株式譲渡所得とは? 税率や計算方法、確定申告の要否を専門家が解説

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株式譲渡所得について

株式譲渡所得とは、株式等を譲渡して得た利益に課税される所得で、株式等に係る譲渡所得等として原則申告分離課税で計算します。M&Aでは非上場の中小企業株式の売却が多く、譲渡価額から取得費や仲介手数料等の必要経費を差し引いた譲渡所得に対し、所得税(復興税含む)と住民税を合計した税率20.315%で税額を算定します。

日本の税金制度の中に所得税という税目があります。所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の所得から所得控除を差し引いた課税所得に税率を適用し税額を計算します。所得は性質に応じて10種類に区分され、収入や必要経費、計算方法などが定められています。
株式譲渡所得とは、株式等を譲渡(売却等)することで得られた利益に課税される所得です。特にM&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)では、非上場の中小企業株式(オーナー社長保有株など)の売買が多く行われ、それにより株主(多くは個人)に株式譲渡所得が発生します。

【補足】10種類の所得について

利子所得 公社債や預貯金の利子、合同運用信託・公社債投資信託や公募公社債等運用投資信託の収益の分配
配当所得 法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、投資法人の金銭の分配、基金利息、投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く)及び特定受益証券発行信託の収益の分配
不動産所得 不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得
事業所得 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業から生ずる所得
給与所得 俸給、給料、賃金、歳費、賞与など
退職所得 退職手当、一時恩給、その他退職により一時に受ける給与など
山林所得 所有期間5年超の山林の伐採又は譲渡による所得
譲渡所得(今回の対象) 資産の譲渡(建物等の所有を目的とする一定の地上権の設定等を含む)による所得
一時所得 営業を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を持たないもの
雑所得 国民年金、厚生年金などの公的年金等、上記の所得のいずれにも当てはまらないもの

※税法上、株式の売却益は、株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税で計算します。

本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、株式譲渡所得の基本概要、M&Aでよくある非上場株式の売却を想定した税金の計算方法、取得費の考え方、確定申告時の実務上の注意点まで解説します。

※なお、本記事に記載する税率・制度は現行制度および公表資料に基づきます。特に税制は改正により変動する可能性があるため、また、個別案件では前提で結論が変わることがあるため、M&Aや税理士等の専門家にご相談ください。


株式譲渡所得の概要

株式等の譲渡による利益(または損失)は、所得税上「株式等に係る譲渡所得等」として取り扱われます。そして重要なのが、株式等の譲渡益は原則として申告分離課税で、他の所得(給与や事業所得など)と分けて税金を計算する点です。
また、実務で混乱しやすいのが「上場株式等」と「一般株式等(=上場株式等以外で非上場株式を含む)」の区分です。M&Aで売却する中小企業の株式は多くが非上場のため、通常は「一般株式等」に該当します。
さらに、上場株式等と一般株式等は別々の申告分離課税として扱われるため、損益通算の可否が変わります。例えば、上場株式等の利益と損失は、確定申告を行うことを前提に一定の範囲で通算したり、損失を翌年以降に繰り越したりできる制度があります。一方で、M&Aで売却する非上場株式は「一般株式等」に該当することが多く、上場株式等とは別枠で計算されるため、非上場株の損失を上場株の利益と相殺できない点に注意が必要です。

M&Aにおける株式譲渡

株式譲渡は、中小企業のM&Aで使われる代表的な手法のひとつです。買い手が売り手のオーナー社長等から株式を買い取り、経営権を取得します。
株式譲渡の特徴は、売り手株主がM&Aの対価を直接受け取る点です。その一方で、売り手のオーナー社長等は「受け取った金額=全部手取り」ではなく、譲渡所得の計算、税金、確定申告というステップを踏む必要があります。

M&Aにおける株式譲渡時の税金

M&A目的で株式譲渡を行う場合、株主(個人)には、所得税(復興特別所得税を含む)と住民税が課税されます。

株式等の譲渡益にかかる税金

次に株式等の譲渡益にかかる税金の計算方法についてです。
まず、以下の計算式を活用して、株式譲渡における譲渡所得の金額を求めます。

「譲渡所得=総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)」

総収入金額とは、実際に株式の譲渡対価として手に入れた金額のことです。株式譲渡の当事者双方が協議したうえで決定されます。必要経費とは、譲渡を行う株式を取得した際に発生していた「取得費」およびM&A仲介会社の成功報酬や、株式を売るために直接要した費用の「委託手数料等」の合計となります。
株式等の譲渡益にかかる税金は、譲渡所得の金額をもとに求めます。株式等の譲渡益に対する税率は、所得税15%+住民税5%に加え、所得税に対して復興特別所得税(2.1%)が上乗せされるため、合計で20.315%(所得税等15.315%(復興特別所得税含む)+住民税5%)となります。
株式等の譲渡益にかかる税金は、以下の計算式で求めることが可能です。

