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技術提携について
技術提携とは、企業が独立性を保ちながら技術面で協力する業務提携の一形態で、主な手法はライセンス契約と共同研究開発契約です。新技術の時間・コスト削減やリスク低減、シナジー創出が期待できる一方、情報漏えいと権利関係の課題が生じ得ます。契約書では目的・範囲、費用分担、知財・秘密保持、責任・管轄等を明確化することが要点です。
技術提携は、自社の独立性を保ちつつ他社のノウハウや知見を共有して製品開発や研究を進める協力形態です。業務提携の中でも技術分野に特化し、合併・買収のような大規模なプロセスを伴わないため、比較的導入しやすく、必要に応じて終了もしやすい特徴があります。具体的な手法は、相手の特許や生産ノウハウを活用するライセンス契約と、企業や研究機関が共同で研究開発を行う共同研究開発契約に大別されます。
本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、技術提携の概要や手法、メリット・デメリットを解説します。締結時に交わす技術提携契約書の目的や条項、成功につなげるためのポイント、成功事例も紹介しているので、技術提携をする際の参考資料としてご活用ください。
技術提携とは
技術提携とは、特定の目的を達成するために複数の企業が技術面で協力関係を結ぶ行為です。そもそも、企業が協力関係を結んで事業を行うことを業務提携と呼びます。業務提携には、「生産提携」「販売提携」「技術提携」の3種類が存在し、技術提携は技術分野に特化した提携の形態です。
技術提携は、各企業がそれぞれの独立性を保ったままの状態で結ばれます。そのため、合併など、企業買収のようにプロセスの実施に多大な時間や費用を必要としません。また、互いの独立性が保たれているので、必要なときに提携を終了させやすい関係にあります。
技術提携の手法
技術提携の具体的な手法は、大きく次の2つに分かれます。
- ライセンス契約
- 企業が有する技術や特許権、生産ノウハウなどを他社に提供する手法
- 共同研究開発契約
- 複数の企業や研究機関がお互いの技術や知見を活かして共同研究や開発を行う手法
ライセンス契約では、他社の生産ノウハウや特許を活用するにあたってライセンス料金などを支払い、製品展開や研究開発を行います。一方、共同研究開発契約は、企業にとどまらず大学のような研究機関と提携して共同研究や開発を行うため、「共同開発提携」とも呼ばれます。
技術提携を行うメリット
技術提携を行う主なメリットは次の3点です。
新技術開発の時間・コスト削減
新技術を開発する時間やコストを削減できるのが技術提携の大きなメリットです。それぞれの企業でコストを負担しあってノウハウやライセンスを活用していくため、双方にとって新たな技術開発を効率的に行えます。単独で製品開発を行うよりも設備投資などのコストを減らせるのも利点です。
また、技術提携は企業が独立性を保った状態で結ばれるため、企業買収などのM&Aと比べてプロセス実施の時間を削減できます。
リスクの低減
新技術の開発において失敗するリスクはつきものですが、技術提携では既にノウハウを有する企業と共同で事業を行うため、自社単独で行うよりもリスクを軽減できます。また、技術提携の多くのケースでは、成功時の利益に限らず損失も共有されます。万が一、失敗した時にダメージを軽減できる点もメリットといえるでしょう。
シナジー効果の発生
技術提携によって、それぞれが得意とする技術やノウハウを共有し組み合わせることによって、新たな価値創出などシナジー効果の発生が期待できます。
自社に技術力が欠ける場合に、その技術やノウハウを有する企業と提携できれば、時間や全体的なコストを節約しながら即座に技術力を強化でき、単独で開発、研究するよりもより早期に成果が得られるでしょう。
技術提携のデメリット
技術提携の主なデメリットには、情報漏えいリスクや権利問題が挙げられます。
技術提携の実施にあたっては自社の有する特殊な技術や、ノウハウ、特許などを他社に開示・供与することになります。この過程で情報が漏えいしてしまうと、自社の経営に大きなダメージを与えかねません。このようなリスクに備えて、提携相手には信頼のおける企業を選定し、事前にNDA(秘密保持契約・機密保持契約)を締結するのが肝要です。
