更新日
経営者保証について
経営者保証は、企業が融資を受ける際に経営者個人が保証人となり、企業の信用力を補完する仕組みです。返済不能となれば個人資産が返済に充てられるため、資金調達を後押しする一方で、差し押さえや自己破産のリスク、心理的負担、事業承継の障害になり得ます。ガイドライン等の枠組みを踏まえ、保証依存を減らす条件整備が重要です。
中小企業が資金調達を行う際、金融機関から「経営者保証」を求められる場面は少なくありません。経営者保証は、経営者個人が保証人となり、企業の信用力を補完して融資を受けやすくする仕組みです。その一方で、万が一返済不能となれば個人資産が返済に充てられ、差し押さえや自己破産に至るリスクもあるため、経営者にとっては極めて重い負担になり得ます。さらに、このリスクが後継者の意思決定に影響し、事業承継が難航する要因になることも課題です。近年は、経営者保証に依存しない融資を進めるためのガイドライン整備や取り組みも進んでいます。
本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、経営者保証の基本的な仕組みや、メリット・デメリット、負担軽減策について詳しく解説します。
経営者保証とは
経営者保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が保証人となる制度です。経営者の個人資産が企業の債務返済の担保として用いられ、万が一、企業が返済不能に陥った場合、経営者個人の財産が返済に充てられます。経営者保証は企業の信用力を補完し、金融機関がリスクを軽減する手段として位置づけられています。
経営者保証のメリット
経営者保証のメリットとしては、信用情報が十分でない中小企業でも、経営者の個人保証によって融資が実現しやすくなる点が挙げられます。
保証があることで、金融機関はリスクを軽減できるため、金利の引き下げや融資額の増額といった借入人である企業にとっての好条件を提示する場合もあります。結果として、企業は必要な資金を確保しやすくなり、事業拡大のチャンスを得ることが可能です。
中小企業庁によると、2020年度は約80%の中小企業が、融資の際に経営者保証を提供していました。このことから、経営者保証は企業の信用力を補完する重要な手段として利用されていることがわかります。(画像出典:経営者保証 _ 中小企業庁)
経営者保証のデメリット・問題点
経営者保証は、企業の資金調達を支援する一方で、経営者個人が大きなリスクを負うことになります。企業の業績が悪化し、返済が困難な状況に陥った場合、経営者個人が返済義務を肩代わりしなければなりません。
経営者による返済も困難な状況に陥ると、経営者の個人資産が差し押さえられる可能性があり、最悪の場合、自己破産に追い込まれることもあります。このリスクによって経営者の心理的負担が増大し、積極的な事業展開が阻害されるケースも少なくありません。
また、事業承継の際には、後継者が個人保証のリスクを避けようとするため、事業承継そのものが難航することがあります。これは日本経済の活性化や、中小企業の成長を妨げる大きな課題として認識されています。
経営者保証なしでの融資に対応している金融機関の割合
経営者保証は、企業の資金調達を容易にする一方で、経営者個人が負うリスクの大きさが問題視されています。中小企業経営者の負担を軽減しつつ、円滑な資金調達を実現するために、経営者保証なしの融資促進が重要な課題です。
以下では、経営者保証なしの融資の対応状況について、政府系金融機関・信用保証協会と民間金融機関における対応状況を、それぞれ解説します。
政府系金融機関・信用保証協会
政府系金融機関や信用保証協会は、経営者保証なしの融資において、比較的高い実績を示しています。以下の表に2023年度の実績を示します。
| 金融機関名 | 割合 |
|---|---|
| 日本政策金融金庫 | 58.8% |
| 商工組合中央金庫 | 70.7% |
| 信用保証協会 | 31.6% |
出典:政府系金融機関における「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績(令和5年度)
信用保証協会における「経営者保証に関するガイドライン」活用実績(令和5年度)
2023年における政府系金融機関全体の経営者保証不要の融資割合は約60%で、2022年の約53%と比較して、着実な進展が見られます。この数値は、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫の実績を合わせた平均値です。
ただし、金融機関間で取り組み状況にはばらつきがあり、信用保証協会では31.6%にとどまることから、無保証融資の浸透に課題があるといえます。
これらの取り組みは、中小企業の成長を支えるため、今後さらに強化が求められるでしょう。
民間の金融機関
民間金融機関においても、経営者保証に依存しない融資への取り組みが進められています。以下の表に、過去3年間の実績を示します。
| 年度 | 割合 |
|---|---|
| 2021年度 | 30.7% |
| 2022年度 | 33.9% |
| 2023年度 | 47.5% |
民間金融機関における2023年度の経営者保証不要の融資割合は47.5%であり、2021年度の30%から顕著に増加しています。このデータからは、後述の「経営者保証に関するガイドライン」が一定の効果をもたらしていることがうかがえます。
