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事業承継における融資について
事業承継で活用できる融資とは、株式・事業資産の取得や相続税対応、PMIや運転資金など多様な資金需要に対し、民間銀行・日本政策金融公庫・信用保証協会・自治体制度から調達する手段の総称です。制度別に金利・期間・要件が異なるため、計画策定→窓口相談→申込・審査を踏まえ、返済計画と補助金・ファンド併用を設計する重要性があります。
事業承継では、自社株式や事業用資産の取得、相続税や贈与税の支払い、さらには承継後の経営を安定させるための運転資金など、まとまった資金が必要になる場面が少なくありません。これらの資金は、融資を利用して調達するのが一般的です。
※なお、この記事の内容は2025年1月時点の情報に基づいています。具体的な条件については各窓口で最新情報をご確認ください。
本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、事業承継で利用できる融資の種類やメリットを比較、利用時の手順、成功のポイントなどについて解説します。
事業承継について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
事業承継で利用できる4つの融資
事業承継において後継者は、株式の取得や設備投資、運転資金の確保など、さまざまな資金ニーズに対応する必要があります。
その際、公的機関や金融機関が提供する融資制度を活用すれば、承継時の負担を軽減しながら円滑に事業を引継ぐことが可能です。
なお、事業承継で利用できる融資は、主に以下の4つです。
| 種類 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| 民間銀行の融資 | 事業承継全般の資金 (株式取得・運転資金など) |
|
| 政府系金融機関(日本政策金融公庫) | 株式取得、第二創業、PMI、設備資金、運転資金 |
|
| 信用保証協会の保証付き融資 | 株式取得、借り換え、設備・運転資金 |
|
| 自治体の融資制度 | 承継後の設備投資・運転資金 |
|
民間銀行による融資制度
事業承継に関する融資制度は、公的なものだけではありません。民間銀行でも、事業承継に特化した融資制度を提供しており、一般的な融資に比べて、事業承継を目的とした融資は審査が通りやすい傾向にあります。
ただし、金利や返済期間、担保の有無などの条件は金融機関ごとに異なり、銀行の規模やビジネスモデルによっても支援の内容は異なります。具体的な条件や制度内容を知りたい場合、まずは身近な金融機関に相談してみると良いでしょう。
なお、一般的にメガバンクは大企業向けにコンサルティングを含めた支援を行うのに対し、地方銀行や信用金庫は、公的機関と連携して中小企業の承継支援を中心とするサービスを展開しています。
日本政策金融金庫が支援する融資
日本政策金融公庫は、国が全額出資して設立された公的金融機関として、中小企業の事業承継を支援するための融資を提供しています。なかでも「事業承継・集約・活性化支援資金」は、後継者による株式取得や事業譲渡に活用できる制度です。
このあとの項目では、融資の対象となる要件や、制度の具体的な内容・条件について、詳しく見ていきましょう。
融資対象
「事業承継・集約・活性化支援資金」の融資対象となるのは、以下の要件のうち、いずれかを満たす中小企業やその後継者です。
- 中期的な事業承継を計画しており、現経営者と後継者(候補者を含む)が共同で事業承継計画を策定している事業者
- 安定的な経営権の確保などにより、事業の承継もしくは集約を実施する事業者、またはその対象となる事業者
- 事業の承継もしくは集約を契機に、新たな第二創業(経営多角化や事業転換、新市場進出など)を計画している事業者(計画実施後概ね5年以内の事業者を含む)、新規事業に取り組む事業者(取り組み後概ね5年以内の事業者を含む)、またはPMI(Post Merger Integration:合併後の統合プロセス)に取り組む事業者
- 中小企業経営承継円滑化法に基づく認定を受けた中小企業者の代表者、認定を受けた個人である中小企業者、または認定を受けた事業を営んでいない事業者
- 事業承継にあたり、経営者個人保証の免除などを金融機関に申し入れた結果、融資を受けることが困難になった事業者であって、日本政策金融公庫が融資にあたり経営者個人保証を免除する事業者
これらの要件に該当する事業者であれば、「事業承継・集約・活性化支援資金」を通じて、承継に必要な資金を、計画的かつ安定的に調達することが可能です。自社の状況や将来の経営方針に応じて、適切なタイミングでの活用を検討すると良いでしょう。
融資の内容・条件
