海外M&Aとは? メリット・手法・事例や成功の注意点を専門家が解説

海外M&Aとは?メリット・手法・事例や成功の注意点を専門家が解説のメインビジュアルイメージ

更新日


海外M&Aについて

海外M&Aの市場動向とは、取引件数・取引金額の推移や、金利・地政学リスク・規制動向といった市場環境の変化を踏まえて、どの地域・業界でM&Aが進むかを把握する視点です。近年は件数減でも金額が伸びる「大型化」が進み、慎重化と推進の動きが併存する二極化も見られます。

海外M&Aの市場動向を把握するためには、地域や業界ごとの件数や取引金額を理解し、市場環境のトレンドをキャッチしておくことが欠かせません。そこで本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、2025年の海外M&Aの市場動向を整理し、地域別・業界別の最新トレンドや具体的な事例について解説します。

なお、海外M&Aにはいくつかの種類がありますが、一般的には、買い手が海外企業で売り手が国内企業となる「OUT-IN型」、買い手が国内企業で売り手が海外企業となる「IN-OUT型」、買い手も売り手も海外企業となる「OUT-OUT型」の3つに分類されます。


海外M&Aの市場動向

海外M&Aの市場は、金利や地政学リスクなど市場環境の変化を受けながらも、取引金額の大型化など新たな動向が見られます。

まずは、データをもとに、海外M&Aの全体像を整理してみましょう。

海外M&Aは「大型化」が進行

海外M&A市場では、近年「取引件数は減る一方で、取引金額は伸びる」という傾向が強まり、ディールの大型化が進んでいます。PwCのレポートによると、2024年は取引金額が10億米ドルを超えるM&Aディール件数が前年比17%増加し、平均取引金額も上昇しました。

海外M&Aは「大型化」が進行

一方で、中小規模のディール件数は同年に18%減少しており、市場全体として「大型案件が金額をけん引する構造」へ移行していることがうかがえます。10億米ドル超の案件は2024年に世界で発表された約5万件のM&Aディールのうち約1%に過ぎませんが、こうした大型案件が取引金額全体を大きく押し上げている点は見逃せません。

この傾向は2025年上半期も続いており、件数が前年同期比で9%減少した一方、ディール金額は15%増加しています。10億米ドル超の取引件数は前年同期比19%増、50億米ドル超の取引件数も16%増となり、限られた大型ディールが市場全体の金額を押し上げる構造がより鮮明になっています。

市場環境の不確実性によりM&Aが二極化

近年の海外M&A市場では、金利環境や地政学リスク、規制動向など、複数の不確実性が同時に存在する状況が続いています

過去5年間を振り返ると、新型コロナウイルス感染症の拡大により一時的に取引が停滞したものの、その後は急速な回復を経て記録的な取引高を経験しました。しかし直近は、金利の上昇や国際情勢の緊張、関税・規制をめぐる不透明感などを背景に、再び慎重な局面へ移行しつつあります。

こうした環境下では、すべての企業が一様にM&Aへ踏み出しているわけではありません。PwCが2025年5月に実施したパルスサーベイでは、関税をめぐる不確実性を理由に、米国企業の約30%がM&A取引を一時停止または見直していると回答しています。

一方で、事業変革や成長戦略を進める必要性は依然として高く、慎重さを保ちながらも対象を絞り込んだうえでM&Aを進める動きも見られます。結果として、海外M&A市場は「動ける企業は動く一方、様子見を強める企業も増える」という二極化が進んでいるといえるでしょう。

地域別に見る海外M&Aの動向

海外M&Aの市場動向は、世界全体で同じように推移しているわけではありません。取引の中心となる地域や、景気・金利・規制といった市場環境はエリアごとに異なり、その影響を受けて件数や取引金額の動きにも差が生じます。