「税額=譲渡所得×20.315%」

株式譲渡所得(税金)のイメージをつかむための2つのケース

ここからは、株式譲渡で「税金がどう決まるか」を、具体例でイメージできるように2つのケースを説明します。前提として、オーナー社長がM&Aで株式を売却した場合、売却代金の全額に税金がかかるわけではありません。課税対象になるのは、あくまで「利益(譲渡所得)」です。

具体例①:オーナー社長個人が10億円で会社を売却した場合

まずは、最もシンプルなケースで計算の流れを確認します。
売却代金が10億円の場合、そこから「取得費」と「仲介手数料などの必要経費」を差し引いた利益に課税されます。

【前提】

売却代金:10億円
取得費(創業時や増資時の払込など):1,000万円
M&A仲介会社への成功報酬(株主が負担したもの):3,000万円
この場合の譲渡所得は次のとおりです。

譲渡所得=10億円-1,000万円-3,000万円=9億6,000万円

税額の概算は、譲渡所得に20.315%をかけて求めます。

税額概算=9億6,000万円×20.315%=約1億9,500万円

つまり、売却代金10億円でも、ざっくり約2億円弱は税金として見込む必要がある、というイメージです。
なお、資金繰り面の注意点として、M&Aの売却代金は入金されても、税金がその場で天引きされるのが通常ではありません。確定申告で税額が確定し、所得税は翌年3月の確定申告で納付、住民税は翌年6月以降に賦課されます。
売却代金を使い切ってしまうと納税資金が足りなくなるため、売却が決まった段階で「最低でも売却益×約2割は現預金として確保」しておくのが安全です。
なお、譲渡益が非常に大きい場合、一定の高所得者に対して所得税の追加負担が生じる制度の対象となる可能性があります。適用の可否や税額は個別に判定されるため、売却規模が大きい場合は事前に税理士等の専門家へ相談するのが安全です。

具体例②:取得費が分からず概算取得費が5%になって税金が増える場合

実務でよくあるのが、「昔の払込や増資の資料が残っておらず、取得費が分からない」というケースです。
取得費が確認できない場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費とする取扱い(概算取得費)もあります。
ただし、ここが重要で、概算取得費は便利な反面、不利(税金が増える)になりやすいです。
なぜなら、実際の取得費が5%より大きい人ほど、本来引けたはずの取得費を引けず、利益(課税対象)が膨らむからです。
ここでは分かりやすく、「本当は取得費が大きかったのに、資料がなくて概算取得費にしたら税金が増えた」ケースを示します。

【前提】

売却代金:10億円
仲介成功報酬(株主負担):3,000万円
本来の取得費(実際に株を取得するために支払った金額):合計1億円

(取得費の内訳)

創業時の払込:1,000万円
20年前の増資:4,000万円(社長が引受)
10年前の増資:5,000万円(社長が引受)

なお、増資に応じることは、簡単に言うと「会社に追加でお金を入れて、その対価として株式を引き受ける(=株を買う)」ことです。したがって、これらは株式の取得費に含まれます。
ただし、今回のケースは10年前と20年前の増資は通帳を廃棄済みで振込履歴が残らず、取得費1億円を証明できないため、概算取得費を使うことになったとします。

取得費不明のため概算取得費を使用:10億円×5%=5,000万円

  1. 概算取得費(5,000万円)で申告した場合
    譲渡所得=10億円-5,000万円-3,000万円=9億2,000万円
    税額概算=9億2,000万円×20.315%=約1億8,700万円
  2. 本来の取得費(1億円)を証明できた場合(=有利なケース)
    譲渡所得=10億円-1億円-3,000万円=8億7,000万円
    税額概算=8億7,000万円×20.315%=約1億7,700万円

(上記の差額)

概算取得費になったことで増えた税金のイメージ
約1億8,700万円-約1億7,700万円=約1,000万円

つまり、取得費を裏付ける資料が出せないだけで、税金が1,000万円単位で増えることがあり得るということです。
特に20年前、10年前の増資みたいに古い取引ほど、通帳や契約書が見つからず概算取得費になりやすいので、売却を考え始めた段階で早めに掘り起こすのが重要です。
そのため、売却を検討し始めた段階で、可能な限り以下の資料を掘り起こして取得費を固めることが重要です。

