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個人事業主の事業譲渡について
個人事業には法人の株式にあたるものが無いため、事業承継をするためには、事業譲渡を行わなければなりません。その際には事業に関する資産・負債および、得意先や従業員との契約などを事業単位で切り分けて、買い手に売却することが一般的です。個人事業主が事業承継する方法は、「贈与による事業譲渡」「相続による事業譲渡」「M&Aによる事業譲渡」の中から選択することになります。
法人が事業承継を行う際には、状況に合わせてさまざまなスキームが用いられています。なかでも多くの中小企業が行っているのは、株式譲渡による事業承継です。法人の株主が持つ株式を、買い手企業に譲渡するだけで包括的に事業承継が行えるうえ、株主総会での承認や債権者保護手続きなどもいりません。
では、個人の場合はどうでしょうか。個人事業には法人の株式にあたるものが無いため、事業に関する資産・負債および、得意先や従業員との契約などを事業単位で切り分けて、買い手に売却することが一般的です。このスキームを「事業譲渡」といいます。
本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、個人事業主が事業譲渡を行うための方法や、必要な手続きなどについて解説します。はじめての方でも理解できるように、できるだけ丁寧に紹介しますので、最後までご参照ください。
個人事業主が事業譲渡を行う方法
個人事業主が事業承継をするためには、事業譲渡を行わなければなりません。その際には、以下の3種類のいずれかを選択することになります。
贈与による事業譲渡
個人事業主が事業譲渡を行う一つ目の方法は「贈与」です。贈与は、一般には、個人事業主が亡くなる前に自らの意志で、子や従業員などの第三者に対して事業を譲り渡す場合に用いられます。
具体的には、経営している事業に関する建物や機械などの資産・負債や、得意先との契約、知的財産やブランドなどを無償で与えます。
贈与する側の個人事業主に税金は課されませんが、受贈者は贈与を受けた金額に応じて、10~55%の贈与税が課されることが通常です。
贈与税は、後述の相続税と比べると税率の幅こそ同じですが、譲渡する金額が同じであれば、贈与税の税率のほうが概ね高く設定されてます。そのため、贈与による事業譲渡は、後継者の負担が大きくなる方法であるといえます。
相続による事業譲渡
個人事業主が事業譲渡を行う2つ目の方法は「相続」です。相続とは、個人事業主が亡くなったあとで、親族などが生前の事業を引き継ぐことをいいます。
個人事業主が遺言書を作成していた場合は、遺言書の内容に従い、相続人が事業を引き継ぎます。遺言書が無い場合は、法定相続人である親族のなかから誰が事業を承継するかを話し合い、承継者を決める流れです。
なお、相続による事業譲渡では、相続した金額に応じて10〜55%の税金が課されます。したがって、金額によっては、事業をスタートする際の後継者の負担が大きくなるといえます。
M&Aによる事業譲渡
個人事業主が事業譲渡を行う3つ目の方法は「M&A」です。ここでいうM&Aとは、事業主とは直接関係の無い第三者が経営する法人や個人事業主に対し、事業を譲渡することを意味します。
M&Aを行う際は一般的には仲介会社などに仲介を依頼するため、成約すると手数料を支払うことになりますが、贈与税や相続税の場合とは違い、事業譲渡を受ける側に相続税や贈与税が課される可能性は低いといえます。
加えて、買い手が支払ったのれん代や資産などは最終的に損金に算入できるため、買い手側が得られる税務上のメリットが非常に大きいといえます。また、売り手となる個人事業主側も、贈与や相続とは異なり、事業譲渡によって買い手から対価を受け取ることが可能です。
個人事業主における事業譲渡の手続きの流れ
個人事業主が事業譲渡を行う際の手続きの流れを、売り手となる個人事業主と、買い手となる個人および法人の三者の立場から、それぞれ解説します。
事業を譲渡する個人事業主側
事業を譲渡する個人事業主は廃業することになるため、以下の書類を税務署などに提出し、廃業手続きを行います。
- 【廃業届】
- 原則として事業廃止から1ヶ月以内に、税務署および都道府県税事務所に廃業届を提出します。税務署に提出する廃業届は、事業廃止から1ヶ月以内に提出しなければなりません。ただし、都道府県税事務所に提出する廃業届に関しては、提出先によって期限などが異なるため、事前に管轄の都道府県税事務所に問い合わせておくと良いでしょう。
- 【青色申告の取りやめ届出書】
- 青色申告を行っていた場合は、廃業にあたり、青色申告の取りやめ届出書を管轄する税務署へ提出します。提出期限は「青色申告を取りやめる翌年の3月15日まで」と定められています。
- 【事業廃止届】
- 消費税の課税事業者であった場合は、事業廃止届を管轄の税務署に提出します。提出期限は特にありませんが、できるだけ早く提出したほうが良いでしょう。
なお、廃業した年に一定以上の所得がある場合は、翌年に所得税の予定納税を支払わなければなりません。それが難しい場合は、「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を提出することで、廃業後の予定納税の支払いを免除(もしくは減額)してもらうことができます。
