晴ればれ~M&Aご成約オーナー様の奥様インタビュー企画~

「3代続く家業への挑戦。」 家族と歩んだM&Aまでの道のり。

出演 株式会社長谷川鉄工所 長谷川 由起子 夫人
由起子夫人インタビュー写真

創業から80年以上続く老舗の減速機・変速機製造をおこなう株式会社長谷川鉄工所。後継者不在問題を背景に、2021年に個人投資家である横川達也さんを譲受先としてM&Aを行いました。
「晴ればれ」第二回は、長谷川鉄工所3代目経営者・長谷川勉さんを公私にわたって支えた長谷川由起子夫人にインタビュー。代々続く家業に経理として携わってきた長谷川さんの想いを伺います。

結婚を機にはじまった、
未経験の経理の道

まずは由起子夫人のキャリアについてお伺いします。
どのようなキャリアからお仕事をスタートされましたか?

長谷川 由起子様(以下、由起子夫人):

私は短大を卒業後、損害保険ジャパンの前身である安田火災海上保険に3年間勤めました。本当は新宿にあるオフィスビルで仕事をしたかったのですが、入社式でもらった辞令は埼玉県の川口支店。浦和の実家に住んでいたので、実家から通いやすい支店への配属になりました。そこでは、代理店の方が契約した書類のチェックや現金の取り扱い、お客様からの事故の電話を受けてサービスセンターにおつなぎするといった業務を担当していました。
3年ほど勤務した後、夫の長谷川との結婚を機に会社を寿退社しました。当時女性は、短大を出て数年お勤めして、結婚をしたら寿退社するというのが一般的だったので、私も当たり前のようにその流れに乗りました。

配偶者である長谷川勉さんとはどのように出会ったのですか?

由起子夫人:

お見合いです。当時の埼玉銀行の営業の方が、私の実家である酒屋と長谷川の会社を知っていて、引き合わせてもらったんです。

初めてお会いしたとき、勉さんはどのような印象でしたか?

由起子夫人インタビュー写真

由起子夫人:

正直に言いますと、初めての印象は「まったくタイプじゃない!」と思ってしまって(笑)。でも実際に話してみると、お互いに洋楽が好きということが分かって、音楽の話題などでとても会話が盛り上がりました。また、お会いしていくうちに義理人情に厚く、誠実な人柄に惹かれました。両親からも「こんないい条件の方、断る理由はないでしょう」と強く勧められましたし、長谷川のご両親どちらも気取っていないとても素敵な方々だったことも結婚の後押しとなりました。

その頃、勉さんはすでに社長をなさっていたのでしょうか?

由起子夫人:

いえ、当時はまだ社長ではなかったのですが、結婚とタイミングを同じくして新しい工場が完成したこともあり、役職付きになりました。

由起子夫人も一緒に会社のお仕事を?

由起子夫人:

そうですね。嫁いでからすぐに義母から「いつから事務所に出られるの?」と聞かれて、そのとき初めて「あ、私もやるんだ」って思いがけない形で家業に関わることに。正直、結婚前はまさか自分も嫁ぎ先の会社の仕事に関わることになるとは思っていなかったんです。世間知らずの私は、中小企業の経理を身内がしっかりと守っていくことの大切さを、初めて知りました。

そんな始まりから、長年、義母がまとめていた経理を担当することになって、義母や先輩に教わりながら仕事を少しずつ覚えていくようになりました。そうしているうちに子どもができ、しばらくは3人の子育てに専念できるよう休ませていただいて、一番下の子が小学校に入ると同時にまた復帰し、子どもたちが帰ってくる時間まで社員として働いていました。

未知の世界を共にした
義母との関係

経験のない経理のお仕事はどうでしたか?

