許認可の譲渡はできる? 引継ぎ方法と注意点を解説

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M&Aで許認可を持つ企業を買収する際の考慮点

M&Aに伴う許認可承継の可否は事業譲渡・株式譲渡・合併・会社分割で異なり、根拠法と個別許認可が鍵となります。再取得要否、届出・認可手続、有効期限、審査期間、中小企業経営強化法の特例適用可否を事前に精査し、専門家と連携して計画的に移行することで事業停止リスクを低減できます。

M&Aで許認可を持つ企業を買収するときは、スキームによって許認可をそのまま譲渡できるか否かが異なります。また、許認可の種類や根拠法でも譲渡の可否が決まるため、事前の詳細な確認が不可欠です。

本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、4つのスキーム(事業譲渡・合併・株式譲渡・会社分割)それぞれにおける、許認可の承継可否を解説しながら、代表的な種類を取り上げて法令上の取扱いを解説します。

監修者情報

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長 公認会計士 梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。 これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。


M&Aにおける許認可の譲渡可否

M&Aにおける許認可の取扱いは、選択するスキームによって大きく異なります。
事業譲渡の場合、原則として許認可は再取得が必要です。株式譲渡では法人格が変わらないため許認可は継続されます。合併や会社分割では、許認可の種類や根拠法によって承継の可否が決まります。
ここでは、各スキームにおける許認可の取扱いについて、より詳細に解説します。

事業譲渡の場合

事業譲渡において、許認可の承継は基本的に認められていません。許認可は事業者(法人)に対して発行されるものであり、事業だけを移転しても原則として引継げないためです。
事業譲渡では、法人格は変わらずに事業だけを移すため、あくまで法人間での資産・契約・顧客などの移転にとどまります。そのため、譲受側は新たに許認可を取得し直さなくてはいけません

ただし、一定の条件を満たす場合、中小企業経営強化法に基づく「事業譲渡における許認可承継の特例」が適用され、再取得をせずに許認可を承継できます。

適用要件
  • 譲渡側・譲受側がいずれも中小企業であること
  • 所定の「経営力向上計画」の認定を受けていること
  • 中小企業経営強化法施行令により対象とされる許認可であること
対象となる許認可
  • 旅行業
  • 一般貨物自動車運送事業
  • 一般旅客自動車運送事業
  • 一般ガス導管事業
  • 建設業
  • 火薬類製造業・火薬類販売業

参考:中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き

上表にある「経営力向上計画」は、譲渡前に主務省庁(国交省、厚労省など)へ申請し、認定を受けなくてはなりません。申請書には、事業内容、課題、設備投資・人材育成などの取り組み内容などを記載します。
なお、この特例を利用するには、譲渡後に所轄官庁へ報告書の提出が必要です。あわせて、譲渡当事者のどちらかが大企業に該当する場合は、この特例の適用は不可となるため注意が必要です。

株式譲渡の場合

株式譲渡によるM&Aは、会社の外形や法人格に変更を加えることなく、株主構成のみを変更する手法です。つまり、会社そのものは従来どおり存続し、社名・事業体制・契約主体はそのままであるため、原則として許認可の再取得は不要となります。合併や事業譲渡のように組織再編を伴うスキームとは異なり、許認可に対する影響が少ない手法といえるでしょう。
ただし、株式譲渡であっても、届出や追加対応が必要となる場合があります。具体例として、下記のようなケースが挙げられます。

  • 商号変更、役員変更、本店移転などが同時に行われる場合
  • 規制業種の許認可を取り扱う場合

また、一部の免許は都道府県単位などで付与されるため、住所変更とあわせて再申請が必要になることがあります。

合併の場合

合併における許認可の取扱いは、新設合併なのか、吸収合併なのかによって変わります。合併は、会社法における「包括承継」に該当します。そのため、会社法第749条に基づき、原則として消滅会社の権利・義務は存続会社へ承継されます。
合併対象である企業が消滅し、新たな会社を設立する新設合併では、新たな法人格にて許認可の取得が必要です。消滅企業が持っていた許認可が自動的に新会社に引き継がれるわけではないため、新会社で改めて許認可を取得しなければなりません。

一方、吸収合併では、許認可の承継については一律ではなく、各許認可の根拠法により可否が異なります。法律で承継する規定が定められていない場合には、新たに許認可を取得する必要があります。

吸収合併で届出のみで承継可能なケース

下記のような許認可は、存続会社が消滅会社の許認可を引き継げます。引き継ぎの際は、所定の届出が必要です。

  • 飲食店営業許可(食品衛生法|第五十六条)
  • 特定旅客自動車運送事業(道路運送法|第四十三条)

これらの許認可については、法律により合併時の承継が明確に規定されており、複雑な審査手続きを経ることなく、形式的な届出のみで権利の移転が完了します。

吸収合併で管轄官庁の認可が必要なケース

事前に行政庁の許可や認可を得る必要がある例として、下記が挙げられます。

  • 風俗営業許可(風営法|第七条の二)
  • 旅館業許可(旅館業法|第三条の三)
  • 建設業許可(建設業法|第十七条の二 )
  • 一般貨物自動車運送事業(道路運送法第三十六条)

これらの許認可については、合併契約書への明記や、審査期間の確保が必要です。
また、行政庁の審査には一定の期間を要するため、合併スケジュールを組む際には十分な余裕を持って手続きを進める必要があります。

吸収合併で承継できず新規取得が必要なケース

合併によっても承継できず、存続会社が新たに許可・登録を取得しなければならない業種としては、以下が挙げられます。

  • 旅行業登録(旅行業法)
  • 宅地建物取引業免許(宅建業法)
  • 産業廃棄物収集運搬業(廃掃法)
  • 労働者派遣業(労働者派遣法)

