いもありました。「うちのラーメン店が順調なのは、宝産業さんのおかげだよ」と言っていただく喜びは、年々大きくなっていきました。責任の範囲が広がるにつれて、これまで会社も自分自身も父に育ててもらっていたわけですが、これからは自分が中心となって従業員や家族の生活を支えていきたいという思いになりました。

井上(廣)

意見の対立は多かったと思いますし、親子だけに厳しく接したところはあります。「未熟だからまだ早い」という考えも頭をよぎりましたが、思い切って社長の交代を決断しました。役職が人を育てるという言葉にならって、一層の奮起を促したかったという思いはありました。

より高いレベルに成長を遂げるには
豊富な経営資源を有する企業との融合が最善と判断

経営のバトンが受け継がれたにもかかわらず、M&Aを検討されたのはなぜでしょうか。

廣
井上(廣)

もともとは、中小の製麺業者を譲り受けてビジネスの拡大をしたいと考えていました。そのときにM&Aキャピタルパートナーズと最初のご縁ができたのです。順調に交渉が進んだのですが、成約間近の段階で新型コロナ禍へと突入しました。

緊急事態宣言が出て飲食店は遅くまで営業できなくなったため、もちろん宝産業のビジネスにも大きな悪影響が出ました。それで、譲り受けの話は断念することになったのです。もし新型コロナウイルスの流行がもう少し遅くて、先にM&Aが成立していたらさらに打撃を受けていたと思います。

そして、経営面で長年懸念が大きかったのは、海外事業です。実は、コロナ禍になる前から各拠点の状況把握やコントロールに苦労していました。言葉、文化、時差といった数々の障壁があり、海外にもガバナンスを効かせるのは想像していた以上に困難でした。各地を任せられる人材の育成、採用よりも先に、どんどん事業を拡大したことは反省点として残っています。それだけ海外でのラーメン需要の高まりを感じていた裏返しでもあるのですが。

そのような状況の中、コロナ禍が重なったため、現地との往来さえ不可能な状況に陥ってしまいした。さすがに宝産業だけで立て直すのは難しいだろうと、海外事業にも強く経営資源が豊富なパートナーを探すために、再びM&Aキャピタルパートナーズのカピスさんにご相談したのです。

廣 光昌
井上(光)

このときも意見は激しく対立しました。会社を引き継いだ者としては、自らの手で勝負したい心情があるのは理解してもらえるかと思います。特にコロナ禍の影響が収まるとともに国内の業績は急回復していましたので、「今決断する時期ではない」とも主張しましたが、先ほどのように海外の状況に懸念があったこともあり、父は納得しませんでした。

ここからM&Aキャピタルパートナーズ 担当アドバイザーのカピスさんにもお話を伺います。サポートを開始したときはどのような方針を考えたのでしょうか。

カピス
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 企業情報部 部長 カピス 健人(以下、カピス)

結果的に長い期間、宝産業の事務所に通わせていただきましたが、最初はM&Aで譲り受ける側として関心を持っていただいていました。それが途中から、譲渡を検討する側のお立場になったので、交渉や手続きの流れを丁寧に説明させていただいたかと思います。

過去にラーメン店を経営する株式会社ウィズリンクと吉野家ホールディングスとのM&AをM&Aキャピタルパートナーズが支援させていただきましたが、ウィズリンクは宝産業の取引先で、井上元会長がウィズリンク創業者の江口様とも懇意にしていらっしゃいました。

吉野家ホールディングスが、ウィズリンクを譲り受けた後もラーメン業界に高い関心をお持ちだと把握していましたので、早い段階で井上元会長に具体的な社名をあげてご提案したことは覚えております。

井上(廣)

長年の取引先であるウィズリンクとは月一回程度は顔合わせする機会があるので、M&A後の変化もよく聞いていました。経営手腕もさることながら、社内が明るい雰囲気になったとポジティブな経過を聞いていたので、吉野家ホールディングスにはもともと好感を持っていました。

さらに海外でも何百店と吉野家を運営されている実績もあるので、これ以上のお相手先はいないのではないかと感じました。短期的に従業員や取引先の間で不安な気持ちが生まれたとしても、これからも会社が守られ、発展していくだろうと確信したのです。

カピスさんの説明はわかりやすく、話し方や立ち振る舞いから信頼できる人だと感じていました。

光昌 カピス
井上(光)

父の主導で話が進んでいたので、最初は「会社が奪われるのではないか」と、不安や不満のほうが大きかったです。ただ、カピスさんが熱心に宝産業の事務所まで足を運ぶ姿を見るうちに、譲渡側と譲受側の双方が足りないところを補い合うように縁をつなぐ仲介会社の役割を理解できるようになりました。

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ここから譲受企業の株式会社吉野家ホールディングス 常務取締役である小澤 典裕様にも加わっていただきます。改めて貴社の事業と今回のM&Aの背景をお話いただけますか。