由起子夫人:

それこそ最初のうちは、経理で使われている用語の意味もまったく分からなくて、随分と義母や先輩に助けてもらいました。子どもたちが幼稚園に行っている時間を使って簿記の専門学校に通って勉強もしましたけど、やっぱり慣れるまでは大変でした。

子育てと、慣れない仕事の両立は大変ですよね。

由起子夫人:

そうですね。会社としても厳しい時期もあり、その頃は義母が経理の責任者で私は手助けしている状態だったのですが、「もう手形がない」とか「昨日も寝られなかった」とか、そんな話をしているときもあったことを覚えています。夫の長谷川と、その頃会長であった義父、そして義母は精神的にもとても大変だったと思うのですが、私は売り上げを作れるわけでもないので……ただただ見守るしかありませんでした。

その当時、勉さんとはご自宅でどのようなお話をされていましたか?

由起子夫人:

そんな状況でも、長谷川はあまり暗い話はしないんですよね。ダメなときはダメだし、ダメだったら別のことをやればいい、というような感じで。でもやっぱり誰もリストラしたくないし、会社を守るための苦労はいろいろあったと思います。

その状況からはどのように抜け出したのでしょう?

由起子夫人インタビュー写真

由起子夫人:

その後、銀行からのアドバイスを受け、内部整理をしたりして、何とか少しずつ経営も巻き返すことができました。そこから、経理業務を義母と私の二人だけで担当することになり、いよいよのんびりしてはいられなくなってきて。

実は義父も長谷川も新しい物をどんどん取り入れていく主義で、経理にもかなり早い段階でオフコンを導入し活用していたんですが、このタイミングでネットの時代となり、パソコン操作のできる私がメインの業務を行うようになり、義母がサポート役に回ってくれるようになりました。人手が少なくても何とかなったのはテクノロジーのおかげですね。

経理の仕事の多くを任されていくなかで、面白さを感じる部分はありましたか?

由起子夫人インタビュー写真 義母である愛子さんとの一枚

由起子夫人:

私はとってもケアレスミスが多いし、最初の方こそ本当に、“自分は世界一経理に向いていない”と思いながらやっていました。でも次第に、計算した数字が合致する瞬間や、誤差を見つけて記録を遡ることが楽しくなっていきました。自分なりにシステムを工夫して使いやすくすることも楽しかったです。
そうやって徐々に楽しさを見出すことができたのは、義母が私のペースで仕事をさせてくれたことが大きかったように思います。私がミスをしたときも、丁寧にその修正点を教えてくれて、温かく見守ってくれました。とても気を遣ってくださったこと、本当に感謝しています。

お義母様といい関係を築いていらっしゃったんですね。

由起子夫人:

仕事、子育て、さまざまな面で義母には助けてもらいました。本当に、感謝してもしきれません。これからも恩返しをしていきたい気持ちでいっぱいです。

長谷川鉄工所の未来を託したM&A

次にM&Aについてお伺いしたいのですが、M&Aを検討し始めたきっかけは何だったのでしょうか?

由起子夫人:

うちには息子がいるのですが、一般企業に勤めていますし、上の人に可愛がられるようなタイプで、気質的に経営者にはあまり向いていないのではないかなと、ぼんやり思っていました。

そうなると適切な後継者もいないですし、長谷川も60歳を超えて、今後どうしていくのだろうとヤキモキしていたんです。でも長谷川に「どうするの?」と聞いても、「俺が元気なうちはやれるんだ!」の一点張りで、私なりに心配していました。ですが彼は彼で、ちゃんと考えていたんでしょうね。M&Aキャピタルパートナーズさん(以下、MACP)ともお会いして、水面下でM&Aの情報収集などお話をずっと進めていたようです。

弊社アドバイザーから勉さんにお手紙を送り、お話が始まったと伺いました。
直接お会いするタイミングもあったと思うのですが、
由起子さんから見て、最初の印象はいかがでしたか?