これらの許認可では、個別の事業者の人的体制や業務管理体制が重視されるため、承継ではなく再申請が求められます。

会社分割の場合

会社分割は、会社の一部事業を別の会社に承継させる形でのM&A手法です。契約関係や従業員の雇用などは包括的に承継される一方で、許認可の性質により承継の可否や必要な手続きが大きく異なります。どのパターンに該当するかは、業種ごと・許認可ごとに異なるため、事前のリストアップと法令確認が重要です。

承継会社へ自動承継が認められるケース

許認可のなかには、会社分割の実施と同時に、所定の届出を行うことで承継会社へ自動的に移転できるものがあります。例として挙げられるのは、いずれも届出先が保健所となる下記のようなものです。

  • 浴場業
  • 興業場営業
  • クリーニング業
  • 理容業
  • 美容業

これらの許認可は形式的な届出のみで承継が成立します。ただし、届出の際には、分割計画書の記載内容と届出内容との整合性に注意しなければなりません。

行政庁の事前承認が必要なケース

許認可そのものは承継可能でも、所轄行政庁からの許可・認可・承認が必要なパターンがあります。例として挙げられるのは下記のようなものです。

  • ホテル・旅館営業
  • 介護事業
  • パチンコ店営業
  • 一般貨物自動車運送事業
  • 建設業許可(一部)
  • 風俗営業許可

これらの許認可は、対象事業の規模や過去の実績、承継会社の組織体制などが審査対象となる場合があります。分割前に許認可の移転に関する手続きスケジュールを調整しましょう。また、行政庁の審査には相応の期間を要するため、余裕を持った計画立案が求められます。

再取得(新規申請)が必要なケース

一部の許認可は、会社分割による承継自体が認められていません。下記のようなものは、買い手企業が新たに申請し、許認可を取り直す必要があります。

  • 建設業(建設業法|第七条)
  • 宅地建物取引業(宅地建物取引業法 | 第三条)

これらの許認可は、個別の事業者の人的体制や業務管理体制が重視されます。そのため、承継は認められていません。

M&Aにおける許認可の譲渡に関する注意点

M&Aにおける許認可の取扱いは、スキームごとに細かなルールが設けられています。また、許認可には期限が設けられているものがあり、事前の確認を怠った場合、期限切れにより事業停止に追い込まれる恐れがある点にも要注意です。
あらかじめ対象許認可の有効期限および状況を確認し、譲渡時期と更新スケジュールの重複を避けるなど、慎重に調整しなければなりません。

さらに、許認可によっては承継に際して管轄官庁の事前承認や届出が必要となるケースもあります。必要なのは、審査期間を考慮したスケジュール管理です。
適切に手続きを進め、確実に許認可譲渡を行うためにも、M&Aを計画する段階から弁護士、行政書士、M&Aアドバイザーなど専門家への相談が不可欠といえるでしょう。

まとめ

M&Aを実施した際の許認可の取扱いは、選択するスキームによって決まります。

事業譲渡では許認可の再取得が必要となりますが、株式譲渡では法人格が継続するため許認可も維持されます。合併や会社分割では、許認可の種類や根拠法によって承継の可否が決まるため、個別の確認が欠かせません。また、許認可の有効期限や更新スケジュール、管轄官庁への届出や承認手続きなど、さまざまな注意点があります。



よくある質問

  • M&Aでは許認可はスキームによって扱いが変わりますか?
  • 変わります。事業譲渡・株式譲渡・合併・会社分割で承継可否が異なり、許認可の種類や根拠法でも結論が変わるため事前確認が不可欠です。
  • 事業譲渡の場合、許認可は承継できますか?
  • 原則として承継できず、譲受側で再取得が必要です。ただし一定の条件を満たす場合、中小企業経営強化法に基づく『事業譲渡における許認可承継の特例』により、再取得せず承継できることがあります。
  • 株式譲渡なら許認可の再取得は不要ですか?
  • 法人格が変わらないため原則不要です。ただし商号変更、役員変更、本店移転などが同時に行われる場合や、規制業種の許認可では届出や追加対応が必要となることがあります。
  • 合併では許認可は自動で引き継がれますか?
  • 新設合併は新たな法人格になるため取得が必要です。吸収合併は一律ではなく、各許認可の根拠法に承継規定があるかで決まります。届出のみで承継できる例として飲食店営業許可(食品衛生法第五十六条)や特定旅客自動車運送事業(道路運送法第四十三条)が挙げられます。
  • 吸収合併で認可が必要な例/承継できず新規取得が必要な例は?
  • 事前に行政庁の許可・認可が必要な例は、風俗営業許可(風営法第七条の二)、旅館業許可(旅館業法第三条の三)、建設業許可(建設業法第十七条の二)、一般貨物自動車運送事業(道路運送法第三十六条)などです。承継できず新規取得が必要な例は、旅行業登録(旅行業法)、宅地建物取引業免許(宅建業法)、産業廃棄物収集運搬業(廃掃法)、労働者派遣業(労働者派遣法)です。
  • 会社分割では許認可はどう扱われますか?
  • 包括承継される要素がある一方、許認可の性質により可否と手続きが分かれます。届出で承継できる例として浴場業・興業場営業・クリーニング業・理容業・美容業が挙げられます。事前承認が必要な例はホテル・旅館営業、介護事業、パチンコ店営業、一般貨物自動車運送事業、建設業許可(一部)、風俗営業許可などです。建設業(建設業法第七条)と宅地建物取引業(宅地建物取引業法第三条)は承継できず再取得が必要です。

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