| 融資限度額 | 14億4千万円 |
|---|---|
| 利率 | 最大2.5% (企業の状況に応じて特別利率または基準利率が適用) |
| 返済期間 |
|
本制度は、地域経済の活性化を目的としており、利率の上限は2.5%に設定されています。条件を満たせば、基準利率よりも低い「特別利率」の適用も可能です。
返済期間は資金使途により異なり、設備資金は最長20年、運転資金は最長10年です。据置期間はいずれも最大5年となっています。融資限度額は最大14億4千万円と高額で、規模の大きな承継にも対応できます。また、担保の有無に関しては個別に相談となっており、状況に合わせた柔軟な対応が期待できるでしょう。
信用保証協会の支援制度
信用保証協会では、事業承継に伴う資金調達を支援するため、保証制度を通じて金融機関からの融資を後押ししています。なかでも、経営者保証が不要となる特別な制度が用意されていることが特徴です。
事業承継特別保証
事業承継特別保証は、経営者保証を不要とする仕組みが特徴です。また、既存の経営者保証付き借入金についても、借換により保証を外すことが可能な制度として注目されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資対象 |
|
| 資金用途 | 事業資金 |
| 融資限度額 | 2億8,000万円(組合などは4億8,000万円) |
| 融資期間 | 10年以内(据置期間1年以内を含む) |
事業承継サポート保証
事業承継サポート保証とは、持株会社を活用した事業承継に対応するための保証制度のことです。この制度は、持株会社が事業会社の株式を買い取るための資金調達に活用できます。
事業承継計画書に基づいて株式の集約を行う場合に利用できることから、株式取得に特化した制度として非常に有効です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資対象 | 事業承継計画書に基づき、事業会社の株式を集約化するための資金を必要としている持株会社 |
| 資金用途 | 事業会社の株式取得資金 |
| 融資限度額 | 2億8,000万円(無担保8,000万円を含む) |
| 融資期間 | 15年以内(据置期間2年以内を含む) |
経営承継関連保証
経営承継関連保証とは、中小企業のスムーズな事業承継をサポートする制度です。事業承継を予定または実施する中小企業に対して、株式の取得や資金の借り換えなどを支援します。対象となるのは県知事の認定を受けた事業者です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資対象 | 事業承継を行うため、県知事の認定を受けた中小企業者(会社または個人) |
| 資金用途 | 県知事が認定した他の中小企業者の経営の承継に必要な資金 |
| 融資限度額 | 2億8,000万円(無担保8,000万円を含む) |
| 融資期間 |
|
特定経営承継関連保証
特定経営承継関連保証とは、後継者が第三者から株式などを取得する際に必要となる資金の調達に際し、債務者を保証する制度です。この保証制度の対象は、県知事の認定を受けた個人となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資対象 | 事業承継に伴い、事業活動の継続に支障が生じているとして、県知事の認定を受けた中小企業者の代表者個人 |
| 資金用途 | 県知事が認定した経営の承継の円滑化に必要な資金 |
| 融資限度額 | 2億8,000万円(無担保8,000万円を含む) |
| 融資期間 |
|
経営承継準備関連保証
経営承継準備関連保証は、M&Aを通じて他の中小企業の承継を行う中小企業者(会社または個人)を対象に、県知事認定のもとで必要な資金の融資を保証する制度です。
融資対象や融資期間などの詳細は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資対象 | 事業承継を行うため、県知事の認定を受けた中小企業者(会社または個人) |
| 資金用途 | 県知事が認定した他の中小企業者の経営の承継に必要な資金 |
| 融資限度額 | 2億8,000万円(無担保8,000万円を含む) |
| 融資期間 |
|
特定経営承継準備関連保証
特定経営承継準備関連保証とは、事業を営んでいない個人(例えば従業員など)が、県知事の認定を受けて事業を承継する際に利用できる保証制度です。株式の取得など、事業承継に必要な資金の融資を受ける際に活用され、EBO(従業員買収)にも対応しています。
なお、融資対象や融資期間などの詳細については、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資対象 | 事業の承継について県知事の認定を受けた事業を営んでいない個人 |