由起子夫人:

正直に言っていいですか?(笑)。 実は、最初はM&Aキャピタルパートナーズの社名もあまり存じ上げていなかったこともあり、「3代続いた長谷川鉄工所の運命を、突如現れた若い方にお任せしてしまっていいのかな?」と思っていたのですが、長谷川がアドバイザーさんの事を気に入っていたので私は離れた席から見守っているだけでした。

ただ回を重ねるごとに、私の事も巻き込んでくださり、アドバイザーさんとお話しさせていただく機会が増えました。非常に優秀な方で、アドバイザーさんが私たちのことを親身になってサポートしてくれている姿勢も見えてきましたし、「この人なら信頼して会社の未来を託せる」と安心できるようになりました。会社の企業価値算定、買い手探し、企業概要書の作成、デューデリジェンス、株式譲渡契約書の作成、引継ぎなど、何から何まで手厚くサポートしていただきMACPには感謝しかありません。

弊社アドバイザーのサポートはいかがでしたか?

由起子夫人:

アドバイザーさんの誠実さが非常に感じられる素晴らしいサポートでした。私は義母から受け継いだやり方を守りながら経理をやってきていたので、外部の方がその書類を見たときに、どのように映るのかが不安でした。きっと古いやり方もあったと思うのですが、きちんと詳細に見てくださり、書類などの用意も丁寧に対応してくれました。MACPには心の奥底からとても感謝しています。

今回のM&Aの買い手は横川達也氏という個人投資家の方と伺っていますが、珍しいことですよね。

由起子夫人:

アドバイザーさんを介して、横川さんが買い手として手を挙げてくださったんです。横川さんは息子と同い年で、とてもお若い方なんですが、とてもしっかりしていらっしゃいます。長谷川鉄工所の社名を15年間は守ってくださるということ、そして社員もそのまま引き受けてくださるということが決め手となりました。

M&Aに際して、準備される中で懸念されていたことはありましたか。

由起子夫人:

先ほども話した通り、私の経理のやり方が本当に合っているのか分からなかったので、きちんと引き継ぎできるかとても心配でした。私の手作りの資料で大丈夫なんだろうか、何か間違ったやり方をしていないだろうかと。

でも、M&A後の引き継ぎに関してもアドバイザーさんがサポートしてくださり、分かりやすく的確な指示を出してくださったおかげで、スムーズに進みました。どこに何のデータが納められているかは、安田火災(海上保険)時代にファイリングを習っていたこともあり、その経験を生かすことができていたと思います。

M&A後に過ごす、
“ご褒美”のような時間

M&Aをされてみて、実際どうでしたか?

由起子夫人:

M&Aをするまでは、長谷川や義母が持っている株の相続が重くのしかかっていたんですが、株も譲渡できて肩の荷が下りたというのが正直なところです。

現在お仕事はどうされていますか?

由起子夫人インタビュー写真

由起子夫人:

鉄工所の仕事は引き継いで引退しました。今は、義母と長谷川の共同名義で持っているビルの管理業をやっています。もともとこれに関しての帳簿をつけたり、テナントの要望を聞いたり、家賃を請求したりという業務を副業としてやっていたのですが、M&Aの後はその仕事に専念しています。なので随分と自由な時間ができましたね。

生活の面でも何か変化があったのではないかと思います。

由起子夫人:

昔に比べると、すごくのんびり屋になっちゃったなと思います。長谷川は今も出社しているので、毎朝6時くらいに家を出るんですが、お弁当を作って渡したあとは二度寝もしちゃいますし。こんな生活はいけないと思いつつ、なかなか直らないものですね。でも平日の昼間に時間ができるようになったので、 友達とランチに行ったり、孫と触れ合ったりできる、ゆとりある時間が持てているのが嬉しいです。

趣味に使う時間なども増えましたか?