例えば、米州では大型ディールが市場全体を押し上げる一方、EMEAでは減速傾向が見られ、アジアでは件数と金額が異なる動きを示しています。

ここでは地域別に、海外M&Aがどのような局面にあるのかを整理していきます。

【米州】大型ディールが市場を牽引する一方、国内志向が強まる

米州のM&A市場は、ディール件数の減少がみられる一方で、取引金額では依然として世界最大規模を維持しています

PwCの分析によると、2025年上半期における米州のM&Aディール金額は約9,080億米ドルに達し、世界全体の約6割を占めました。件数は前年同期比で12%減少したものの、金額は26%増加しており、海外M&Aの市場動向としても「大型ディールが市場を押し上げる構造」が米州でより顕著になっています。

背景にあるのは、10億米ドル以上の大型ディールの増加です。さらに注目すべき点として、2025年上半期はディール金額の91%が国内取引となり、前年の86%から比率が上昇しました。

こうしたことから、米州では、クロスボーダー取引よりも国内取引を重視する志向が強まりつつあることがうかがえます。

【EMEA】件数・金額共に減少

欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域のM&A市場では、米州とは対照的に、件数・金額の両面で減少傾向がみられます

PwCの分析によると、2025年上半期におけるEMEA地域のM&Aディール件数は前年同期比で6%減少し、ディール金額も7%減少しました。特に前年に複数のメガディールが発生していた英国市場では、2025年上半期に入って大型案件が減少しており、これが地域全体のディール金額を押し下げる要因となっています。

こうした状況から、EMEAは海外M&Aの市場動向のなかでも慎重ムードが強い地域といえるでしょう。

【アジア】件数は減少するも、取引額は14%増

アジア太平洋地域のM&A市場では、全体としてディール件数が減少する一方で、取引額は増加する傾向がみられます

PwCの分析によると、2025年上半期におけるアジア太平洋地域のディール件数は前年同期比で8%減少しましたが、ディール金額は14%増加しました。

ただし国別に見ると、動きにはばらつきがあります。例えばインドではディール件数が前年同期比で18%増加した一方、日本では13%減少しました。しかし日本は、2025年上半期に複数のメガディールが発表されたこともあり、ディール金額は前年同期比で175%増加しています。

このようにアジア太平洋地域は、件数と金額の動きが国ごとに異なる点が特徴です。

業界別に見る海外M&Aの動向

海外M&A市場を業界別に見ると、分野によって取引の活発さに差がみられます

PwCの分析によれば、2024年から2025年上半期にかけては、航空宇宙・防衛、電力・ユーティリティ、アセット/ウェルスマネジメント(AWM)といった分野で、比較的M&Aが活発に行われました。これらの領域では、エネルギー転換や防衛需要の高まり、資産運用ビジネスの再編といった構造的な変化が進んでおり、成長や再編を目的とした買収ニーズが継続しやすいと考えられます。

一方で、小売・消費財、医薬品、自動車などの分野では、取引件数・金額共に慎重な動きが続いています。

また、関税や規制、コスト構造の変化などが先行き不透明感につながっており、全体的に企業が取引の意思決定を先送りしやすい環境になっているといえるでしょう。

海外M&Aの事例

ここでは、実際に行われた海外M&Aの大型案件を紹介します。海外企業によるものと、日本企業が関与したものを、それぞれ見ていきましょう。

海外企業による大型M&A

海外企業による大型M&Aは、市場の成長分野や再編の方向性を映し出す指標にもなります。まずは近年の代表的なメガディールから見ていきましょう。

Google LLCによるWiz, Inc.の買収

Google LLC(以下、Google)は2025年3月、イスラエル発のクラウドセキュリティ企業Wiz, Inc.(以下、Wiz)を約320億米ドルの全額現金で買収することで最終合意しました。

売り手となったWizは、マルチクラウド環境全体のリスクを可視化するクラウドセキュリティプラットフォームを提供しており、高い成長性を背景に急速に存在感を高めてきました。この買収は、AI時代におけるクラウド事業の競争力強化を目的としたものであり、Googleにとって過去最大規模のM&A案件です。

