零細企業とは? 概要やM&Aにおけるメリット、注意点まで簡単に解説

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零細企業について

零細企業とは、法的明確化はないものの慣例的に資本金1,000万円以下・従業員5人以下(製造業等は20人以下)の小規模事業者を指し、日本の企業の大半を占めます。経営者の高齢化と後継者不足により廃業リスクが高まる中、M&Aによる事業承継が注目され、株式譲渡と事業譲渡が主要手法です。売り手・買い手のメリットと実務上の注意点が重要です。

零細企業は資本金1,000万円以下・従業員数5人以下(製造業などでは20人以下)を基準とする小規模事業者で、国内企業の約85%を占めています。一方で、経営者の高齢化と後継者不足が進み、雇用や経済への影響が懸念されています。こうした中、事業を止めずに次世代へつなぐ選択肢としてM&Aが注目され、零細企業では株式譲渡と事業譲渡の活用が広がっています。

本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、零細企業の定義や中小企業との違い、国内に占める割合を押さえたうえで、M&Aの動向と具体的手法を解説。売り手・買い手それぞれのメリットと実務上の注意点をまとめ、事業承継と企業成長の検討に必要なポイントをわかりやすく整理します。


零細企業とは

零細企業とは、法的に明確な定義はされていませんが、慣例的には、資本金1,000万円以下で従業員数が5人以下など、中小企業のなかでも小規模なものを指します。中小企業基本法において、零細企業に該当するのは「小規模企業」の区分です。
従業員が何人かといった具体的な基準は、中小企業基本法によって業種ごとに定められています。例えば、卸売業・小売業などの商業およびサービス業では従業員5人以下、製造業・建設業・運輸業・その他の業種(宿泊業や娯楽業など)では従業員20人以下が該当します。
これらの数値は中小企業基本法の政令で定められており、将来的に政府が政令改正を行うことで見直される可能性があります。

大企業・中小企業との違い

零細企業と大企業・中小企業との違いは、次の通りです。

先述のように、零細企業と大企業・中小企業とは、資本金や従業員数の点で大きく異なります

ベンチャー企業との違い

零細企業とベンチャー企業は、共に法的な定義がないビジネス用語ですが、その対象が違います。
零細企業は、資本金や従業員数などの企業規模で区分し、小規模企業を指す名称です。一方、ベンチャー企業とは、新しいアイデアや独自的なスキルでビジネスを展開し、成長を目指す企業を指します。
ベンチャー企業も初期においては、資本金が低額で従業員数が少ないことから、零細企業に該当するでしょう。ただし、将来的にビジネスの拡大を目指して従業員を増やしていく点では、異なる思想を持っています。

零細企業が全体に占める割合

区分 2016年(企業全体に占める割合)
中小企業・小規模事業者 357.8万者
(99.7%)
うち小規模事業者 304.8万者
(84.9%)
大企業 1万1157者(0.3%)
全規模(大企業と中小企業・小規模事業者の合計) 358.9万者

引用:中小企業・小規模事業者の数(2016年6月時点)の集計結果を公表します|中小企業庁

零細企業が全体に占める割合を、上記、中小企業庁発表のデータをもとに検証すると、国内企業の全体数が358.9万者である一方で、小規模事業者数は304.8万者であり約84.9%を占めることがわかります。小規模事業者は零細企業に該当するため、つまりは、8割以上の企業が零細企業であるといえるでしょう。
このことから、零細企業は日本経済を支え、多様な経済社会の創出に寄与しているといえます。しかし、それと同時に、その衰退が日本経済全体に大きな影響を与えることにも留意しなければなりません。

零細企業におけるM&A

国内における零細企業は、経営者の高齢化に伴う後継者不足が課題となっており、廃業に至るケースが少なくありません。その打開策として注目されているのが、M&Aによる事業承継です。
ここでは、零細企業におけるM&Aの動向や、M&Aを実施する方法を解説します。

零細企業におけるM&Aの動向

近年の零細企業におけるM&Aの動向は、増加傾向にあります。その理由として挙げられるのが、零細企業を含む中小企業における経営者の高齢化と、深刻化する後継者不足です。
経済産業省 近畿経済産業局、および、中小企業庁の調査によると、2025年における経営者約381万人のうち約245万人が70歳以上となり、その半数を占める約127万人が後継者未定との回答をしています。この数は日本企業全体の約3分の1に該当し、現状を放置すると廃業が急増、2025年頃までの10年間の累計で、約650万人に及ぶ雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性が示されています。
そこで、打開策として注目されているのが零細企業におけるM&Aです。

全国47都道府県に設置される「事業承継・引継ぎ支援センター」での支援実績も年々増加しており、2011年の発足から2022年にかけて、約10万件の相談と約8,000件の事業引継ぎを実現しています。
今後も後継者不足は続くことが予想されるため、M&Aは零細企業の存続において重要な役割を果たすといえるでしょう。