  • 払込の証憑(振込控・通帳履歴など)
  • 増資時の契約書・株式引受書・株主総会議事録・取締役会議事録
  • 株主名簿、資本政策資料、登記簿(履歴事項全部証明書)の履歴
  • 税理士や会計事務所が保管している過年度資料

売却額が大きいほど、取得費の確認がそのまま節税になるので、資料確認は早いほど有利といえます。

確定申告時の注意点

最後に確定申告時の注意点について説明します。
オーナー社長等がM&Aで非上場株式を売却した場合、多くのケースで「自分で確定申告して納税する」ことになります(上場株の特定口座のように証券会社が源泉徴収して終わり、にはなりません)。そのため、まず大事なのは「いつの年分として申告するか」です。M&Aは契約日・クロージング日・決済日が異なることがあり、年末をまたぐと申告する年も納税時期もズレます。株式が実際に移転した日や対価の確定条件など、契約の設計によって論点が出るので、年末跨ぎの可能性がある場合は早めにM&Aや税理士などの専門家に相談するのが安全です。次に税額を左右するのは、主に「取得費」と「仲介手数料などの必要経費」なので、申告前に資料を揃えるのが実務上、重要です。最低限そろえるべき資料は、主に以下の4点です。

  1. 株式譲渡契約書(SPA等)
  2. 売却代金の入金が分かる資料(通帳・送金明細)
  3. 取得費が分かる資料(創業時・増資時の払込証憑、資本政策資料、株主名簿、議事録など)
  4. 仲介手数料・弁護士費用等の契約書、請求書、支払証憑など

ここで注意したいのは、M&A関連の支出でも「株式譲渡と直接関係ある費用」しか譲渡費用に入れられない点です。また、分割払い・アーンアウト(追加対価)・エスクロー(預託)など、代金が後から増減したり金額の確定が遅れる設計だと、申告の仕方が複雑になりがちです。契約で「いつ、いくらが確定するのか」を整理し、申告で取りこぼしや二重計上が起きないように設計段階で詰めておく必要があります。最後に資金繰り面の落とし穴として、所得税は確定申告で納付したあと、住民税が翌年度に追いかけてきます。さらに利益が大きい年は、翌年以降の予定納税が発生することもあるため、「納税は一回で終わり」ではない点に注意が必要です。

まとめ

株式売却で課税されるのは売却代金そのものではなく、「売却代金-(取得費+仲介手数料などの必要経費)」で算定される利益(譲渡所得)であり、個人の場合は原則として一律20.315%が適用されます。
実務で差が出やすいのが「取得費」です。根拠資料が残っていないと概算取得費(売却代金の5%)を使える一方、実際の取得費がそれより大きい場合は税負担が増える可能性があります。売却を検討し始めたら、創業時の払込や過去の増資資料、通帳履歴、議事録等を早めに確認し、取得費を固めておくことが重要です。
M&Aに伴う株式売却を検討する際は、事前にM&Aや税理士など専門家と連携し、想定される税負担や最適な手続きをしっかりと確認しておくことが成功の鍵となります。



よくある質問

  • 株式譲渡所得とは何ですか?
  • 株式等を譲渡(売却等)して得られた利益に課税される所得で、所得税上は「株式等に係る譲渡所得等」として取り扱われます。
  • M&Aで売却する非上場株式は、どの区分で課税されますか?
  • 中小企業の非上場株式は通常「一般株式等」に該当し、株式等の譲渡益は原則として申告分離課税で計算します。
  • 株式譲渡の税金はどう計算しますか?
  • 譲渡所得は「譲渡所得=総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)」で求め、税額は「税額=譲渡所得×20.315%」で概算できます。
  • 株式譲渡益にかかる税率20.315%の内訳は何ですか?
  • 所得税15%に復興特別所得税(2.1%)が上乗せされ、所得税等は15.315%(復興税含む)となります。これに住民税5%を加えた合計が20.315%です。
  • 取得費が分からない場合はどうなりますか?
  • 取得費が確認できない場合、譲渡価額の5%相当額を取得費とする概算取得費を用いることがあります。ただし実際の取得費が5%より大きい場合、課税対象が増え税負担が増える可能性があります。
  • 確定申告で特に注意すべき点は何ですか?
  • 申告年分は株式が実際に移転した日や対価の確定条件など契約設計で論点が出るため、年末をまたぐ場合は早めの整理が重要です。また取得費や譲渡費用の資料を揃えることが税額に直結します。
  • 納税資金の注意点はありますか?
  • 売却代金は入金されても税金が天引きされないことが多く、所得税は翌年3月の確定申告で納付し、住民税は翌年6月以降に賦課されます。利益が大きい年は予定納税が発生することもあります。

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