買収後もWizのサービスはGoogle Cloudに限定されず、他社クラウド環境でも継続提供される予定とされています。これは、既存顧客の利便性や顧客基盤の維持を重視した判断といえるでしょう。クラウドセキュリティ分野における競争激化と、大手テック企業による戦略的M&Aを象徴する事例です。

出典:Google、Wiz との買収合意を発表 | Google Cloud 公式ブログ

Constellation Energy CorporationによるCalpine Corporationの買収

米電力会社Constellation Energy Corporation(以下、コンステレーション)は、非上場の発電事業者Calpine Corporationを、164億ドルで買収することで合意しました。

本件は米国の電力会社として過去最大規模のM&Aとされ、既存株主にとっても大きな投資リターンが期待される取引となっています。背景にあったのは、AI向けデータセンターの拡大やEV普及などを要因とする電力需要の急増です。今後5年間で約16%の需要増加が見込まれており、電力業界では供給能力の確保が重要課題となっています。

今回の買収により、コンステレーションは22州にある79カ所の発電所と、合計27ギガワットの発電能力を新たに保有することになりました。海外M&Aの市場動向においても、成長分野への大型買収が続くことを示す事例といえるでしょう。

出典:Constellation to Acquire Calpine; Creates America’s Leading Producer of Clean and Reliable Energy to Meet Growing Demand for Customers and Communities

Global Payments Inc.によるWorldpay, LLCの買収

米決済サービス大手Global Payments Inc.(以下、Global Payments)は、同業のWorldpay, LLCを、FISおよびシカゴのPEファンドGTCRから、242億5,000万ドルで買収することで合意しました。

競争が激化する決済市場において、大手企業向け決済サービスを強化することが主な目的とされています。取引の一環として、Global Paymentsは子会社Issuer SolutionsをFISに135億ドルで売却し、企業向け決済事業に経営資源を集中させる方針です。

こうした買収と事業売却を組み合わせた再編により、事業ポートフォリオを最適化しながら成長を加速させる狙いがうかがえます。

出典:Global Payments Announces Agreements to Acquire Worldpay and Divest Issuer Solutions

日本企業が関与した海外大型M&A

日本企業による海外M&Aも、近年は取引金額が大きい案件が増え、海外市場での成長や競争力強化を目的とした買収が行われています。ここでは代表的な大型事例を紹介します。

日本製鉄株式会社によるUnited States Steel Corporationの買収

日本製鉄株式会社(以下、日本製鉄)は、米鉄鋼大手のUnited States Steel Corporation(以下、USスチール)を約141億ドル(約2兆円)で完全買収し、株式を100%取得したと発表しました。18ヶ月に及ぶ審査と交渉を経て、2025年6月18日に取引は最終合意・完了し、USスチールは日本製鉄の完全子会社となりました。

このM&Aの特徴は、米政府との合意により、本社の米国維持や主要経営陣の米国人比率などを条件とするゴールデンシェアが導入された点です。当初はバイデン政権下で国家安全保障を理由に阻止の動きがありましたが、その後に承認へ至った経緯も含め、歴史的なクロスボーダー案件といえるでしょう。

日本製鉄株式会社は、北米の市場基盤と生産能力を強化し、世界戦略の重要な一手となる動きを示しました。

出典:日本製鉄と US スチールのパートナーシップ成立のお知らせ

太平洋セメント株式会社によるVulcan Materials Companyの生コンクリート事業用資産等買収

太平洋セメント株式会社(以下、太平洋セメント)は、子会社CalPortland Companyを通じて、米国アラバマ州のVulcan Materials Companyが保有するカリフォルニア州の生コンクリート事業用資産を、約7.12億ドル(約1,073億円)で取得する契約を締結しました。

買収対象には、カリフォルニア州内の生コン工場41カ所と貯蔵基地2カ所が含まれており、同社にとって米国における大規模な事業展開の一手となります。

太平洋セメントは、北カリフォルニアと南カリフォルニアの両地区で事業基盤を強化することをめざしています。この買収により、北カリフォルニアではサンフランシスコ・ベイエリアへの進出が可能になりました。今後は既存の南カリフォルニア地域の生コン事業とも連携し、供給体制の拡充と運営効率の向上を通じた相乗効果を図る方針です。