また、提出後は譲受先が事業を継続しやすいよう、各取引先などに事業譲渡の説明をしておくと良いでしょう。
事業を譲受する側(個人の場合)
事業を譲り受ける側が「個人」の場合は、以下の書類を各所に提出します。
- 【開業届】
- 管轄の税務署に、事業を譲り受けてから1ヶ月以内に届け出を行います。
- 【青色申告承認申告書】
- 管轄の税務署に、事業を譲り受けた年の翌年3月15日までに提出します。
- 【青色事業専従者給与に関する届出書】
- 家族に給料を支払う場合、給料を経費にする年の3月15日までに届け出が必要です。
- 【雇用契約書】
- 従業員の雇用を引き継ぐ場合は、改めて従業員との間で雇用契約を締結します。
個人が事業を譲り受ける場合は、事業に必要な資産を個人で譲り受け、その事業を承継します。ただし、取引先との契約、店舗の賃貸借契約などは、個別に契約し直さなければなりません。
また、従業員を継続して雇用する場合も、個別に雇用契約を結び直すことが必要です。なお、許認可は事業譲渡で引き継ぐことができないため、必要であれば改めて申請を行いましょう。
事業を譲受する側(法人の場合)
個人事業主から「法人」へ譲り渡す場合も、上述の個人のケースと同様に、資産・負債やさまざまな契約を、法人へ個別に譲渡していきます。
譲渡の際は、個人事業主と法人との間で、必要事項を記載した「事業譲渡契約書」を締結します。契約書の記載内容には、法令などで定められたルールがあるわけではありませんが、譲渡日や金額、守秘義務や表明保証に関する条項などを記載するのが一般的です。
ただし、内容に不備があると譲渡後にトラブルが生じる恐れがあるため、何を記載するかについては、十分に検討しておかなければなりません。可能であれば、専門家の協力を仰ぎながら進めることを推奨します。また、許認可は個人事業主から法人へ引き継がれないため、新たに許認可を求める場合は、再申請が必須です。
個人事業主の事業譲渡でかかる税金
個人事業主が事業譲渡を行った際の税金は、贈与・相続・M&Aの場合、以下のようにそれぞれ異なります。
贈与による事業譲渡でかかる税金
個人事業主が贈与によって事業譲渡を行う場合は、110万円の基礎控除を差し引いた金額に対して贈与税が課されます。
贈与税を支払うのは贈与を受けた人ですが、贈与を受けた対象者が「18歳以上の子や孫など直系卑属の場合」と「そうでない場合」とでは、税率が異なります。
通常、贈与税の税率は、先述のとおり10〜55%です。「18歳以上の子や孫などの直系卑属」以外に、贈与による事業譲渡を行った場合は、以下の一般税率表に基づき贈与税を算出します。
一般税率
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | なし |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
参照:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
「18歳以上の子や孫などの直系卑属」に対して、贈与による事業譲渡を行った場合は、以下の特例税率表に基づき贈与税を算出します。
特例税率
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | なし |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
参照:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
なお、贈与税は贈与を受けた翌年の確定申告で、申告および納税を行います。贈与する財産に土地や建物のような高額な資産が含まれている場合は、前事業者との間で「使用貸借契約」を結び、前事業者の名義のままで後継者が借りるだけの形をとっておくと、贈与税の負担が軽くなることがあります。
また、個人版事業承継税制を活用すると、贈与税の納税猶予が可能になり、最終的には納税自体を免除されることも望めるでしょう。
相続による事業譲渡でかかる税金
相続によって譲り受けた財産から、債務などを控除した金額が「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」で算出した基礎控除を超えている場合は、相続税が課されます。
下図をご覧いただけばおわかりのように、相続した財産が増えれば増えるほど税率も累進的に上がり、最高税率は55%と定められています。相続税は、亡くなった日から10ヶ月以内に申告および納付をしなければなりません。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
参照:No.4155 相続税の税率|国税庁
M&Aによる事業譲渡でかかる税金
個人事業主が事業譲渡をした場合、買い手に対して相続税や贈与税などは課されませんが、売り手である個人事業主に関しては、譲渡で得た譲渡益に対して所得税が課されます。
その際、譲渡する資産の内容によって、総合課税となる場合もあれば、分離課税となる場合もあります。具体的には、土地・建物や株式などは分離課税となり、他の所得とは別に税額を計算することが一般的です。