しかし、政府系金融機関と比較すると割合は低いため、さらなる普及が期待されます。特に中小企業への負担軽減を目指した支援策の強化が必要です。
経営者保証の負担軽減に活用できる支援策・制度
経営者保証による負担を軽減するため、政府や金融機関はさまざまな支援策や制度を整備しています。以下では、具体的なガイドラインや融資制度を詳しく解説します。
経営者保証に関するガイドライン
経営者保証に関するガイドラインは、金融機関が中小企業に融資を行う際、合理的な保証契約を実現するために政府が示した指針です。経営者保証に依存しない融資を促進することで、経営者の負担を軽減し、企業が積極的な事業展開を行いやすい環境を整備することが目的です。
例えば、金融機関は経営者保証が必要な場合、義務として具体的な理由の説明が必要としています。この義務は2022年6月30日に改定され、2023年4月1日から正式に施行されたことで、透明性が増し、契約の信頼性も向上しました。
ガイドラインには法的な強制力は無いものの、中小企業や金融機関が自発的に取り組むことが期待されています。
制度概要
経営者保証に関するガイドラインの制度概要は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 |
|
| 要件 |
|
| 期待できる効果 |
|
| 利用のタイミング |
|
参考:経営者保証 _ 中小企業庁
経営者保証に関するガイドラインに則った融資制度の例
ガイドラインに基づき、金融機関では多様な融資制度が提供されています。以下に代表的な制度を紹介します。
| 制度 | 詳細 |
|---|---|
| 経営者保証免除特例制度 |
【融資額】
|
| マル経融資(小規模事業者経営改善資金) |
【融資限度額】
【返済期限】
|
| 挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン) |
【融資限度額】
【返済期限】
|
| 生活衛生改善貸付 |
【融資限度額】
【返済期限】
|
経営者保証改革プログラム
経営者保証改革プログラムは、経営者保証に依存しない融資慣行をさらに加速させる目的で、政府主導により開始されました。
このプログラムは、経営者ガイドラインの運用開始後に策定され、中小企業の負担軽減や円滑な資金調達を支援するための具体的な施策を展開しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 中小企業経営者 金融機関 支援機関(商工会議所・中小企業診断士等) |
| 支援分野 |
【スタートアップ創出促進保証】 【民間金融機関による融資】 【信用保証付融資】 【中小企業のガバナンス】 |
| 実施期間 | 2023年度から2025年度までの3年間 |
経営者保証に関する相談窓口
経営者保証に関する相談を希望する経営者は、以下の窓口が利用可能です。
- 中小企業再生支援協議会
- 経営者保証ホットライン
また、各地の商工会議所や商工会でも、経営者保証に関する一般的な相談や情報提供を行っています。さらに、取引金融機関の相談窓口では、融資条件や経営者保証解消に関する具体的な相談が可能です。
これらの窓口を適切に活用することで、経営者保証の課題解決が期待できるでしょう。
まとめ
経営者保証は、融資の実現可能性を高め、条件面で有利に働く場合がある一方、返済不能時に個人資産が返済に充てられるという大きなリスクを伴います。差し押さえや自己破産の可能性、心理的負担、事業承継の障害といった問題があるため、保証依存を下げるための取り組みが重要です。政府系金融機関や民間金融機関では無保証融資の実績が示され、また「経営者保証に関するガイドライン」では法人と経営者の区分・分離、返済能力、財務情報開示といった要件を踏まえた運用が期待されています。加えて、改革プログラムや各種融資制度、相談窓口を活用し、自社の状況に応じた負担軽減策を検討することが求められます。
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はお気軽にご相談ください。
よくある質問
- 経営者保証とは何ですか?
- 企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が保証人となる制度です。返済不能時には経営者の個人資産が返済に充てられ、企業の信用力を補完し金融機関のリスク軽減策として機能します。
- 経営者保証のメリットは何ですか?
- 信用情報が十分でない中小企業でも、経営者の個人保証により融資が実現しやすくなります。金融機関がリスクを軽減できるため、金利の引き下げや融資額の増額など好条件が提示される場合もあります。
- 経営者保証のデメリット・問題点は何ですか?
- 業績悪化で返済が困難になると、経営者が返済義務を肩代わりし、個人資産の差し押さえや自己破産に至る可能性があります。心理的負担が増し事業展開が阻害されることや、事業承継が難航する要因にもなります。
- 経営者保証なしの融資に対応している金融機関の割合は?
- 2023年度の実績として、日本政策金融金庫58.8%、商工組合中央金庫70.7%、信用保証協会31.6%が示されています。民間金融機関は2021年度30.7%、2022年度33.9%、2023年度47.5%と増加しています。
- 経営者保証に関するガイドラインとは何ですか?