小澤
株式会社吉野家ホールディングス 常務取締役 小澤 典裕 様(以下、小澤)

吉野家は、1899年創業で、ご存知いただいている通り「牛丼の吉野家」として発展をしてまいりました。長らく吉野家一筋で歩んできましたが、牛丼だけに偏重している事業内容の多角化は長年の課題でした。まず、うどん店「はなまるうどん」を傘下に加えて第2の柱に育て、8年前からはラーメン事業にも本格的に乗り出しています。先ほども話に出たウィズリンクのように、過去にもM&Aキャピタルパートナーズの仲介でグループに迎え入れたケースもあります。このラーメン事業を第3の柱として強固にすることが吉野家ホールディングスのねらいです。

ラーメン、そして宝産業に興味を持ったのはなぜでしょうか。

小澤

我々の事業の基本は「日常食」、つまり大衆性が高いことです。牛丼やうどんは、まさに大衆性が高い食べ物ですね。世界中の多くの人が頻繁に召し上がるものであるラーメンも、その点でぴったりでした。

ただし、ラーメンはご当地性の強い食べ物です。おかげさまで昨今、吉野家の味を牛丼の基準に捉えていただくことが多いですが、日本中のどのお店でも、牛丼を頼めば同じものが運ばれてきます。一方でラーメンは、麺もスープも具も多様性があり、地域による差が大きいことが特徴です。我々が得意なのは全国でできる限り同じ味の牛丼やうどんを提供することです。しかし、ラーメンは単一のスープと麺で、日本全国に店舗を網羅しようとしてもおそらく通用しないでしょう。

しかし宝産業には、スープや麺、調味料などをバラエティー豊かに組み合わせてさまざまなご当地ラーメン、ブランドごとのラーメンを、顧客の要望にあわせて提供できる強みがあります。この技術は、吉野家ホールディングスのバリューチェーンの強化につながることは間違いないと思っていました。宝産業の経験やスキル、ネットワークをグループに迎え入れることは、ラーメン店のM&Aとはまったく異なるバリューチェーンへの影響があると思っています。

双方がはじめから良い印象をもっていたのですね。しかし実現まで3年も要することになりました。

小澤
小澤

宝産業はラーメン業界ではよく知られた会社であり、はじめから好印象を抱いていました。しかし新型コロナウイルスの流行が収まるまでは、M&Aの検討を、全て中止せざるを得ませんでした。宝産業の譲り受けに関して最初に打診があったのは2021年だったかと思いますが、カピスさんから再び連絡をいただいたのは、コロナ禍が少し収まり海外への渡航も再開し始めた頃でした。このときも話を進めたい気持ちはありましたが、我々の事情からすぐに交渉の席にはつけなかったのです。

それでもカピスさんが粘り強く打診をしてくれたおかげで、昨年夏からようやく話が動き出しました。

カピス

たびたびご連絡を差し上げていたのは、井上元会長の思いがずっと変わらなかったためです。小澤様からも、本来ならすぐにでも動きたいとお返事をいただいたため、機が熟すタイミングを待ちましょうと、井上元会長にお伝えしていました。

井上(廣)

そうですね。私から他の候補を探してほしいといったことは一度もありませんし、カピスさんからも一切そんな話は出てきませんでした。きっと思いは届いているはずだと信じて待っていました。それほど待望していただけに昨年夏に「いよいよ」だと話を聞いたときは、嬉しかったですね。

初めてのお顔合わせでそれぞれどのように感じられたのでしょうか。

廣 光昌 小澤 カピス
井上(廣)

全幅の信頼を置いているカピスさんの仲介でしたから、何の不安もありませんでした。従業員の生活が守られる、取引先のお客様にも安心していただける、さらに一番の懸案だった海外事業も再び推進していただける、といった話を聞いたことで、早く話がまとまれば良いと思っていました。

井上(光)

吉野家ホールディングスが、宝産業を本当に必要としてくれていること、評価してくれていることがすぐにわかり安心しました。従業員だけでなく、私たちが慣れ親しんだ会社名も残していただけることを、嬉しく感じました。

小澤

事前にお聞きしていた通りのお二人のお人柄を拝見し、とても安心しました。印象に残っているのは「私どもはラーメンの製造会社です」と何度も強調されていたことです。我々も創業以来、牛丼にこだわってきましたので、ひとつの食品を専業にする厳しさを知っているつもりです。たったひとつの食品を突き詰める姿勢を大切にしてこられたことに共感しましたし、企業としての考え方が近いと確認できました。

さらに海外の生産拠点の課題についても、現状苦労していることを率直に吐露してくださいましたので、透明性があって、これから具体的な話を進める過程でも信頼できる方たちだと感じました。