これに対し、分離課税の対象外に該当する資産の譲渡によって得た売却益は総合課税となり、他の所得と合算して税額が決まるため、他の所得次第で税率が高くなる恐れがあります。
個人事業主が事業譲渡を行う際の注意点
個人事業主が事業譲渡を行う場合、注意しなければならない点がいくつかあります。なかでも特に重要なのは、以下の5点です。
従業員の継続雇用
事業譲渡では、従業員との雇用契約を売り手から買い手へ譲渡することはできません。したがって、買い手が従業員を継続雇用したいと考える場合は、売り手がいったん契約を解除したあとで、従業員と雇用契約を再び結び直さなければなりません。
ただし、事業譲渡に伴い、売り手から買い手へ転籍する労働者の権利は労働契約承継法によって守られているため、労働条件は基本的に従来に類する内容を引き継ぐことが求められます。
取引先との関係継続
個人事業では、個人事業主と取引先との人間関係によってビジネスが成り立っていることも少なくありません。そのため、事業譲渡によって経営者が変わることで、取引先との取引が終了してしまう可能性も考えられます。
そうなると、事業譲渡後に売上が大きく落ち込み、事業を継続するのが難しくなってしまいます。こうした事態を防ぐためには、取引先への挨拶や説明などを事業譲渡元を伴うなどして積極的に行い、事業譲渡に対する理解を得たうえで、改めて関係を構築していくことが大切です。
建物の賃貸借契約
飲食店や美容室などを居抜きで事業譲渡する場合、設備や備品などは問題ありませんが、当該物件の賃貸借契約は、売り手から買い手へ譲渡できません。
したがって、事業を承継した買い手が、改めて店舗の貸主と賃貸借契約を結び直さなければならない点に留意が必要です。
契約締結の審査が必ずしも通るわけではないため、こうした居抜き物件を譲渡する場合は、事前に不動産会社などに連絡を取り、必ず確認しておきましょう。
資産の引き継ぎ
事業譲渡で資産を引き継ぐ場合は、譲渡前に資産状況をそれぞれ精査する必要があります。確認する内容については資産ごとに異なりますが、主要な資産については概ね、下記のチェックを行います。
- 【建物や機械などの有形固定資産】
- 減価償却が適切に行われているか
- 【有価証券】
- 基準日の価格
- 【敷金や預り保証金(賃貸借業の場合)】
- 内訳と残高が合っているか
- 【現金預金】
- 帳簿上の残高と実際の残高が一致しているか
自己破産時期の考慮
事業譲渡とあわせて自己破産を行う際は、自己破産の申請時期に注意しなければなりません。自己破産後もしくは自己破産直前に事業譲渡を行うと、財産の隠ぺいとみなされ、事業譲渡そのものが否認されてしまう恐れがあるからです。
否認されてしまうと、破産管財人の判断によっては、事業譲渡の否認とあわせて、事業に必要な資産も処分されてしまうことが考えられます。
したがって、自己破産を検討している場合は早めに自己破産申請を行うと共に、破産管財人に対してあらかじめ、事業譲渡の必要性を説明しておくほうが良いでしょう。
まとめ
個人事業主が事業譲渡を行う場合、贈与・相続・M&Aの3つが選択肢となります。どちらを選択する場合でも、法律や税制について適切に対処しなければなりません。
贈与や相続に関しては、事業を承継する買い手側が贈与税や相続税を負担する必要があります。そのため、譲渡する内容によっては、高額な税金を支払わなければなりません。
これに対しM&Aであれば、譲渡する個人事業主が対価を受け取れるだけでなく、譲り受けた側も基本的に贈与税・相続税を負担する必要が無いため、多くの個人事業主によって事業譲渡の手段として活用されています。
いずれにしても、どのスキームを選択するかは状況によって変わるため、最善の方法を選べるよう、事前に十分な検討が必要といえるでしょう。
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よくある質問
- 個人事業主の事業譲渡とは何ですか?
- 個人事業主の事業譲渡とは、法人のように株式ごと包括承継するのではなく、事業に関する資産・負債や得意先・従業員との契約などを事業単位で切り分けて、第三者に売却・承継する方法を指します。個人事業には法人株式に相当するものがないため、建物や機械設備、在庫、取引契約、知的財産・ブランドなどを個別に移転していくことが一般的です。
- 個人事業主が事業承継する主な方法(贈与・相続・M&A)の違いは何ですか?
- 個人事業主の事業承継方法は大きく「贈与」「相続」「M&Aによる事業譲渡」の3つに分けられます。贈与は、生前に子どもや従業員などに無償で事業の資産・負債や契約関係を引き継ぐ方法で、贈与を受けた側に10〜55%の贈与税が課されます。相続は、事業主が亡くなった後に親族などが事業を引き継ぐ方法で、遺言書や相続人同士の話し合いにもとづき承継者を決め、基礎控除額を超える部分に10〜55%の相続税がかかります。M&Aによる事業譲渡は、第三者の個人や法人に事業を有償で譲渡する方法で、買い手側には原則として贈与税・相続税は発生せず、売り手は対価を受け取り、買い手はのれんや取得資産を損金算入できるなど税務上のメリットも期待できます。
- 事業を譲渡する側の個人事業主は、どのような手続きが必要ですか?