- 金融機関が中小企業に融資を行う際、合理的な保証契約を実現するために政府が示した指針で、経営者保証に依存しない融資の促進が目的です。経営者保証が必要な場合の理由説明が義務とされ、2022年6月30日に改定、2023年4月1日から正式に施行されています(法的強制力はありません)。
- 経営者保証に関するガイドラインの要件と期待できる効果は?
- 要件は①法人と経営者が明確に区分・分離されている、②法人のみの資産や収益力で返済が可能、③金融機関に適時適切に財務情報が開示されている、です。効果として、保証に依存しない融資を受けられる可能性や、既存の経営者保証を見直せることが挙げられています。
- 経営者保証の相談先は?
- 中小企業再生支援協議会、経営者保証ホットライン、商工会議所・商工会、取引金融機関の相談窓口などです。
M&Aを流れから学ぶ
(解説記事&用語集)
M&A関連記事
M&A基礎
目的別M&A
- 事業承継とは
- 事業承継とM&Aの違い
- 事業承継M&A
- 「事業承継」と「事業継承」の違い
- 事業承継問題
- 後継者不足の実態
- 事業承継における課題
- 事業承継対策の必要性
- 事業承継を実施するタイミング
- 事業承継の流れ
- 事業承継計画
- 事業承継計画書の記載項目
- 事業承継のチェックリスト
- 事業承継における後継者選定
- 事業承継における後継者育成
- 親族内承継
- 親族外承継
- 従業員への事業承継
- 第三者承継
- 親族内承継と第三者承継の比較
- 後継者のいない会社を買う
- 事業承継の主要スキーム比較
- 持株会社を活用した事業承継
- 事業承継信託
- 事業承継ファンド
- 医療法人の事業承継
- 事業承継に向けた資金調達方法
- 事業承継補助金
- 事業承継で活用できる融資
- 事業承継における生命保険
- 事業承継税制
- 事業承継の税務対策
- 事業承継と資産移転
- 事業承継時の消費税の取扱い
- 承継時の債権・債務の取扱い
- 地位承継
- 包括承継
- 許認可の承継
- 株式相続
- 株式の贈与
- 自社株贈与
- 事業承継士
- 事業承継の専門家
- 事業承継コンサルティング
- 事業承継特別保証制度
- 事業承継に潜むリスクと対策
- 事業承継に伴う労務管理リスク
- 会社売却と事業承継の違い
M&Aスキーム
M&Aプロセス
企業価値評価
M&Aリスク
デューデリジェンス
M&Aファイナンス
M&A税務
M&A法務
用語・その他
- バスケット条項
- 当期純利益
- 資産除去債務
- XBRL
- 特別決議
- 譲渡承認取締役会
- 大量保有報告
- 適時開示
- 法務のポイント
- インサイダー取引
- チャイニーズ・ウォール
- 匿名組合
- キラー・ビー
- クラウン・ジュエル
- グリーン・メール
- ゴールデンパラシュート
- ジューイッシュ・デンティスト
- スタッガード・ボード
- スケールメリット
- ストラクチャー
- 利益相反
- 源泉徴収
- プロキシー・ファイト
- パールハーバー・ファイル
- Qレシオ
- MSCB
- IFRS
- 現物出資
- コントロールプレミアム
- ゴーイング・プライベート(Going Private)
- バックエンド・ピル
- パックマン・ディフェンス
- EV(事業価値)
- 売渡請求
- 株主価値
- レバレッジ効果
- 減損価格
- アーンアウト
- シャーク・リペラント
- スーイサイド・ピル
- ティン・パラシュート
- 低廉譲渡
- 監査法人
- 相対取引
- 範囲の経済
- アナジー効果
- 債券
- 純有利子負債(ネット デット)
- ホールディングス
- COC条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)
- ディスクロージャー
- 会社法
- ROA(総資産利益率)
- 国際租税条約
- 役員報酬
- SWOT分析
- アンゾフの成長マトリクス
- サクセッションプラン
- ドラッグアロング
- 累進課税
- 総合課税と分離課税の違い
- キャピタルゲイン
- インカムゲイン
- 資本と負債の区分
- 益金不算入
- タックスシールド
- 繰越欠損金
- スタンドアローン・イシュー
- ロックド・ボックス方式
- 特定承継
- プットオプション
- 埋没費用(サンクコスト)
M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由
創業以来、売り手・買い手双方のお客様から頂戴する手数料は同一で、
実際の株式の取引額をそのまま報酬基準とする「株価レーマン方式」を採用しております。
弊社の頂戴する成功報酬の報酬率(手数料率)は、
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」を誇っております。
-
明瞭かつ納得の手数料体系
創業以来変わらない着手金無料などの報酬体系で、お相手企業と基本合意に至るまで無料で支援致します。
- 関連ページ -
-
豊富なM&A成約実績
創業以来、国内No.1の調剤薬局業界のM&A成約実績の他、多種多様な業界・業種において多くの実績がございます。
- 関連ページ -
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はお気軽にご相談ください。