顔合わせ以降の成約に向けたM&Aキャピタルパートナーズのサポートはどのようなご評価でしょうか。

小澤

なんといっても海外の工場が絡むので、デューデリジェンス(企業監査)が通常よりもかなり大変でした。内容によっては、M&Aが成立して一緒に立て直すこともできますが、やはり食品を扱う以上、衛生管理に関して基準をクリアできているかは生命線であり、ビジネスの成否を左右しかねない根幹の部分です。吉野家ホールディングスとしても、こうした衛生面の確認を疎かにしたままにはできません。

海外に提出を依頼しても資料が揃わない、などという場面もあったと聞いているので、M&Aキャピタルパートナーズは、相当ご苦労なさったのではないでしょうか。

カピス

拠点数が増えるほど、デューデリジェンスのプロセスは複雑になります。小澤様がおっしゃった通り、複数の海外拠点が絡むために物量的に大変な部分はありました。国によっては決算書が提出されず、代わりに出された法人税の申告書に基づいて、こちらで数字を算出したケースもあったほどです。

廣 光昌 カピス
井上(光)

コロナ禍を言い訳にするつもりはありませんが、日本から渡航できなかった時期は現地に対応を任さざるを得なかった、管理の目が行き届かなかったのは事実です。それでもカピスさんたちが粘り強く情報を集めて、形にしてくれたおかげです。

井上(廣)

一点だけ、カピスさんには、私たちの弱みも課題もすべて正直にお見せしてほしいとお伝えしました。取り繕って、一緒になったあとから「これは聞いてなかった。こんなはずではなかった」となれば、お互いにとって不幸だと考えたからです。ありのままをお見せするから、そのうえで判断してほしいという気持ちでした。カピスさんは、それを誠実に実行していただいたので、本当に感謝しています。

カピス

宝産業の誠実な社風があってこそだと思います。私を介して両社へ情報が行き交うので、曲がって伝わるようなことがあってはなりません。正直でありたいという思いに恥じないよう、私自身も決して隠し事をしないと肝に銘じていました。加えて吉野家ホールディングスも、巨大な上場企業とは思えないほどのスピード感で意思決定を示してくださいました。

双方が交渉時に、少しでも自社に有利になるような仕掛けを行うことがなく、お互いに真っ向から向き合っている様子は間近で見ていて心地よく感じていました。だから私にも「うまく交渉をまとめなければならない」などの発想が生まれることはありませんでした。個人的にも徹頭徹尾、気持ちよく仕事をさせていただいた感謝の思いがあります。

小澤

まったく同感です。カピスさんが仲介会社として、公平、公正であったことにとても好感を持ちました。今後も力をお借りする場面があると思いますので、ぜひご助力をいただけたらと思います。

また、気持ちよくこの話を進められたのは、宝産業の社内にも要因があったことはお伝えしたいですね。吉野家ホールディングスでは、外食産業や食品を扱うビジネスはすべてピープルビジネス(人の成長が会社の成長につながるという経営の考え方)として捉えています。提供するのは食べ物ですが、すべて人の手によって作られ、運ばれるものです。したがって、商品そのものの力もさることながら、関わる従業員次第でよくも悪くもなります。

吉野家ホールディングスは、M&A後も、従来の製造方法や製品のクオリティをそのまま継続していただきたいと考えていますので、なおさら従業員のみなさんの人柄や仕事に取り組む姿勢が大切です。海外にいる従業員も含め、さまざまなキーパーソンと対話させていただきましたが、井上元会長、井上副社長と同じで実直かつ誠実な方たちばかりで、誰と会話をしてもまったく嫌な思いをしませんでした。こうしたことから、一緒に仕事をスタートさせるのがますます楽しみになりました。

「ラーメン」提供数で世界ナンバーワンになる目標へ向かって

M&Aの発表から1カ月足らずですが、何か現場に変化は現れていますか。

光昌
井上(光)

最初にM&Aの話が社内に広まった頃は、率直にいって暗い雰囲気だったのです。しかし、実際にはポジティブな変化ばかりで驚いています。吉野家ホールディングスから出向してきたのは、新社長を含め3名でした。1名は管理、1名は衛生や安全面の責任者ですが、いずれも宝産業の従業員から尊敬を集めているのがわかります。直属の部下になった従業員は、付きっきりで吉野家ホールディングスの衛生管理のノウハウを教わっているようです。改善点が多い、つまり伸びしろがたくさんあることをみんなが前向きに捉えているのは嬉しい限りです。

取引先も最初は不安だったようで、新社長が着任すると同時に続々と面談の依頼が来ました。新任のあいさつも兼ねて、新社長と1時間程度話し込むと、悲壮感を漂わせていた表情がみるみる明るくなっていく様子が毎回見られました。これまで通り取引を継続すること、また将来的なビジョンを聞くと安心してくれますね。