本件は、米国事業戦略の一環として、供給網強化と成長機会の創出を目的とする投資と位置づけられます。

出典:Vulcan 社の生コンクリート事業用資産等買収に関するお知らせ

積水ハウス株式会社によるM.D.C. Holdings, Inc.の買収

積水ハウス株式会社(以下、積水ハウス)は、米国事業統括会社Sekisui House US Holdings, LLCの子会社であるSH Residential Holdings, LLCを通じて、米国大手住宅建設会社M.D.C. Holdings, Inc.(以下、MDC社)を約49億ドル(約6,900億円)で買収し、連結子会社化しました。

MDC社はコロラド州デンバーを拠点に米国16州で戸建住宅事業を展開する主要ホームビルダーです。この買収により、積水ハウスは米国市場における戸建住宅事業の展開エリアを広げ、Woodside Homesをはじめとする既存のグループ企業とあわせた住宅供給体制の強化を進めています

さらに積水ハウスは、MDC社を軸に米国グループビルダー4社の「One Company化」を推進しており、2025年9月にはMDC社の商号をSEKISUI HOUSE U.S., Inc.へ変更する予定です。今後は、戦略・システム・ガバナンスの統合を通じて、日本で培った住宅技術や生活提案を米国事業へ本格的に展開していく方針とされています。

出典:米国戸建住宅事業における連結子会社の再編に関するお知らせ (米国グループビルダー4 社の「One Company 化」および M.D.C. Holdings, Inc.の商号変更

まとめ

海外M&Aの市場動向は、取引件数が減少する一方で大型ディールが増え、金額面では堅調に推移しています。また、米州が市場を牽引する一方、EMEAは減速するなど地域差も大きく、業界によっても取引の活発さに差が見られます。
こうした環境では、国内M&A以上に市場データや現地事情を踏まえた判断が重要です。



よくある質問

  • 海外M&Aの市場では、近年どのような傾向が見られますか?
  • 取引件数は減少する一方で取引金額が伸び、ディールの大型化が進んでいます。2025年上半期も件数が前年同期比で減少する一方、ディール金額が増加する流れが示されています。
  • 海外M&Aが「大型化」しているとはどういうことですか?
  • 市場全体で中小規模のディール件数が減る一方、10億米ドル超や50億米ドル超といった大型ディールが金額を押し上げる構造へ移行していることを指します。
  • 市場環境の不確実性は海外M&Aにどのような影響を与えていますか?
  • 金利環境や地政学リスク、規制動向、関税をめぐる不透明感などが重なり、M&Aを一時停止・見直す企業がある一方、対象を絞って進める企業もあり、市場の二極化が進んでいると整理されています。
  • 地域別では、米州・EMEA・アジア太平洋でどんな違いがありますか?
  • 米州は件数減でも金額が増え大型ディールが牽引し、国内取引比率が高まっています。EMEAは件数・金額ともに減少傾向です。アジア太平洋は件数減でも金額が増える一方、国ごとに動きのばらつきがあります。
  • 業界別では、どの分野が比較的活発とされていますか?
  • 2024年から2025年上半期にかけて、航空宇宙・防衛、電力・ユーティリティ、アセット/ウェルスマネジメント(AWM)などで比較的M&Aが活発と整理されています。

ご納得いただくまで費用はいただきません。
まずはお気軽にご相談ください。


M&Aを流れから学ぶ
(解説記事&用語集)

M&A関連記事

M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由

創業以来、売り手・買い手双方のお客様から頂戴する手数料は同一で、
実際の株式の取引額をそのまま報酬基準とする「株価レーマン方式」を採用しております。
弊社の頂戴する成功報酬の報酬率(手数料率)は、
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」を誇っております。