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株式交換の適格要件について
株式交換の適格要件とは、税制上の特例を受けるために満たすべき条件の総称を指します。支配関係の継続、株式以外の不交付、従業員の引継ぎ、事業の継続・関連性、株式の継続保有、規模または経営参画などを確認します。これらを満たすことで、譲渡損益等の課税の繰延やみなし配当課税の回避が可能になります。
企業の成長戦略において、M&Aは重要な選択肢の一つです。なかでも株式交換は、企業が他企業の株式を取得し、自社株を交付することで相手方企業を自社の完全子会社にする手法として注目されています。
この方法には「適格」か「非適格」かという税制上の区分があるため、注意が必要です。適格株式交換は税制上の優遇措置が受けられ、企業間の合併や買収において重要な役割を果たします。
本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、適格要件に関する税制改正についても紹介しますので、最後までご参照ください。
株式交換の適格要件とは
適格として認められる要件は、税法上で定められています。考慮しなければならない具体的な内容は、以下の3点です。
いずれも重要なことですので、詳細を確認していきましょう。
適格株式交換として認められるための条件
適格株式交換とは、税制上の特例措置が適用される株式交換です。それが認められるには、一連の以下の条件を満たす必要があります。
- 【(完全)支配関係の継続】株式交換後も一定期間、完全支配関係または支配関係が継続されること
- 【株式以外の不交付】株式交換の対価は株式のみ。金銭等での交付は不可とする
- 【従業員の引継ぎ】子会社の従業員の大部分が親会社に移行する
- 【事業の継続】子会社の主要な事業が、株式交換後も継続されること
- 【事業の関連性】親会社と子会社の事業が関連している
- 【株式の継続保有】子会社の株主が、取得した親会社の株式を継続して保有する
- 【規模または経営参画】子会社の規模が、親会社の一定の割合以上、または子会社の株主が親会社の経営に参加すること
※子会社および親会社は、株式交換の対象となる「完全親会社」と「完全子会社」を指します。諸条件の詳細は、後述の項目でも紹介します。
以上を満たすことで、株式交換に伴う譲渡損益等の課税の繰り延べや、みなし配当課税の適用回避が可能です。
適格株式交換と非適格株式交換の違い
株式交換における「適格」と「非適格」の違いは、下表のとおりです。
| 条件 | 適格 | 非適格 |
|---|---|---|
| 課税 | 課税は発生しない | 譲渡損益が発生して課税される |
| 資産の移転 | 帳簿価額で行われる | 時価で行われると見なされる |
| 譲渡損益等の課税関係 | 繰り延べになる | 即時に課税される |
| 税制上の優遇措置 | 適用可 | 不可 |
例えば、資産の移転で使用される株式の評価は、適格と非適格で採用する価額が異なるため注意が必要です。時価評価となる非適格の場合は、自社で判断せず、専門家の意見が必要となるでしょう。
株式交換の適格要件の詳細
適格株式交換の要件や、それを満たさなかった場合の影響、ならびに関係性に基づく判定条件は次のとおりです。
適格要件の判定枠組み
適格株式交換と見なされるには、完全支配関係・支配関係・共同事業目的のいずれかにおいて、株式交換前後で関係性を継続することが必要です。
具体的には、以下の内容を満たさなければなりません。
- 【完全支配関係】親会社が子会社の発行済株式の全部を、直接または間接に保有する
- 【支配関係】親会社が子会社の発行済株式の50%超を、直接または間接に保有する
- 【共同事業目的】親会社と子会社が共同で事業を行う目的で株式交換を行う
※子会社および親会社は、株式交換の対象となる「完全親会社」と「完全子会社」を指します。
なお、株式交換の対価は株式のみである必要があり、株式以外の資産の交付は認められていません。
適格株式交換の要件を満たさなかった場合
適格株式交換の要件を満たさなかった場合、その株式交換は「非適格」に該当すると見なされ、以下のような税務上の影響が発生します。
- 【譲渡所得の課税】株式交換により株式を譲渡した株主は、得られた株式の公正価値と、譲渡した株式の取得費との差額が課税対象となる
- 【時価評価課税】株式交換の直前に有する時価評価の評価益または評価損が、株式交換の日が属する事業年度の、益金の額または損金の額に算入する
- 【株式の評価上昇】株式交換により受け取った株式の評価額が上昇すると、将来的に、その株式を売却した際の譲渡所得が増加する
関係性ごとの判定条件
適格株式交換の要件は、関係性によって変わります。以下の条件が、それぞれの関係性で必要です。
- 【完全支配関係の継続、もしくは支配関係の継続】株式交換後も一定期間、完全支配関係または支配関係が継続すること
- 【株式以外の不交付】株式交換の対価は株式のみであり、金銭等の交付が無いこと
- 【従業員の引継ぎ】株式交換後も完全子会社の従業員の概ね80%以上が、完全親会社に承継されること
- 【事業の継続】完全子会社の主要な事業が、株式交換後も引き続き行われること
- 【事業の関連性】完全親会社と完全子会社の事業に関連性があること
- 【株式の継続保有】完全子会社の株主が取得した完全親会社の株式を、継続して保有すること
- 【規模または経営参画】完全親会社と完全子会社の規模の差が5倍を超えないこと、または、完全子会社の株主が完全親会社の経営に参画すること
また、それぞれの関係性に基づく判定条件は、下表のとおりです。
| 判定条件 | 完全支配関係 | 支配関係 | 共同事業目的 |
|---|---|---|---|
| 完全支配関係・支配関係の継続 | ◯ | ◯ | ◯ |
| 株式交換の対価 | ◯ | ◯ | ◯ |
| 従業員の引継ぎ | ー | ◯ | ◯ |
| 事業の継続 | ー | ◯ | ◯ |