| 資金用途 | 県知事が認定した他の中小企業者の経営の承継に必要な資金 |
| 融資限度額 | 2億8,000万円(無担保8,000万円を含む) |
| 融資期間 |
|
経営承継借換関連保証
経営承継借換関連保証は、経営者保証付きの既存借入金を、保証不要の融資に借り換えるための制度です。
なお、この保証制度を活用するためには、以下の要件を満たさなければなりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資対象 |
県知事の認定を受けた3年以内に事業承継を予定している中小企業者で、次の1から4のすべての要件を満たす法人
|
| 資金用途 | 認定を受けた中小企業者の経営の承継に必要な資金のうち、認定の日から経営の承継の日までの間における借換資金(中小企業者の代表者が保証債務を負う借入に係るもの) |
| 融資限度額 | 2億8,000万円(無担保8,000万円を含む) |
| 融資期間 |
|
地方自治体の融資制度
各地方自治体でも、地域内の中小企業が円滑に事業承継を行えるように、独自の融資制度を設けています。ここでは、2025年12月3日時点の情報をもとに、東京都内の自治体が主体となって実施している代表的な制度を紹介します。
| 融資制度 | 融資限度額 | 融資期間 |
|---|---|---|
| 事業承継支援資金 (立川市) |
2,000万円 | 7年以内(据置期間1年を含む) |
| 特別融資 事業承継支援融資 (荒川区) |
1,500万円 |
|
| 事業承継資金融資 (板橋区) |
5,000万円 | 10年以内(据置1年以内含む) |
| 事業承継支援資金 融資あっ旋制度 (品川区) |
2,000万円 | 7年以内(内据置月数6ヶ月) |
| 事業承継支援資金 (江東区) |
2,000万円 | 9年以内(据置期間1年を含む) |
| 事業承継資金(一般) (町田市) |
1,500万円 | 10年以内(据置期間1年以内を含む) |
| 事業承継資金(承継者個人) (町田市) |
1,500万円 | 10年以内(据置期間1年以内を含む) |
| 事業承継支援融資 (葛飾区) |
3,000万円 | 10年以内(据置期間は1年以内) |
事業承継で融資を活用するメリット
事業承継で融資を活用すると、資金面だけでなく今後の経営体制づくりにもさまざまなメリットがあります。そのなかでも特に重要なのが、以下の3つです。
増資をせずに資金調達が可能
法人が、他の事業承継の対象となる株式や事業資産を取得する際の資金調達には、融資のほかに、自社の株式を発行する方法があります。しかし、自社株式を発行すると持株比率が下がり、経営陣として自社の経営に対する影響力が低下するリスクがあります。
持株比率が50%を切ってしまうと、株主総会での議決権が少なくなるため、経営権を維持することが難しくなります。その点、融資であれば株式の増資は不要で、持株比率が下がるリスクもありません。
金融機関からのアドバイスが受けられる
金融機関は、企業の経営状況を客観的に分析できるため、事業承継についての的確なアドバイスを受けられるというメリットがあります。相続や贈与によって事業承継を行う場合は、節税対策について相談することも可能です。
特に中小企業の場合は、金融機関との関係が非常に大切になります。日頃から、担当者とのつながりを作っておきましょう。
新規事業の資金も確保できる
事業承継を行う際に融資を受けることで、自社の事業展開を見直し、新たな挑戦をするための資金を確保できます。
例えば、融資で得た資金を設備投資に活用することで、既存事業の効率化や新規事業の立ち上げといった新たなチャレンジを行うことが可能です。
また、事業承継ローンは、設備投資や新規事業開拓などの使途に活用できる場合もあります。新たに設備投資を行うと同時に経営の効率化も期待でき、新規事業を始めるための投資にも役立てられます。
事業承継で融資を利用する際の流れ
事業承継の融資を利用する際の流れは、次のとおりです。
-
専門家への相談
事業承継の融資を利用する前に、まずは専門家に相談します。専門家は事業承継のプロセスや融資の詳細についてアドバイスを提供できます。 -
事業承継計画の策定
専門家のアドバイスをもとに、具体的な事業承継計画を策定します。この計画には、事業承継のタイミングや方法、必要な資金等が含まれます。 -
事業承継ローンの窓口への相談
計画ができたら、次に事業承継ローンの窓口へ相談に行きます。窓口では、融資の詳細や必要な書類等について説明を受けます。 -
事業承継ローンの申し込み
必要な書類を揃えて、事業承継ローンの申し込みを行います。 -