また、技術提携によって得られる新たな知的財産や製品の権利関係についても留意が必要です。誰が、どのような権利を有し、将来的にどのように活用していけるかをあらかじめ定めておくと良いでしょう。
技術提携契約書の目的と条項
技術提携を結ぶにあたり、円滑な提携関係を構築し双方がメリットを得られるようにするために技術提携契約書を作成します。ここでは、技術提携契約書の目的と主な条項を解説します。
技術提携契約書の目的
技術提携契約書を作成する目的は、技術提携の目的を明確にし、提携する企業それぞれの責任範囲や提携する範囲を詳細に定めることです。
技術提携は、双方対等な立場で行うことが肝要です。たとえ一方が他方の有する技術の供与を受ける場合であっても、双方にメリットが得られるように作成する必要があります。一方の不利益を避けるために作成するものではない点に留意しましょう。
技術提携契約書の条項
技術提携にあたり、ライセンス契約を締結する場合は「ライセンス契約書」を、共同研究開発契約を締結する場合は「共同研究開発契約書」を技術提携契約書として作成します。
ここでは、一般的な技術提携契約書に記載される条項を解説します。
| 条項 | 内容 |
|---|---|
| 技術提携の範囲と目的 | ライセンス契約において、技術やノウハウ、特許など、具体的な提携の範囲と目的 |
| 業務や費用の分担割合 | 共同研究開発を行う場合は、双方が負担する業務内容や費用の負担割合 |
| 双方の設備の利用条件 | 生産設備など互いの設備を技術提携によって利用する場合の条件 |
| 技術提携によって創出された知的財産権の所在 | 共同研究開発により新たなノウハウや特許を取得した場合における管理法など |
| 新たに創出した製品と競合関係にある自社製品の取扱い | 技術提携により創出された製品と自社製品とが競合関係にある場合、どのように扱われるかを記載。多くのケースでは禁止事項が設けられる |
| 新規開発製品に不具合が見つかった場合の責任の所在や分担割合 | 技術提携によって開発された製品に不具合があった場合に責任を負う対象。責任を共同して負う場合はその分担割合 |
| 秘密保持義務 | 提供される技術やノウハウ、新たに創出された技術など秘匿性の高い情報の管理法 |
| 技術提携契約の有効期限 | ライセンス契約、および共同研究開発契約を締結する際の有効期間 |
| 契約違反があった場合の処遇 | 契約内容と反する事態においてどのような処遇を行うか |
| 裁判に発展した場合の管轄 | 技術提携においてトラブルが発生し、裁判になった際の管轄など |
技術提携契約書の作成は、将来的に起こる可能性のあるさまざまなトラブルを想定しなければなりません。関連法律や契約書の作成に詳しい弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら、慎重に作成することが肝要です。
技術提携の成功につながるポイント
技術提携を成功させるには、次の2つのポイントに留意しましょう。
提携相手の企業を十分に精査する
技術提携を結ぶ際は、提携相手となる企業が信頼に足るのか十分に精査する必要があります。技術提携は新製品の研究開発を行ううえで非常に効果的な手法です。しかし、提携先と信頼関係を構築できない場合には、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
想定外の問題を回避するためにも、提携相手を精査し慎重に選定したうえで、技術提携契約書を作成することが肝要です。
専門家への相談を活用する
技術提携が成功すれば、双方の企業がさまざまな利益を享受できます。しかし、相手企業とのマッチングの不成立や情報漏えいのリスクが伴う可能性は否定できません。
万が一、このような事態に陥れば、技術提携の失敗のみならず経営への影響も考えられます。このようなトラブルを回避し、技術提携の成功可能性を向上させるには、専門家への相談が有効です。
技術提携の成功事例
技術提携の成功率を高めるためには、過去の成功事例を参考にすると良いでしょう。ここでは、「ファミリーマートとTOUCH TO GO」「トヨタとBMW」の2つの成功事例を紹介します。
ファミリーマートとTOUCH TO GOの事例
コンビニエンスストアの慢性的な人手不足を課題としていた株式会社ファミリーマートと、無人決済店舗システムの開発に成功した株式会社TOUCH TO GOの技術提携事例です。