| 事業の関連性 | ー | ー | ◯ |
| 株式の継続保有 | ー | ー | ◯ |
| 事業規模の要件もしくは経営参画 | ー | ー | ◯ |
株式交換の適格要件に関する税制改正について
株式交換の適格要件に関する税制改正は、企業の組織再編を円滑に進めるために重要です。平成28年度から令和元年度までの税制改正について、順番に見ていきましょう。
平成28年度の改正
平成28年(2016年)の改正で、従業員引継要件が80%以上から50%以上に緩和され、親会社が子会社の株式を50%以上保有している場合でも、適格要件として「金銭不交付」「支配関係継続」「事業継続」を満たすことが可能となりました。
また、事業関連性要件も緩和され、完全親会社と完全子会社の事業の関連性が無い場合でも、一定の条件を満たせばその要件を満たすことが含まれています。
平成29年度の改正
平成29年(2017年)の改正により、完全子会社の株主が取得した株式を株式交換後に譲渡しても、一定の条件を満たせば適格要件を満たすことが可能になりました。
親会社と同じ企業グループが株式を50%以上継続保有する場合、ほかの株主が20%以上の株式を売却しても、その要件を満たせるという緩和措置です。
平成31年・令和元年度の改正
平成31年ならびに令和元年(2019年)では、株式継続保有要件が撤廃され、完全子会社の株主が取得した株式を譲渡しても、要件を満たすことになりました。
また、完全支配関係継続要件も緩和され、交換後に完全親会社が完全子会社株式の全部を保有しなくなった場合でも、一定の要件を満たせば容認されます。これらの改正により、諸条件は以前に比べて緩和されたのが特徴です。
まとめ
適格株式交換では、支配関係の継続や株式以外の不交付、従業員・事業の継続などの条件を満たすことで税務上の特例を活用できます。判定は完全支配関係・支配関係・共同事業目的の類型ごとに確認事項が異なり、満たさない場合は非適格として課税影響が生じます。加えて、平成28〜令和元年度にかけて要件の緩和が行われていますので、最新の枠組みに沿って検討することが重要です。
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よくある質問
- 株式交換の適格要件とは何ですか?
- 株式交換の適格要件とは、税制上の特例措置が適用される株式交換として認められるための条件のことです。取得会社が支配株主となるための株式保有比率、交換対価の形態、株式交換直前の株主関係などが税法上で定められており、これらを満たすことで譲渡損益等の課税の繰り延べや、みなし配当課税の適用回避が可能になります。
- 適格株式交換と非適格株式交換の違いは何ですか?
- 適格株式交換では課税は発生せず、資産の移転は帳簿価額で行われ、譲渡損益等の課税関係は繰り延べとなり、税制上の優遇措置が適用されます。一方、非適格株式交換では譲渡損益が発生して課税され、資産の移転は時価で行われたと見なされ、譲渡損益等は即時に課税され、税制上の優遇措置は適用されません。
- 適格株式交換として認められるための主な条件には何がありますか?
- 適格株式交換と認められるには、(完全)支配関係の継続、株式以外の不交付、従業員の引継ぎ、事業の継続、事業の関連性、株式の継続保有、規模または経営参画といった条件を満たす必要があります。例えば、株式交換後も一定期間完全支配関係や支配関係が継続し、対価は株式のみで金銭等の交付がなく、子会社の主要事業や従業員が継続・承継されることなどが求められます。
- 適格要件を満たさず株式交換が非適格になった場合、どのような税務上の影響がありますか?
- 適格要件を満たさず非適格株式交換となった場合、株式交換により株式を譲渡した株主には譲渡所得の課税が生じ、株式交換直前の時価評価による評価益や評価損が当該事業年度の益金または損金に算入されます。また、受け取った株式の評価額が上昇すると、将来売却時の譲渡所得が増加するなど、税務上の負担が大きくなる可能性があります。
- 関係性ごとの適格株式交換の判定条件はどのように違いますか?
- 適格株式交換の要件は、完全支配関係、支配関係、共同事業目的といった関係性ごとに必要な条件が異なります。いずれの関係性でも完全支配関係・支配関係の継続や株式のみを対価とすることは共通ですが、従業員の引継ぎや事業の継続は支配関係および共同事業目的で求められ、事業の関連性・株式の継続保有・事業規模の要件または経営参画は共同事業目的の場合に求められます。
- 平成28年度税制改正では株式交換の適格要件にどのような変更がありましたか?
- 平成28年の税制改正では、従業員引継要件が従来の80%以上から50%以上に緩和され、親会社が子会社の株式を50%以上保有する支配関係の場合でも、金銭不交付・支配関係継続・事業継続などの要件を満たせば適格と認められるようになりました。また、完全親会社と完全子会社の事業関連性要件についても、一定の条件を満たせば緩和されました。
- 平成29年度税制改正では株式継続保有要件はどのように緩和されましたか?
- 平成29年の税制改正では、完全子会社の株主が株式交換後に取得した親会社株式を譲渡しても、一定の条件を満たせば適格要件を満たすこととされました。具体的には、親会社と同じ企業グループが株式を50%以上継続保有している場合、他の株主が20%以上の株式を売却しても適格株式交換として認められる緩和措置が設けられました。
- 平成31年・令和元年度の税制改正ではどのような緩和が行われましたか?
- 平成31年および令和元年の税制改正では、完全子会社の株主が取得した親会社の株式を譲渡しても、株式継続保有要件は撤廃され適格要件を満たすこととされました。また、完全支配関係継続要件も緩和され、株式交換後に完全親会社が完全子会社株式の全部を保有しなくなった場合でも、一定の要件を満たせば適格株式交換として認められるようになりました。
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