審査・貸付契約
申し込み後、金融機関によって審査が行われます。審査が通れば、貸付契約を結びます。 -
返済
貸付契約が結ばれたら、指定された期間と方法で返済を行います。
融資を活用して事業承継を成功させるポイント
事業承継で融資を利用する際は、資金繰りの安定や承継プロセスの遅延を避けるために、いくつか意識しておきたいポイントがあります。特に重要なのは、以下の3点です。
無理のない返済計画を立てる
事業承継のために融資を利用する際は、返済負担を正しく見積もることが欠かせません。融資には元金に加えて利息の支払いが伴い、返済期間が長期化するほど総支払額が増加します。
信用保証協会の保証制度を利用する場合には保証料も発生するため、当初の想定より負担が大きくなるケースもあります。さらに、融資の種類によっては経営者の個人保証を求められることがあり、返済が滞った場合には個人資産に影響がおよびかねません。
そのため、金融機関ごとに異なる返済条件や保証の要否を早い段階から確認し、無理の無い返済計画を立てることが重要です。
早めの相談で審査の遅れや不成立を防ぐ
事業承継に向けて融資を利用する場合は、できるだけ早い段階で金融機関へ相談することが大切です。一般的に、融資の申し込みから実行までには、書類準備や審査を含めて1〜2ヶ月程度かかります。支払期限が迫ってから動き始めると、必要な資金が間に合わない可能性があります。
また、過去の借入状況や返済履歴、売上の推移などを踏まえた審査の結果、融資が不成立となる可能性も考慮しなければなりません。代替策も視野に入れながら、スケジュールに余裕を持って相談を進めることが、事業承継を滞らせないためのポイントです。
融資以外の選択肢も併せて検討する
事業承継に必要な資金を確保する際は、融資だけに頼らず、他の支援策も併せて検討することが大切です。代表的な制度として、国が実施する事業承継・引継ぎ補助金があり、承継を契機とした設備投資や経営革新、専門家活用費用などに幅広く活用できます。
また、事業承継ファンドを活用する方法も有効です。ファンドが株式を取得し、経営改善や成長支援を行ったうえで企業価値を高め、出口戦略を図る仕組みは、後継者不在の企業にとって現実的な選択肢となります。
これらの制度と融資を適切に組み合わせることで、資金負担を抑えつつ、承継後の成長投資に余裕を持たせることが可能です。
まとめ
事業承継の資金ニーズは多岐にわたり、最適な融資は企業の状況で変わります。
公庫は長期・低金利で承継・第二創業・PMIまで幅広く、保証協会は経営者保証の負担軽減や株式集約に対応、自治体は地域向けに手厚く、民間銀行は柔軟な条件調整が強みです。
計画策定→窓口相談→申込・審査の基本フローに沿い、利息・保証料・据置まで見込んだ無理のない返済計画、早期相談、補助金・ファンド等の併用で資金負担を抑制。本文の比較軸とチェックポイントを活用し、自社に適した組み合わせで承継とその後の成長投資を着実に進めましょう。
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よくある質問
- 事業承継では、どのような場面で融資が必要になりますか?
- 株式や事業資産の取得、事業譲渡の対価支払い、承継後の運転資金・設備資金、既存借入の借換、PMIや新規事業投資などで資金需要が生じます。
- 融資を利用して事業承継を進めるメリットは何ですか?
- 持株比率を維持したまま資金調達でき、金融機関から計画・税務面の助言を得やすく、成長投資(設備・新規事業)にも充当できます。
- 日本政策金融公庫の支援は誰が利用できますか?
- 事業承継計画を策定中・予定/実施企業、第二創業・新規事業・PMIに取り組む企業、経営承継円滑化法の認定先、個人保証免除申入れで通常融資が困難な先等が対象です。
- 信用保証協会の事業承継向け制度には何がありますか?
- 事業承継特別保証、事業承継サポート保証、経営承継関連保証、特定経営承継関連保証、経営承継準備関連保証、特定経営承継準備関連保証、経営承継借換関連保証です。
- 民間銀行の事業承継融資の特徴は?
- 金利・期間・担保など条件は金融機関ごとに異なります。メガバンクは大企業向けコンサル中心、地銀・信金は公的制度と連携し中小企業支援に注力する傾向です。
- 事業承継ローンの利用フローは?
- 専門家へ相談→事業承継計画の策定→融資窓口で相談→申込→審査・契約→返済。書類準備と審査で1〜2ヶ月かかることがあります。
- 承継時の融資で特に気をつける点は?
- 利息・保証料・据置を踏まえた無理のない返済計画、早期相談で審査遅延を回避、個人保証の要否や代替策確認、補助金やファンドの併用検討が重要です。
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