イベントでバンド演奏をする由起子夫人 ハロウィンのイベントでバンド演奏をされる由起子さん(左)

由起子夫人:

元々、友人たちとバンドを組んでいたのですが、コロナ禍になりなかなか集まれずお休みしていたのですが、チームを組んで歌やダンスをする「ショークワイア」をやらないかと声がかかり、その活動を始めました。お金を頂いてライブをするので、練習も厳しいのですが、この歳で部活のように一生懸命になれることができるのは面白いです。新しい友達もできましたし、趣味が広がりました。仕事も子育ても頑張ってきて、今60歳を過ぎて、可愛い孫たちや素敵な友人に囲まれ、今のところ体も元気で好きなことができる。すごく毎日が充実していているから、今は長いこと頑張ってきた“ご褒美の時間”なんじゃないかと思うんです。

だけど時々、経理をバリバリやっていた頃が懐かしくなるときもあります。電卓を打つのが遅くなったことを実感すると、一瞬「あの頃に戻りたいな」と思ったりとかね。でもそれぐらい、仕事をしていた時間も充実したものだったということですね。

M&A後、勉さんや会社も変わりましたか?

由起子夫人:

今は横川さんが取締役社長で、 主人は代表権のない会長という形を取っています。新しい人も入ったりとかして、新陳代謝が進んでいるんじゃないかと思います。M&A後の、最初の決算は黒字で迎えられたので長谷川もほっとしていました。何とか回っているので私も安心しています。

横川さんは他にも会社があって多忙なため、長谷川がまだ見ている部分があるんですね。それは彼の生き甲斐やモチベーションにもなっているんじゃないでしょうか。これまで通り毎日会社に行って仕事ができているのはありがたいことですね。

ご自宅でも勉さんの変化はありましたか?

由起子夫人:

前から明るい人ではありますが、背負っていた重いものを下ろせたみたいで、ほっとしているんだろうな、というのは感じます。気持ちに余裕ができているというか。あとは以前からの趣味の三味線に加えて、今は篠笛に力を入れているようですね。私とは違って和楽器に走っています。

お互いのライブや演奏会に行ったりもするのでしょうか?

由起子夫人:

呼ばないですね。それぞれ、その場所では“一人の人間”としてやっていますから。長谷川の妻である、とか、会社の経理である、というのだけが私ではないですし、長谷川も長谷川で、自分のプライベートで繋がるお友達もいるでしょうし。それぞれの世界にはお互い踏み込まず、楽しむ領域ですね。

由起子夫人ショークワイヤステージ
ショークワイヤのワンシーン

それぞれが独立して楽しんでいらっしゃって、いいご関係ですね。
それでは最後に、これから由起子さんが実現したいことをお聞かせください。

由起子夫人の取材オフショット 楽しげにお話される、取材オフショット

由起子夫人:

コロナ禍もあってしばらく海外に行けなかったのですが、国内外の行ったことのない場所へ行ってみたいです。あとはやっぱりバンドが復活したのでちゃんとライブをやりたいなと思います。きっとこれからもいろいろなことが起きるでしょうし、新しい経験や大変な壁に直面することもあると思います。でも目の前に2つの道があったら、まずはドキドキする方に行ってみるというのが私の信条なので、これからもたくさんの未知の「ドキドキ」に出会いたいですね。

担当アドバイザー
が語る、
長谷川由起子さんの
素敵ポイント

由起子夫人 取材オフショット

由起子夫人と初めてお会いしたのは、長谷川会長に直接お会いするために川口へ訪問したときです。会長とお話ししている間、由起子夫人は同じ部屋の離れた席でお仕事されていたので、どのようなお気持ちで我々の話を聞いているのかドキドキしていました。M&A業界に飛び込み、初の単独訪問だったので、昨日の事のように覚えております。

ただ3回、4回とお会いしてお話を重ねるうちに由起子夫人とプライベートのお話にもなり、ロックバンドの『KISS』がお好きだと伺ったときは、そのギャップに驚きと魅力を感じました。M&Aを進めるにあたっては、こちらがお願いした資料を常に迅速に出してくださいました。これまでいろんな企業を担当しましたが、ここまで細かくスピーディーに対応してくださる方はなかなかいらっしゃいません。由起子さんはご自身のことを“世界一経理が向いていない”とお話しされていましたが、とんでもない。素晴らしいお仕事ぶりだったことが窺えました。いつも本当に、ありがとうございます!

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