- 事業を譲渡する個人事業主は、事業をやめることになるため「廃業手続き」が必要です。具体的には、事業廃止から1ヶ月以内を原則として税務署および都道府県税事務所へ廃業届を提出し、青色申告をしていた場合は「青色申告の取りやめ届出書」を翌年3月15日までに提出します。消費税の課税事業者であれば、「事業廃止届」を税務署に提出します(期限の明確な定めはありませんが早めが望ましいとされています)。また、廃業年に一定以上の所得があると翌年に予定納税が生じ得るため、支払いが難しい場合は予定納税額の減額申請も検討します。これらの手続きに加え、譲受先が事業を継続しやすいよう、取引先や関係者への事業譲渡の説明・挨拶も重要です。
- 事業を譲り受ける側が個人の場合、どのような手続きが必要ですか?
- 個人として事業を譲り受ける場合は、新たな個人事業の開業手続きが必要です。具体的には、管轄税務署へ1ヶ月以内を目安に「開業届」を提出し、青色申告を利用する場合は事業を譲り受けた年の翌年3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出します。家族に給与を支払い経費計上したい場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を該当年の3月15日までに提出します。また、譲渡元の従業員を引き継ぐ場合は、従業員一人ひとりと改めて雇用契約書を締結し直す必要があります。事業に必要な資産や取引先との契約、店舗の賃貸借契約なども、個別に自分名義で契約し直し、必要な許認可は新たに申請します。
- 事業を譲り受ける側が法人の場合、どのようなポイントに注意すべきですか?
- 譲り受け側が法人の場合も、資産・負債や契約を一括ではなく個別に法人へ移転していく点が重要です。まず個人事業主との間で、譲渡対象の資産や負債、契約関係、のれん、譲渡日や金額、守秘義務、表明保証などを整理した「事業譲渡契約書」を締結します。条文の内容に法定フォーマットはありませんが、記載が曖昧だと譲渡後のトラブルにつながるため、専門家の助言を得て慎重に作成することが望まれます。また、許認可は個人から法人に自動承継されないため、必要な許可・登録は法人名義で新たに取得し直す必要があります。
- 個人事業主の事業譲渡では、どのような税金が発生しますか?
- 個人事業主の事業譲渡では、方法によって課税関係が異なります。贈与による事業譲渡の場合、110万円の基礎控除を差し引いた価額に対して贈与税がかかり、一般税率・特例税率ともに10〜55%の累進課税となります。相続による事業譲渡では、相続財産から債務等を差し引いた課税価格が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除額を超えると、10〜55%の相続税が課税され、被相続人の死亡から10ヶ月以内に申告・納付が必要です。M&Aによる事業譲渡では、買い手側に相続税・贈与税は発生せず、売り手である個人事業主に、譲渡による利益部分に対して所得税が課されます。譲渡資産の内容によっては土地・建物などが分離課税、その他の資産は総合課税となる場合があります。
- 個人事業主が事業譲渡を行う際の主な注意点は何ですか?
- 個人事業主の事業譲渡では、特に「人・取引・契約・資産」の4点に注意が必要です。従業員との雇用契約は譲渡では引き継げないため、いったん旧事業主との契約を終了させたうえで、譲受側が従業員それぞれと新たに雇用契約を締結し、労働条件は従前に類するものを維持する必要があります。取引先との関係も、経営者が変わることで取引が終了するリスクがあるため、事業譲渡の趣旨や体制を丁寧に説明し、関係継続の理解を得ることが重要です。店舗物件については賃貸借契約をそのまま譲渡できないため、新たに貸主と賃貸借契約を結び直し、審査も改めて受ける必要があります。また、建物・機械・預金・敷金などの資産は、減価償却状況や残高の突き合わせなどを通じて事前に精査し、譲渡内容を明確にしておくことが求められます。
- 事業譲渡とあわせて自己破産も検討している場合、どのタイミングに注意すべきですか?
- 事業譲渡と自己破産を併用する場合は、自己破産の申請タイミングに特に注意が必要です。自己破産手続きの直前や開始後すぐに事業譲渡を行うと、財産隠しとみなされて破産管財人から否認されるリスクがあります。否認されると事業譲渡自体が無効と扱われ、譲渡した資産が破産財団として回収される可能性もあります。そのため、自己破産を検討している場合は早めに破産申立てを行い、破産管財人に対して事業譲渡の必要性・合理性を事前に説明して理解を得ておくことが重要です。
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