ファミリーマートでは無人決済と無人オーダーシステムを実現し、無人型コンビニエンスストアの実用化を目指すために技術提携契約を結びました。
利用者は商品を決済端末に持って行き、表示される商品リストから商品を選択、支払いを行うことで購入が完了します。手軽に利用できる点が利用者の好評を得て、現在ではシステムが全国展開されています。
トヨタ、BMWと技術提携
トヨタ自動車株式会社は、昨今問題となっている環境問題やエネルギー問題を改善するためのサスティナブル・モビリティを実現する目的で、BMWグループと技術提携を結びました。
両社の技術提携により、ポスト・リチウムイオンバッテリー技術やリチウム空気電池技術の共同研究が行われエネルギー密度や容量、燃費の改善が図られました。また、燃料電池(FC)システムやスポーツカー、軽量化技術の共同研究開発にも取り組み、エコカー開発において成果を上げています。
まとめ
技術提携は優れた技術やノウハウを有する企業が技術面で協力関係を結ぶ行為であり、新たな価値創出といったシナジー効果やコスト削減効果も期待できます。
ただし、技術提携においては自社の重要な情報を共有する必要があります。情報漏えいなど万が一のトラブルを回避し円滑に業務を進めるためにも、専門家への相談を活用しましょう。
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よくある質問
- 技術提携とはどのような提携で、業務提携やM&Aとどう違いますか?
- 技術提携とは、特定の目的を達成するために企業同士が技術面で協力関係を結ぶ行為です。業務提携の一種であり、生産提携や販売提携と並ぶ形態のうち、技術分野に特化した提携です。企業の独立性を保ったまま行われるため、合併のように多大な時間や費用を必要とせず、必要なときに終了しやすい点も特徴です。
- 技術提携にはどのような手法がありますか?
- 技術提携の手法は主に二つあります。ライセンス契約では、企業が有する特許や生産ノウハウなどを他社に提供し、ライセンス料金を支払って活用します。共同研究開発契約では、複数の企業や研究機関が技術や知見を持ち寄り共同で研究開発を行います。大学などの研究機関と提携する場合もあり、共同開発提携とも呼ばれます。
- 技術提携を行うことでどのようなメリットがありますか?
- 新技術開発の時間とコストを削減できる点が大きなメリットです。企業がノウハウやライセンスを共有することで効率的に研究開発を進められます。また既にノウハウを持つ企業と進めるためリスクが軽減され、成功時の利益だけでなく損失も共有しやすくなります。さらに相互の技術を組み合わせることでシナジー効果も期待できます。
- 技術提携に伴うデメリットや注意点は何ですか?
- 情報漏えいや権利関係のトラブルが主なデメリットです。技術やノウハウを開示する過程で重要情報が漏れると企業に大きな損害となりかねません。そのため信頼できる企業を相手に選び、事前にNDAを締結することが重要です。また新たに生まれた知的財産や製品の権利関係も事前に整理しておく必要があります。
- 技術提携契約書を作成する目的は何ですか?
- 技術提携の目的を明確にし、企業ごとの責任範囲や提携範囲を定め、双方がメリットを得られるようにするためです。技術の提供側と受領側が対等であることを前提に、どちらか一方に不利益が生じないよう調整しながら円滑な提携関係を構築することが契約書作成の目的です。
- 技術提携契約書にはどのような条項を記載しますか?
- 一般的な技術提携契約書には、技術提携の目的と範囲、業務や費用の分担、設備利用条件、創出された知的財産の所在、新製品と既存製品が競合する際の扱い、不具合発生時の責任分担、秘密保持義務、有効期間、契約違反時の処遇、裁判の管轄などが盛り込まれます。
- 技術提携を成功させるための重要なポイントは何ですか?
- 提携相手を慎重に選び信頼関係を築くことと、専門家の支援を活用することが重要です。信頼できない相手との提携はトラブルに発展する可能性があります。また情報漏えいなどのリスクを回避し、成功可能性を高めるためにも、法律や契約に詳しい専門家に相談しながら進めることが有効です。
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