M&Aを実施する方法

零細企業が事業承継のためにM&Aを実施する主な方法に、「株式譲渡」と「事業譲渡」が挙げられます。

零細企業におけるM&Aのメリット

零細企業におけるM&Aの実行に際しては、売り手・対象企業、買い手企業共にメリットが生じます。

売り手のメリット

零細企業がM&Aを実行するメリットは、次の2点です。

  • 事業承継を実現できる(売り手企業)
  • 事業展開や成長の機会を得られる(対象企業)

先述の通り、零細企業の多くが後継者不足の課題を抱えています。後継者が不在であっても、M&Aの実行により事業の継続はもちろん、これまで築いてきたブランドや顧客基盤、従業員を維持することも可能です。
また、零細企業は資本規模が乏しいことから事業を拡大する場合、新たな資本投下が必要となります。M&Aを通じて経営基盤の安定した企業と統合することで資本や経営リソースを獲得でき、将来的な事業展開や成長が促進される点もメリットといえるでしょう。

買い手のメリット

零細企業に対するM&Aにおいて、買い手企業のメリットは次の2点です。

  • 新たな顧客基盤の獲得
  • 人材育成の手間とコストの削減

M&Aにより、これまで買い手企業が関与していなかった市場や顧客層へのアクセスが可能になります。例えば、自社とは異なる業界の零細企業の買収によって、新たな顧客基盤を取得する機会が生まれるでしょう。地域との結びつきが強い零細企業を買収する場合は、その地域における強固な顧客基盤を獲得できるため、ビジネス展開のきっかけにもなります。
買収によって、高度なスキルや専門知識を持つ従業員を得られる点もメリットです。新規事業や成長に必要となる優秀な人材を迅速に確保できるので、採用・育成にかかる時間や手間、コストの削減につなげられるでしょう。

零細企業におけるM&Aの注意点

ここからは、零細企業におけるM&Aを実行する際の売り手側、買い手企業にとっての注意点を解説します。M&Aを成功に導くためにも、注意点に留意して手続きを進めましょう。

売り手の注意点

売り手側が注意したいポイントは、次の2点です。

  • 従業員など関係者への情報共有
  • 買い手企業の選定における条件の明確化

売り手にとって、特に注意したいのが、従業員をはじめとする関係者への情報共有です。従業員数が少ない零細企業では人と人との結びつきが強いため、M&Aにより経営権が移行することに対して、従業員が不安を抱いたり業務へのモチベーションが低下するリスクが否定できません。このようなリスクを放置しておくと離職に発展しかねないため、不安を解消できるよう、積極的な情報提供やコミュニケーションを図りましょう。
また、零細企業にはのれんなど、目に見えない独自の価値を有するケースもあります。企業価値を見極め、妥当な価格で自社を売却できるように、買い手企業を選ぶ際の譲れない条件を明確化しておくことも大切です。

買い手の注意点

零細企業に対するM&Aにおいて、買い手企業が注意したいポイントは次の2点です。

  • デューデリジェンスの徹底
  • 対象企業の適正な価値評価

零細企業を対象とする小規模なM&Aにおいては、買収後に簿外債務が発覚したり管理体制の問題が生じやすい傾向にあります。また、労使関係や情報セキュリティなどの対策が乏しいといった、コンプライアンス上の課題を有するケースも少なくありません。
買収後に問題が発覚した場合、その責任を負うのは買い手企業です。想定外の損失を被らないためにも、デューデリジェンス(事前調査)を徹底する必要があります。
また、企業価値は、デューデリジェンスなどの調査結果をもとに決定されますが、零細企業は地域における強力な顧客基盤や技術上のノウハウなど、財務諸表上に現れない価値を有しているケースも多くあります。M&Aを成功させるには、対象企業の隠れた価値を見極める力も必要です。

まとめ

零細企業は資本金1,000万円以下・従業員5人以下(業種により20人以下)を基準とする小規模事業者で、国内企業の約8割を占めています。経営者の高齢化や後継者不足が深刻化し、廃業リスクが高まる中、M&Aは有効な事業承継手段です。株式譲渡は手続きが簡便で企業存続を後押しし、事業譲渡は譲渡範囲を自由に選択できリスクを抑制できます。しかし、税務負担の発生や従業員への情報共有、デューデリジェンスの徹底など注意点が多岐にわたります。このため、実績豊富なM&A仲介会社やアドバイザーに早めにご相談のうえ、専門的なサポートを受けながら進めることが、零細企業の事業承継をスムーズかつ確実に成功させる鍵となります。