「うちのラーメン店も買ってもらえないか」と言い出す方がいるほど、新社長の魅力が伝わっているのでしょう。1カ月弱で劇的な変化をもたらす吉野家ホールディングスのパワーは、同じ業界で頑張っている多くの仲間に知ってもらいたいです。ラーメン店との人的なネットワークは私たちの強みなので、伝道師のような役割を担っていけたらと思います。

宝産業では社内のポジティブな反応がありましたが吉野家ホールディングスではどのように捉えていますか。

小澤
小澤

しばらくコロナ禍の影響で中止していたため、今回の宝産業の件が吉野家ホールディングスにとって、久々に新たな企業をグループに迎え入れる機会となりました。

財務経理本部、人事本部や品質保証室、さらに商品本部などグループの役職員を集めて「今日から同じ会社の仲間だと思ってサポートするように」と社長からの号令がかかりました。改めて、M&Aによって譲り受ける側にも社内、グループ内の一体感を高めるきっかけになることを実感しました。私たちも宝産業と同じように、ワクワクした高揚感が続いている状況です。新たな仲間が増え、新たな事業に挑戦していくのは、刺激になります。

これからの目標をお聞かせいただけますか。

小澤
小澤

直接的、間接的な形を合算して提供するラーメンの杯数で世界一を目指すことが、目下のビジョンです。

まだ吉野家ホールディングスのラーメン事業の規模は小さく、これからも店舗数を増やしていきたいと考えています。ただ今回、宝産業がグループに加わったことで事業のフェーズが広がりました。特に海外では、吉野家ホールディングスが取り組み、成功も失敗も積み重ねてきた50年分ものノウハウがあります。宝産業のネットワークを重ねることによって、世界中のお客様にラーメンを届ける未来をはっきりと視野に捉えられるようになったと感じています。

直接お客様にラーメンを提供する形態に加えて、宝産業の得意とする卸売業務を伸ばせば、私たちが提供するスープと麺を使う店舗が増えます。その結果として、さらに多くのお客様にラーメンを届けることができます。このナンバーワン奪取は決して絵空事ではないと思っています。

井上(光)

今のお話にとても共感します。世界中にラーメンを届けるという夢が私の中でも再燃するのを感じました。海外のお客様が1杯のラーメンに感動してくれる姿は、今もこの目に焼き付いています。海外でも国内同様の味を再現し、常に品質を保つことは決して簡単ではありません。だからこそ、吉野家ホールディングスの豊富な経営資源と強固な体制を基盤として、邁進していきたいと決意を新たにしています。

これからM&Aを検討される経営者の皆さまにメッセージをお願いいたします。

廣
井上(廣)

M&Aは自社の都合だけでは成り立ちません。最適なタイミングはコントロールできないことを学びました。そのときに焦っても、無理やり動いても、恐らく良い結果にはならなかったでしょう。機が熟すのを待つことも、大切なポイントだと言えるかと思います。

また、一切隠し事をしないと決心したことで、後ろめたさを感じる必要がありませんでした。もし後になって何か不都合な事象が発覚したら、道義に反するだけでなく、従業員を傷つける事態にもなりかねません。だから、少なくとも私や宝産業にとっては、良い選択だったのではないかと思っています。

井上(光)

M&Aで株式を譲渡することは、決してネガティブではないと申し上げたいです。当初は、私も自分の会社が奪い去られるのではないかと疑心暗鬼になっていました。しかし実際には、組織や事業が進化するための絶好の機会だと理解できたので、本当に良かったと思っています。

もちろん、自社にとって最適なパートナーに巡り合えるかが重要なのはいうまでもありません。しかし、信頼できる仲介会社の存在によって、両社が不足している部分を補い合える出会いの確率が高まるのは間違いないと思います。

小澤

M&Aで良縁に恵まれるかは、運やタイミングの要素も大きいように思います。会社同士の相性の問題も大きいので、どのような化学変化が起こるか、相性を確認する行程も非常に大事だと感じました。

そして、最も大切なことは、同じ価値観を持った人同士が集まって力を合わせることです。事業の相性よりも、関わる人の相性を見極めることが重要だと感じています。

カピス

今回、食というキーワードは共通しながらも、事業の形態の異なる両社をお引き合わせできたことをとても光栄に思っています。世界一の目標を達成するまで、微力ながら今後もサポートさせていただけたら幸いです。


(左から)弊社 カピス、光昌様、廣様、小澤様

文:蒲原 雄介  写真:佐久間 ナオヒト 取材日:2024/5/21

担当者プロフィール

  • 執行役員 企業情報部 部長 カピス健人

    執行役員 企業情報部部長カピス健人

    大学卒業後、大手証券会社にて上場・未上場オーナー及び法人の資産運用・事業承継コンサルティング業務に従事。
    2017年に入社後、後継者問題の解決や成長戦略としてのM&A支援業務に従事。

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