よくある質問

  • 零細企業とは何ですか?中小企業やベンチャー企業との違いは?
  • 零細企業とは、法的な明確な定義はないものの、慣例的には資本金1,000万円以下で従業員数が5人以下など、中小企業のなかでも特に小規模な企業を指します。中小企業基本法上は「小規模企業」の区分に該当し、卸売業・小売業など商業・サービス業では従業員5人以下、製造業・建設業・運輸業・宿泊業・娯楽業等では従業員20人以下が小規模企業とされています。これらの基準は政令で定められており、将来的に見直される可能性もあります。ベンチャー企業は新しいアイデアや独自スキルで成長を目指す企業を指し、初期には零細企業に該当することも多いものの、将来的な事業拡大や人員増加を前提とした成長志向を持つ点で零細企業一般とは思想が異なります。
  • 零細企業は日本全体のどれくらいの割合を占め、日本経済にどんな影響がありますか?
  • 中小企業庁のデータによると、2016年時点で日本の企業総数は358.9万者で、そのうち中小企業・小規模事業者は357.8万者(99.7%)、小規模事業者(零細企業に相当)は304.8万者(84.9%)となっています。つまり、国内企業の8割以上が零細企業であり、日本経済を支え、多様な経済社会の創出に寄与している存在です。一方で、零細企業の衰退や廃業が進めば、日本経済全体に大きな影響を及ぼすリスクがある点にも注意が必要です。
  • 零細企業でM&Aが増加している背景には何がありますか?
  • 零細企業を含む中小企業では、経営者の高齢化と後継者不足が深刻な課題となっており、その打開策としてM&Aが注目されています。経済産業省・中小企業庁の調査では、2025年時点で経営者約381万人のうち約245万人が70歳以上、うち約127万人が後継者未定とされています。このまま放置すると、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性が示されており、廃業リスクを抑え事業承継を実現する手段として、零細企業におけるM&Aの重要性が高まっています。
  • 零細企業のM&Aでは、どのような手法(スキーム)がよく使われますか?
  • 零細企業が事業承継のためにM&Aを実施する際によく用いられる手法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。株式譲渡は、株主が保有する株式を買い手企業に譲渡し、発行済み株式の過半数取得により経営権を移転する手法で、株主総会決議や債権者保護手続きが不要なため手続きが比較的簡便であり、企業自体を存続させられるメリットがあります。一方、事業譲渡は会社の全部または一部の事業を選択して譲渡でき、買い手側も必要な資産・負債のみを承継できるため、簿外債務などのリスクを抑えられる半面、複数事業の譲渡では手続きが煩雑になりやすく、消費税や登録免許税・不動産取得税など税負担が生じる点に注意が必要です。
  • 零細企業がM&Aを行うことで、売り手側にはどのようなメリットがありますか?
  • 零細企業の売り手にとっての主なメリットは、事業承継の実現と、事業展開・成長の機会獲得です。後継者不在の状態でもM&Aを通じて事業を引き継ぐことで、廃業を回避し、培ってきたブランドや顧客基盤、従業員の雇用を維持できます。また、資本規模の制約から自力での拡大が難しい零細企業にとって、経営基盤の安定した企業と統合することにより、資本や人材・ノウハウなどの経営リソースを獲得し、将来的な事業展開や成長を促進できる点も大きなメリットです。
  • 買い手企業が零細企業をM&Aするメリットには何がありますか?
  • 買い手にとっての主なメリットは、新たな顧客基盤の獲得と人材獲得・育成コストの削減です。零細企業のM&Aにより、自社がこれまでアクセスしていなかった市場や顧客層へ参入でき、とくに地域密着型の零細企業を買収する場合、その地域における強固な顧客基盤や信頼関係を一括して取り込むことが可能です。また、対象企業から高度なスキルや専門知識を持つ従業員を獲得できるため、新規事業や成長分野に必要な人材を短期間で確保でき、採用や育成にかかる時間・コストを抑えられます。
  • 零細企業がM&Aを行う際、売り手側が特に注意すべきポイントは何ですか?
  • 売り手側にとっての重要な注意点は、従業員など関係者への情報共有と、買い手企業選定における条件の明確化です。従業員数が少なく人間関係が密な零細企業では、M&Aによる経営権移転への不安やモチベーション低下が離職につながるリスクがあります。そのため、将来像や待遇に関する情報を丁寧に共有し、不安を解消するコミュニケーションが不可欠です。また、零細企業には「のれん」など目に見えない価値が存在することも多いため、自社の独自価値を正しく評価し、妥当な価格での売却や自社の理念・従業員を大切にしてくれる買い手を選ぶための譲れない条件を整理しておくことが重要です。
  • 零細企業を買収する際、買い手側が特に注意すべきポイントは何ですか?
  • 買い手側が注意すべきポイントは、デューデリジェンス(事前調査)の徹底と、対象企業の適正な価値評価です。零細企業を対象とする小規模M&Aでは、買収後に簿外債務や管理体制の不備、労使関係・情報セキュリティなどコンプライアンス上の問題が発覚しやすい傾向があります。買収後の予期せぬ損失を避けるためには、財務・税務・法務・労務などのデューデリジェンスを丁寧に行う必要があります。また、零細企業は地域に根ざした顧客基盤や技術ノウハウなど財務諸表に現れにくい価値を有することが多いため、これらの隠れた価値を見極めたうえで企業価値を評価することが、M&Aの成功につながります。

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